東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々へべ日記/『てんぷら近藤』で誕生日を祝う。

今年の第144回芥川賞を受賞した西村賢太氏の「苦役列車」を読んだ。
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読後の爽快感と云うものは全く感じず、口の中が苦くなる様な小説だ。だが、もう一度読みたくなるのだナ。何故か、何とも云えない閉塞感に襲われ、太宰治の小説の読後感に通じるものを感じるのだ。

自ら「私小説家」と公言している様に、この「苦役列車」も己の体験をベースに書いている。父親が強盗強姦罪で刑務所送りとなり、母と共に転々と引越を繰り返し、中卒後は荷役の日雇い労務者となり怠惰な日々を送ると云う、映画になりそうな壮絶な実体験を持つ作家なのだ。

ただ、16歳頃から神保町の古書街に通い、「私小説」に傾倒した。
本好きが彼を支え、其処で出逢った藤澤清造の「私小説」の世界がこの人を文学の世界に導いたのだ。

破天荒を絵に書いたような生き方をしてきた西村賢太が、小説「根津権現裏」を書いた藤澤清造に「僕よりダメな人がいて、それで救われた」と受賞後にスポニチに語ってたが、芥川賞候補となった「どうで死ぬ身の一踊り」から一貫して、破天荒な私小説に徹している事が凄い。最低なダメ男で、ろくでなし、読みながら腹が立ち、それでも滑稽な主人公にいつしか引き込まれている自分が居るのだ。

どうで死ぬ身の一踊り (講談社文庫)」が2006年の芥川賞候補になった時、間違いなく受賞すると思っていた。漸く長い春が来たのだネ。

西村賢太は僕より7つ若い。文中、主人公の台詞で「木賃宿」とか「彼奴(きゃつ)」などが出て来た。17,8歳の男の子が普段の会話時に使うかなぁ、などと思ったりしたが、まぁ、アウトローな世界で生きて来たのだから、自然に大人びた言葉も覚えるのだろうナ。

同時に受賞した朝吹真里子さんの「きことわ」とは、作風も作者の経歴も真逆なのが面白い。
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芥川賞の選考委員、高樹のぶ子女史の講評。
「朝吹さんはすばらしい感受性と表現力を持っている。挑戦して変わってほしい。一方、人間の美質を描こうとしる私の作品と対極的な西村作品が売れているのはショッキング。自分のアイデンティティを壊しかねない人の末路を見定めたいので、このまま変わらず書き続けてほしい」だと。
スゲーッ、凄くないですか、この講評は。西村賢太と云う私小説家は、これからも苦役列車に乗り続けて生きていくしかないのだろうか。

そして、ずっと読み続けて行こうじゃないか。
       ◇        ◇        ◇
この日は、バー『トスティ』にて軽くジン&ソーダを呑んでから、外堀通りを渡り三笠会館の方へと歩く。

目指す先は坂口ビルの五階に暖簾を出す『てんぷら近藤』だ。もう何年も誕生日には天ぷらを食べる。もっとも誕生日以外でもハレの日には天ぷらが多いのだがネ。

昨年は山の上ホテルに在る『てんぷらと和食 山の上』で祝った。彼処も『バーノンノン』で軽く仕事の事を忘れてから行けるので、とても重宝している。だが、今回は『山の上』出身の名店『てんぷら近藤』にて、ささやかに祝ってみた。
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此処、坂口ビルは、十時(ととき)シェフの『レディタンザ・トトキ』や寿司の『鰤門(しもん)』等も入っており、何かと仕事で良く来るのだナ。

午後6時の予約だったが、暖簾の奥は既に沢山のお客さんで賑わっていた。
カウンターに座り先ずは生ビールで乾杯。
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大いに『近藤』の天ぷらを堪能しようと小鉢とか刺身は頼まず、天ぷらのみに徹した。我が愛しの池波正太郎先生がこよなく愛した店なので、食べる前から胸躍り心弾むのでアル。

先ずは、車海老の頭が二つ登場。口の中でゆっくりと咀嚼(そしゃく)し、海老せんべいの様に楽しむのだ。
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香ばしさの中に濃厚な味を秘めており、素晴らしい酒のアテとなる。
続いて、車海老が二尾小気味良く揚がる。
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最初は塩で戴き、二尾目は天つゆで食した。

