東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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冊子の拾い読みから、見つけたコトをちょいとご紹介。

週末から来週にかけては「草木萌動」、そうもくめばえいずる。草木が芽吹き始める頃という訳だ。

二月ももうあと残すとこ数日。来週は雛まつりだね。
我が家には亡くなった叔母が集めていた小さな雛人形が沢山ある。
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毎年、何を飾ろうかと悩みながら箱を覗くのもまた愉しいし、その都度叔母のことを思い出せるのが、なによりだ。

フリーの冊子を拾い読みするのが、ちょっとした時間潰しに良い。

新幹線や各航空会社の機内誌、カード会社から送られて来る冊子、地下鉄のフリーペーパー等々、思わぬめっけ物の情報やコラムが多い。
中でも面白いのが、都営バスの中で配布されている『東京時間旅行ミニ荷風!』と地下鉄都営線で配られる『中央口論 Adajio』と云う冊子だ。
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どちらもしっかりと読ませ、東京の小旅行の役に立つ内容が詰まっていて大変愉しい。

さて、夕べ読んだJCBカードの冊子『THE GOLD』の中に、とても素敵な話があったので少し紹介したい。
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函館に住む写真家、野呂希一さんのエッセイ「春のきざし」から。

野呂さんは1970年代から北海道を始め、全国各地の自然の原風景や四季折々の光景などを取材撮影し続けており著書も多数出ているので知っている方も多いだろう。
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少し抜き書きしてご紹介。‟「一番好きな季節はいつですか?」とよく問われます。私が好きなのは、春でもない夏でもない、秋や冬でもない、それぞれの季節の変わり目。とくに晩秋から初冬にかけてや、冬の終わりから春になりかけのころに惹かれます。
「三寒四温」という言葉がありますが、季節の変化は暦をめくるようにははっきりとしたものではなく、行きつ戻りつを繰り返しながら、いつの間にか変わっていきます。その「いつの間にか」は、自然の現象を気をつけて見ているとわかるものです。”
そして、締めくくりに、‟花が咲いたから春なのではなく、もっと繊細で微妙な自然のしぐさを捉えたいと、旅を続けています。”と結んでいた。

目に映る自然の風景を写真に納めながら、長年の旅を通じて覚えた「肌で感じる季節の移ろい」と云うものを感じとり、僕もいつかそんな季節の変わり目に触れてみたいと思った。読んでいて、野呂さんのお人柄が伝わって来る、そんな優しい言葉の紡ぎだったナ。

同じ冊子に長らく連載をしていて、毎回楽しみに読んでいた詩人のねじめ正一さんの食にまつわるエッセイが一冊の本になっていた。『我、食に本気なり』である。
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南伸坊氏のゆるい挿画もまた味があって、各エピソードに花を添えていて愉しい一冊だ。それにしても、三年も続いていたのだネ。

拾い物をもう一つ。
東急沿線で配布している冊子『SALUS』に連載している「名作のツボ」が面白い。活字離れしているイマドキの人たちには、これくらい柔らかくぶっ飛んだ文学紹介じゃないと手に取らないのじゃないか、と思わせる書評だ。

書いている山下敦史氏は、昨年既に「ネタになる名作文学33ー学校では教えない大人の読み方」なる本を執筆している方だ。が、ここでは、毎回取り上げる作品が、ジョン・スタインベックの『ハツカネズミと人間』だったり、志賀直哉の『暗夜行路』だったりと、脈略のないところも面白い。
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神保町の酒場「兵六」の壁に、「花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき」とご存知林芙美子の「放浪記」からの一節が描かれた色紙が飾られており、いつも其れを眺めながら酒を呑んでいる。男に捨てられ、苦労を重ねながらも、生き抜いて行く林芙美子自身の日記がベースになった小説なのだが、此の山下さんの手にかかれば、こうである。

‟ま、簡単に(乱暴に)言えば80年前の『ブリジットジョーンズの日記』だ。いや、むしろマンガの『ハッピー・マニア』かな。貧乏で、要領が悪くて、男運がなくて、群れるのは嫌だけど独りはさみしい。夢を諦める歳じゃないけど、現実に溜め息をつく夜もある。そんな女の都市生活漂流記だ。今から見てもかなり男っぽい書き口なんだけど、ココロと直結したコトバが心地いい。カッコいい。というか、まったく古びていないのが驚きだ。”

また、‟ヒロインのダメっぷりに大いに笑わされながら、さてよく考えたら俺はもっとダメだったな、と思い出させてしまうのだ。だからこそ、この本は愛おしい。”とある。いや、まったくその通りなのだヨ。
本て何が面白いって、子供の頃に読んだとき、学生時代に読んだとき、そして再び今読み直してみたとき、と感じ方が違うんだよナ。

で、最後に、‟この本は、都会暮らしに疲れたときに効く勇気の種だ。”と締めくくる。森光子の芝居もいいが、久しぶりに『放浪記』、読み返してみたくなったネ。毎度々々、こう思わせてくれるのだから、この方の「名作のツボ」はスゴいゼ。
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by cafegent | 2009-02-24 16:15 | ひとりごと