東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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クリスマス・セレンディピティ(日記の箸休め)

 そのホテルの一階は、通りの向こうまで見渡せるガラス張りの気持ちの良いカフェになっていた。朝、起きると新聞を持って部屋を出る。ロビーを通り抜け、馴染みのベルボーイに声を掛けてから窓際の席に座るのが、ここ数年来の決まり事の様になっている。
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 毎年冬になるとニューヨークを訪れる。仕事の合間をぬって古書店でブックハントをしたり、美味しい料理を求め歩いたものだ。

 或る日、ヴィレッジで十冊近く本を買い込み、ダウンタウンに在るカフェ・レッジオで一休みした。カプチ−ノをすすりながら、買ったばかりの写真集などを眺めていた。70年代のグリニッチ・ヴィレッジの風景が沢山写っていたが、学生たちのファッションが今でも通用する程、格好良く着こなしていた。
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 ふと気付くと横のテーブルに座っていた女の子が僕の写真集を覗き込んでいた。顔を合わすと、口元の端だけを少し上げ何とも品の良い笑顔で挨拶をされたのだ。一瞬ドキっとしたが、僕も写真集を持つ手を差し出し、精一杯の笑顔で応えてみた。

 ニューヨーク大学の学生だろうか、なんて素敵なんだろう。栗色の髪が胸元までかかり、白いタートルネックのセーターに似合っていた。
 コーヒーをお代わりして、僕らは何時間もおしゃべりをした。次から次と買った本を出して眺めている間に、茜色をした空もすっかり暮れてしまった。

 彼女は大学2年生で、いつもは授業が終わるとリトルイタリーのレストランでアルバイトをしていたが、この日は休みだったので、近くのインド料理店に付き合ってくれた。その店は酒販免許が無かったので、隣りの酒屋で酒を買って持参するのだ。安い赤ワインを買って二人で乾杯をした。
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 僕は日本の文化や東京について、夢中になって語った。そしてワインが空になるとまた隣りに買いに行ったのだ。二日後には東京に戻るんだと伝えると彼女は翌日もバイトを休んでくれると云ってくれた。

 明日はクリスマスだ。仕事も休みだったので、朝から彼女と二人でブルックリンのコニー・アイランドへと出掛けた。頬に当たる海風が冷たかったが、僕の心は熱くなっていた。ほんの数日間の出来事だったが、僕は今でも忘れない素敵な想い出となった。
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 あれから十数年が経っただろうか。結局、それきりになってしまったが、彼女もすっかり大人になった事だろう。
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 今日はクリスマス・イヴだ。今朝も外は寒そうだ。路上では地下から白いスチームが舞い上がっている。

 トーストにバターを塗っていたら、通りの向こうのホットドッグスタンドに素敵な女性が立っていた。ショートボブで、トレンチのベルトをギュッと締めた姿が凛としていた。こっちを向かないかなぁと期待をしていたら、コーヒーを受け取る時に振り返ったのだ。「えっ、まさか」と心の中で呟いたが、それは間違いなく彼女だった。

 すっかり大人に成った彼女は、あの頃以上に素敵だった。それから僕は、トーストを持ったままホテルを飛び出し、交差点に向かって全速力で走った。そう、あの頃に向かって。
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         ◇       ◇       ◇
なんて事がホントに起きる訳ナイノダヨ。まぁ、ちょいと仕事の合間のショートブレイクでした。
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by cafegent | 2009-12-25 12:58 | ひとりごと | Trackback | Comments(0)