揚げての天ぷらは、熱々をスグ食べるのが宜しい。特に海老などは我々の口に入るまでを絶妙なタイミングで計って揚げているので、尚更だ。カリっと香ばしい外側とプリっとした半ナマの微妙な食感が見事に融合するのだネ。そして口の中で旨味が広がるのだ。

此処はこまめに油取りの紙掻式(かみかいしき)を取り替えてくれるのも嬉しい。いつでも気持ち良く天ぷらに箸が進むのだネ。
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メキシコ産アスパラガスは、太くて甘かった。

続いて、熊本宇城(うき)の「ばってん茄子」との事。
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初めて食べたが普通のナスよりも甘みが強くて美味しかった。

此処は、本当に野菜が美味い。近藤さんが日々美味しい食材を求めて、探求している姿勢が伝わるのだナ。

この辺で酒を桜正宗のぬる燗で戴いた。
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酒に合わせるのは、江戸前の鱚(きす)だ。
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板前さんが見事な包丁さばきで鱚を開いていくのだが、その光景だけでも惚れ惚れしてしまう。

お次ぎは、岩手県八幡平の原木椎茸の登場だ。
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香り高く、椎茸の美味しさに改めて感心してしまったヨ。

穴道(しんじ)湖の白魚はまとめて数匹を大葉に包んで揚げてくれる。
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一尾ずつ揚げる『みかわ』の白魚も美味いが、まとめて口に入れる贅沢さも良い。

レンコン(写す前に食べちゃった)もサクッと美味い。
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小玉葱は中が思いっきり熱いので、天つゆに浸して食べた。
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江戸前穴子、言わずもがなの美味なり。
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桜正宗をお代わりしていると、さぁお待ちかねさつまいもが完成。

拳ほどもある丸十は、僕らが席に着いた途端に揚げ始めるのだヨ。そして、じっくりと30分近くかけて揚げ、さらに暫くの間蒸すのだネ。
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こうして、中までしっかりと火が通りホクホクで甘みを中に封じ込めた名物さつまいもの天ぷらの出来上がりでアル。
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菜の花、百合根と野菜を追加した。春を食す幸せなり。
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百合根の甘いことったら、ぐふふの美味さ。

さらに帆立貝とイカの天ぷらもお願いした。
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この時季だからヤリイカだろうか。ねっとりと甘かった。
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帆立は殻から剥いたばかりで、プリプリ。貝柱の分厚さに驚いた。
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お漬け物を戴いて、〆のご飯はかき揚げ天丼にして貰った。
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シジミの赤出し味噌汁も美味しかったなぁ。
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それにしても、あのさつまいもの天ぷらが腹に堪えたナ。一気に満腹感が襲って来た。

それでも、もう一本ぬる燗を戴いてご馳走さま。
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デザートに出て来た「とちおとめ」も糖度が高く、瑞々しくてまるでシロップに漬けてあるのかと思う程に甘かった。

すっかり満腹で気分も上々になった。
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本当に美味い野菜が食べたくなったら、迷わず『てんぷら近藤』だナ。夏野菜の時季も楽しみだ。

幸せの余韻に浸りながら、神保町に出て『兵六』の暖簾を潜った。
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立石『宇ち多゛』のご常連ウシさんが独りダレヤメの酒で仕事の疲れを癒してた。
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そこへ、荒木マタエモンさんが登場し、毎度お馴染みドーンッ!と一発決めてくれた。うーん、最高の誕生日祝いだったナ。
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薩摩無双の白湯割りが満腹の胃に滲み渡る。
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そして、ドクターと真希姐さんも愉しそうな酔い心地。

暫く、誕生日祝いを口実に「日々ヘベレケ酒行脚」が続きそうだナ。
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Commented by ウシ at 2011-02-21 13:55 x
その節は、楽しいひと時をありがとうございました。
なんか、待ち伏せなう!な感じになってしまったか?失礼は無かったか?後々気になってしまいました。
ちょっと酔ってきていたもので。
酒場の話他いろいろとても楽しいお話、また教えてくださーい。
生ドーンッ!も最高!
Commented by cafegent at 2011-02-21 14:38
ウシさん、こんにちは!

まさか『兵六』で一緒に呑めるとは思いませんでした!
ひとしきり愉しい酒になりました。ありがとうございます!
by cafegent | 2011-02-21 13:36 | 食べる | Trackback | Comments(2)