東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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久々の『鳥重』の味に舌鼓。しかしチト呑み過ぎた。

立春が過ぎ、七十二候では「東風解凍」の頃。春風が氷を溶かす時季と云う訳だ。そろそろウグイスの啼く季節が来るネ。

今朝は早くに目が覚めた。まだ起きる時間には随分とあったが、カーテンの隙間から覗く夜明けの空がとても美しかった。
瑠璃色から薄紫に変わる空をぼんやりと眺めていたら、枕草子の「春はあけぼの」が浮かんだ。でも、そのあとどう続くのかは忘れてしまったナ。まぁ、よいか。
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先週の金曜日、渋谷駅近く「のんべい横丁」に佇むバー『Non』にて酒朋キクさんと待ち合わせた。
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僕らは酒を呑みながら、『鳥重』の時間を待っているのだ。

キクさんは初めての鳥重で、ボクは今年初でアル。19時半の会を予約した友人が行けなくなったので、チャッカリと二席を譲って貰ったのだ。むふふ。

19時40分頃、Nonを出て鳥重へと向かう。
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外には既に4人程が待っていた。店の中ではスープを飲むシルエットが映っていた。此処は完全入れ替え制なので、一回目のお客さんが全員退店しないと中に入れない。お母さんが一人で切り盛りをしているので、暗黙のルールに従わないとお説教を喰らうのだ。

お母さんはいつも凛としている。先の客が全員外に出て、準備が整うと名前を呼ばれる。そして、順番に席に着く。この日は11人。肩を寄せ合い、みっちりと席が埋まる。僕とキクさんは、一番奥の美空ひばりの前に落ち着いた。
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カウンターの上をタオルで拭いて、黙ってお母さんの掛け声を待つ。

「では、はじめましょうか。何になさいますか?」の声に、こちらの顔が緩む。さぁ、『鳥重劇場』のスタートでアル。
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初訪問のキクさんの好みを聞いていたので、柔らかいもつ(レバー)、心臓(ハツ)、しっぽ(ぼんじり)、合鴨、それに生を少々戴いた。生を少々とは、レバ刺しのこと。これにささ身のナマを入れて貰う時は、「ナマ、混ぜて」と云う。

全員の注文を伺うと、大根おろしの入った小鉢にウズラの卵を割り落とし、箸と共に出してくれる。

最初の串を炭火の上に置くと、漸くここで飲み物を聞いてくれる。
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ビール、赤ワイン、芋焼酎、日本酒だ。酒は加茂鶴と菊正宗の二種類でアル。

僕らは菊正宗の熱燗を二つ戴いた。鳥スープを煮込む大きな薬缶を脇へ置き、酒の入った小さな薬缶を火にかける。

この店はとてもシステマチックになっており、全ての動きが一定のリズムで成り立っている。であるからに、お母さん一人できっちり三回転こなして行けるのだナ。
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此処ではコワモテも有名人もみんなお行儀良く、イイ子になっている。酒を早くとせがんだり、ワガママを少しでも云おうものなら、お母さんの一喝が飛び、二度と敷居をまたげない。

さぁ、柔らかいもつのタレが焼き上がった。
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此処はひと串が大きい。焼き鳥と云うよりかは、鳥料理と云った方が適しているナ。
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レアに仕上がった鳥レバーに大根おろしを絡めて口へ放り込む。こんがり焼き色の付いた表面とトロットロの中身が絶妙なバランスで口の中でダンスを踊っているかの様だ。山椒や七味も相性が良い。

熱燗もススムってもんだ。この小さな薬缶が酒でアル。
一本目を食べ終わる頃合いを見計らいながら、次の串を仕込む。僕らの心臓が焼き上がって来た。
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他の焼き鳥屋でハツを頼むと、半分に削いだモノが3つ程串に刺さっている。ところが、鳥重は豪快だ。丸のままのハツが12、3個も刺さっているのだから、他店の4、5本分ってところか。

心臓のプリプリした食感は、まるで天然のソーセージって感じだナ。
柚胡椒を付けて味わえば、素晴らしい酒のアテになる。

串の合間に生(レバ刺し)を少々戴きます。
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ニンニクと生姜醤油も美味いが、胡麻油に塩で戴いても美味いんだナ。生は夏場の方が美味いと云うが、この日のレバーだって素晴らしい味だった。レバーが苦手な人も鳥重に来れば、皆必ず好きになるのだ。

最後に合鴨を戴いたが、結構腹一杯になってきた。
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酒呑みの僕らは無理を聞いて貰いもう一つ燗を付けて頂いた。
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箸休めのお新香が酒を誘うのだナ。あぁ、満足。最後に大根おろしを少し残した器をお母さんに渡し、鳥スープを作って貰った。
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大きな薬缶の中には鶏のトサカや足が煮込まれており、たっぷりとダシの出た白濁色のスープが出来ている。白髪葱と塩を少々加え味を整え、極上の鳥スープの完成だ。
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これにて『鳥重劇場』の幕が下りる。大の男が二人で焼き鳥四本で満腹なんて、凄いでショ。

そして、お会計でまたびっくりなのだ。この晩は、可成り酒を呑んだので、二人でしめて4,200円であった。いつもは3千円台だから、やっぱり呑み過ぎたみたい。お母さんの云うことは聞かなくちゃ駄目だナ。

此処は佇まいが素晴らしく、お母さんの凛とした姿が素敵でアル。
それに味が良くて、良心的な値段と来れば、もうこれ以上何も望まない名店中の名店だ。

その『鳥重』が、来年で暖簾を下ろすと聞いた。前々から60年経ったら店を閉めるとは聞いていたが、こう具体的に云われてしまうとこっちの方がショックだったよ。

外に出ると9時半の会を待つ方々が並んで居た。至福の時を過ごした二人は、そのまま半蔵門線に乗り神保町へと消えたのであった。
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by cafegent | 2010-02-08 17:01 | 食べる | Trackback | Comments(0)