東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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雨上がりの銀座では、ガクアジサイの花が咲いていた。

『バー山』のオーナーバーテンダーで、銀座で最高齢バーテンダーであった小板橋幹生さんが5月28日にお亡くなりになった。新聞の訃報記事を目にした時は、またひとつ銀座の灯が消えたナと思った。

『バー山』は、泰明小学校の近く、コリドー街に出る手前の路地にひっそりと佇むビルの地下に在る小さなバーだ。マスター小板橋さんは、カクテル一筋70年と云うバーテンダー界の重鎮だ。1990年には、日本バーテンダー協会の最高称号で有る「ミスターバーテンダー」を贈られている。僕の好きな銀座の名バーテンダー『クール』の古川緑郎さんより13年も前に受賞しているのだから、本当に凄いバーテンダーだったナ。

小板橋さんは5、6年前まで、お嬢さんと二人でカウンターに立ち、美味いカクテルを作り続けていた。敷居の高いバーでは無いが、昭和の香りを残した雰囲気の中、シェーカーを振る音に何故かこちらも凛と背筋を伸ばしてしまうのだ。

古川さんも88歳で引退し『クール』を閉めてしまったし、小板橋さんのマティーニももう呑めない。今も数多くのバーテンダーが銀座をはじめ、全国各地で腕を振るっているが、戦後の酒場の歴史を物語れる方がまた少なくなってしまったのは実に惜しい。
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羅生門かづらを捧げ、合掌。

そう云えば、僕の地元札幌の『バーやまざき』のマスター山崎達郎翁は、今お幾つになられたのだろう。山崎さんも小板橋さんの後輩だと聞いた事が有るが、もう可成りのご高齢だろう。
今度帰省した時には、真っ先にあの扉を開けよう。今もチェックのベストを着て凛々しく立つ姿は変わらずだろうね。あぁ、ウォッカが効いたカクテル「サッポロ」が呑みたくなった。

先週、六本木で呑んだ帰り道、夜風に酔いを冷ましながら十番を抜け、古川橋まで歩き、川沿いの路地へ進んだ。この辺りは、かつて小学生だった頃、自転車に乗って遊び廻った処だ。そんな町工場や酒屋の倉庫なんかが在った場所に赤いネオンが灯る酒場が出来ていた。
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この夜、僕は漸くバー『クーリーズ・クリーク』のドアを開けた。
階段を上り、カウンターに腰掛けると店主が「おぅ」と声を掛けてくれた。そして、目を細め笑顔を投げてくれたのだ。その瞬間、ここ何年かずっと僕の心に残っていた重石が砕け散ったように軽くなった。
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本当に久しぶりに、一作さんの作ってくれたジンソーダを呑んだ。美味い。ウマ過ぎる。この人の創る酒は、まさに「TOKYOで呑んでいる」と云う気持ちにさせてくれるのだ。

途中、下の階から賢左衛門さんが現れ、僕の酒もススんだ。この日は、実に愉しい夜になった。いつまでもこの余韻の中を泳いでいたい気持ちになり、タクシーで帰るのを止めた。そして、久しぶりに都会に戻って来た気がしたナ。
      ◇         ◇         ◇
ラジオの天気予報では、日曜は夕方から雨が降ると伝えていた。ならば傘は要らぬかな、と出掛けたのだ。

午前中、地下鉄に乗って日本橋まで。高島屋で開催中の『片岡球子展』を拝見した。昨年1月、103歳でこの世を去った日本画家の追悼展である。昨日が最終日だったので、この日も昼前だと云うのに大変な混雑ぶりだった。
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片岡球子は札幌で生まれ、横浜の小学校教師をしながら何度も公募展に出品し、「落選の神様」と呼ばれる程に落ちていた。
そんな不遇の時代の初期作品から晩年の富士山シリーズ、歴史上の人物を描いた「面構(つらがまえ)」シリーズ、また78歳から取り組んだ裸婦画まで、生涯に渡り絵を描き続けた画業80年の偉業を振り返る素晴らしい展覧会だった。

午後は、永田町へ。地下鉄の階段を上がると土砂降りになっていた。
トホホ、傘が無い。雨を切るようにひた走り、国立演芸場へ。『国立名人会』の落語を聴いた。
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今回は、林家彦いち師、柳家はん治師、三遊亭小金馬師、入船亭扇遊師、おぼんこぼん師、そして三遊亭金馬師匠と実に聴きごたえのある落語会だったナ。皆素晴らしいが、中でも、小金馬師の「天狗裁き」と扇遊師の「崇徳院」が良かったナ。「天狗裁き」は志ん生のが有名だが、次から次の展開が読めていながら、さぁどう来るか、と身を乗り出して先を聴きたくなる程に面白く、小金馬師の最後のサゲが最高だった。

金馬師匠は足もすっかり良くなったみたいで、躯を使っての「佃祭」は流石大ベテランって貫禄を見せてくれた。

矢張り、大いに笑うってのはリラックスできるねぇ。

国立演芸場を出て、銀座へ移動。書道家、橘京身さんの個展『奇妙奇天烈の解放』を観た。中央通りの裏手すずらん通りに在る雑居ビルを上がると、まるで探偵事務所のような雰囲気だ。此処は『サローネ・オンダータ』と云うメンズスーツの仕立て屋だ。店の中央には生地を裁断し、縫い上げる工房が見えている。その日も実際にスーツを採寸していたお客さんも居たが、このサロンこそが展覧会場だった。
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沢山の生地の並んだ棚やスーツを来たトルソーの合間に橘さんの繊細なのにダイナミックな書画作品が飾られて、奇妙な存在感を放っていた。

彼女の個展を拝見するのは今回が二度目だが、「余白を意識した」大小の作品は書道の粋を大きく越えた現代アートだと強く感じた。
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(これは、朝日新聞の記事から。)

外へ出ると雨が上がっていた。銀座通りの街路樹に交じり、こんなオブジェが人目を引いた。
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これぞ、まさしく芝犬だナ。額紫陽花も雨上がりに映えて奇麗だった。
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まだ外は明るいし、こんな休日は冷えたビールが一番かな、と『ライオンビアホール』へ向かう。タイミング良く、一番奥のビアサーバー前に座る事が出来た。此の席は丁度生ビールを注ぐ所が見えるので僕のお気に入りなのでアル。

以前は、此処からビール注ぎ名人海老原さんのビールを心待ちにしていたのだが、今は引退し後輩の指導に当たられていると云う。
『ライオン銀座七丁目店』は今年4月、創業110周年を迎えたそうだ。それを記念した限定生ビール「ステイゴールド」を呑む事が出来た。
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コレ、なんと海老原さん監修のビールなんだとか。
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いゃあ、ラッキーだね。
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フライドポテトをアテに旨いビールで、すっかりジメジメした暑さが吹き飛んだナ。さて、この限定ビールだが、110周年記念ビアグラス付きで1100円なのだ。ビールが780円で、グラスだけ購入しても確か700円なのだから、絶対にお得だネ。そして、僕はこう云うスーベニールに弱いんだナ。

落語会に展覧会二つにビアホールと、随分てんこ盛りの休日だったが、リフレッシュできたかナ。
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by cafegent | 2009-06-02 14:17 | ひとりごと