東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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雑文雑多日記/『包むー日本の伝統パッケージ』展は必見。

今朝の東京は青空が広がっていたが、顔に当たる風は冬に舞い戻った様に冷たかったナ。家の前の街路樹につがいのメジロが遊びに来て、元気な声で啼いていた。
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空には綿菓子の様な雲が浮かんでいて、割り箸でくるりと巻き取りたくなった。脇の小径からは沈丁花(じんちょうげ)の花の香りが漂って来た。吹く風はまだまだ冷たいが、それでも春の香りをちゃんと街に届けてくれているのだネ。

正岡子規の詠んだ句を思い出した。

       古庭の古き匂ひや沈丁花

沈丁花の花が咲き始めると一斉に春の花が開花し出す時季が来る。寒さに身を縮めてしまうが、もう春なのだナ。秋の訪れを告げる金木犀の香りと共に沈丁の花の強い香りは季節の指針となる。

       沈丁花見知らぬ路地へ誘い香   八十八

仕事場をちょいと抜け出して近くの美術館に出掛けた。
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目黒区美術館にて開催中の『包むー日本の伝統パッケージ展』は、デザインの仕事に携わっている人は必見の展覧会だろう。

日常生活の中で使われている様々なモノを通して日本の美意識を再認識することが出来る。
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商業デザイナーとして活躍し、全国商業美術家連盟を創設し理事長を務めた故・岡秀行氏が永きに渡り収集した日本全国の伝統的パッケージの数々を一堂に展示している。今から20数年前、同美術館にて「5つの卵はいかにして包まれたかー日本の伝統パッケージ」展が開催されたが、当時デザイン誌「AXIS」等の仕事に携わっていた僕は、古くから伝わるパッケージデザインの美しさに衝撃を受けたものだ。

あの時の展示品の殆どが岡氏より同美術館に寄贈されていたのだネ。
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岡氏は、戦前からグラフィック・デザイナーとして活躍する傍ら、食料品や菓子折、酒瓶などのパッケージの美しさに魅了され、コレクションを始めた。

その何れもが、日本の風土に育まれた自然素材である紙、土、藁、木、笹、竹などを生かした容器であり、その地に長く伝わる手仕事による素朴な美しさを持っている。
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日本人ならではの「美意識」と「心」をこの伝統パッケージに見出した岡氏は、失われつつある手仕事への危惧を抱き、我が国のみならず世界中へ『包む』「TSUTSUMU」と言う言葉で紹介し、大きな反響を呼んだのだ。

今ではもう無くなってしまった貴重な包みや山形の伝統的な「卵つと」(卵を持ち運ぶ時の藁細工の包み方)に見られる美しいパッケージの意匠は必見だ。

また、3Dによる8分間の立体映像『包 TSUTSUMU』も面白かった。
       ◇       ◇       ◇
さて、昨日は仕事を終えた先から木場へと向かった。
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夕べも風が強く、大横川の川面に映る倉庫の灯りが揺れて煌めいていた。水路から流れ吹く風も春の匂いがした。
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雛まつりの昨日は常連さんが持って来てくれた梅の花がカウンターの上で咲いていた。
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永井荷風さんも梅の香りに誘われているみたいだナ。

湯豆腐をアテにホッピーが美味い。夕べはいつもより客が少なく、ゆったりと座る事が出来た。

コの字の向こう側のご常連席の方々も少ない。そして、「今日はハトが少ないネ」などと呟いていたナ。
此処で云うところの「ハト」とは、初河本の方々の事を指す。はとバスに乗って観光巡りする様なお客さんの事をこう呼ぶのだヨ。
相変わらず皆さん一見さんには厳しいのだネ。

で、いわゆる「ハト」さんがビールを頼むと皆さん真寿美さんと顔を見合わすのだナ。云わぬが花の吉野山、「ウチはホッピー屋」を自負する真寿美さんは、黙って大瓶の栓を抜きながら莞爾と笑うのでアル。
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三本目のホッピーを呑み干した頃、時計は7時45分を差した。もう少し陶酔鏡に浸りたかったが、此処はきっちり8時には店仕舞いでアル。

僕が暖簾を仕舞い、もう一人のコニさんが自転車を仕舞ってくれた。

『河本』の常連さんには、大西さんと小西さんが居る。そんな訳で、紛らわしいからといつの間にか僕は「中西さん」になってしまった。まぁ此処ではそれで良いか。ナハハ。

木場から大手町経由で神保町へと移動した。
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喫茶『さぼうる』の路地を抜け、『ラドリオ』『ミロンガ』辺りまで出ると居酒屋『兵六』の灯りが見える。
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コの字の真ん中に座り、さつま無双を白湯で割る。小腹が空いていたので、名物の炒麺(やきそば)も戴いた。
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初代が中国で覚えた味が60余年経った今も変わらぬ味で食べられるのだから、幸せだ。

今はもう無いが、『兵六』開店当時のマッチを古いお客さんが持って来てくれた。
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元祖ヘベ文字とも云うべき、素敵な手描きで「神田あたりで呑んだ」と書いてある。
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裏面は、「さつま無双」の広告だ。
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「さつま無双東京営業所」と云うのが泣かせるネ。

正二合の無双を呑み干し、夕べは家路に向かった。時には二軒で終わるときだって有るのだナ。

家の近くでも、沈丁花の香りを風が運んでいた。夜空の月は弓の様に細かった。今夜あたりが新月なのだろうか。
by cafegent | 2011-03-04 16:09 | 飲み歩き