東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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リアス式海岸の町を歩き、人の温かさに触れた旅の思い出。

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あれは何年前の旅だっただろうか。盛岡から山田線を快速リアスに乗って宮古駅へと向かった。

以前、牛山隆信の写真集で「秘境駅」なる駅を知り、途中の大志田駅に行こうと思ったのだが、夜に一本しか走っておらず諦めた事がある。
浅岸字大志田に在る大志田駅は無人駅で、昔使用されていたスイッチバックの線路後が残っているそうだが、結局一度も訪れていない。

盛岡から二時間程で宮古駅に着く。其処は三陸リアス式海岸の北端だ。リアス式海岸とは谷が沈降し海水が入って出来た海岸の事。宮古は北側が隆起して、南側が沈降して出来たそうだ。

景勝地として名高い浄土ヶ浜は朝が美しい。この地を訪れたならば、必ず一晩泊まり翌朝早くに起きる事だ。この浜の向こうから昇る朝日が実に見事だからだ。白い巌石の塊で出来た巨大な「剣の山」は、広い太平洋に向かって咆吼(ほうこう)する獣の様に見えた。そんな荘厳さが備わっているのだ。

その昔、曹洞宗の僧侶が透き通る様な蒼い海に浮かぶ白い巌石の眺めを「極楽浄土の如し景観」と言ったことから、この名が付いたそうだ。
此処に立てば、成る程と頷くしかない。

両手の親指と人差し指を直角に曲げてフレームを作れば、何処を切り取っても素晴らしい絵になる。海から吹く風を顔に受け、ただ何もせず過ごすのが良い。

展望台に登れば、赤松に覆われた浄土ヶ浜が一望出来る。入り江周辺では、幾つもの屋台が出ており宮古湾で穫れた新鮮な魚介を食べさせてくれた。帆立貝やサザエも美味しかったが、松藻(まつも)の味が今も忘れられず舌が覚えている。三杯酢にして食べても旨いが、酢味噌で合えた焼き松藻が酒に合った。松藻はこの辺りにしか生息していない。マンサクの花が咲く今頃が旬だと聞いたが、今はもう採れないだろうナ。

魹ヶ埼(とどがさき)灯台は、北海道に向かう船が必ず目印にする大事な灯台だ。木下恵介監督が撮った映画『喜びも悲しみも幾歳月』は、此処で7年間過ごした灯台守の妻キヨの手記を元にしている。昭和32年の映画だが、主演の高峰秀子が美しかったナ。

浄土ヶ浜から15分程歩くと日立浜町に出る。龍神崎も近い宮古湾沿いの町だ。あの時泊まった民宿は、確か自分たちの船を持っていた。その船が水揚げした新鮮な魚介と地元の野菜を使った旨い料理が自慢の宿だ。エゾアワビ、どんこ汁やどんこのタタキなど本当に美味しい。この辺りで穫れるドンコとは、タラ目チゴダラ科の魚だそうだ。関西で食べたドンコとは違う魚だったと思う。

3.11、浄土ヶ浜も津波の被害を被った。
『浄土ヶ浜パークホテル』が避難場所になっているそうだ。民宿のご家族の安否が気になるが、ちゃんと避難出来ただろうか。

僕はあの小さな三陸の町を歩きながら、何度も足を止めた。そして、すれ違う人たちや店の軒先に立つ爺さんらと沢山の話をした。長い人生の中で幾度も津波を経験している人も居た。1960年にチリで起きた地震による津波が宮古市を襲ったそうだ。

あの爺さんの顔に刻まれた無数の皺が忘れられない。笑うたびに彫刻刀で彫った様に皺が深くなった。
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それにしても、あの町の人たちは皆旅人に温かかった。
漁船の人も、民宿の人も、道を聞いたおばちゃんも、全てが温和で、親切で、陽気だった。あれこそ東北地方の誇る人柄なのだろうネ。

吹く風の音も、漁船のエンジンの音も、虫の声も総てが深く僕の心に刻まれている。海を眺め、山を眺め、そして町を眺めて、日本て本当に美しい国だと思った。

今、懸命な復興作業が進められている。十年、いやそれ以上かかるかもしれない。でも、あの美しい風景が戻ってくると信じよう。
「みちのくパワー」「東北魂」と言う言葉を知った。その心意気で、一刻も早く復興する事を願うばかりだ。

そして、もう一度あの地を訪れよう。
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Commented by fukusan11 at 2011-03-24 12:43 x
宮古のことを書いてくださってありがとうございます。
宮古の友人たちは皆たくましくがんばっております。
東京で暮らすこちらが元気をもらうくらいに。
ぜひ、またドンコを食べにわが町・宮古へ!

追伸:高澤哲明さんにもよろしくお伝えください。
   わたしは生まれは陸前高田、育ちが宮古なのでした。
Commented by cafegent at 2011-03-24 14:48
fukusan11さま、コメントありがとうございます。

宮古は素敵な町です。人も風景も魚も。
あの長閑な町に、早く戻ってくれる事を願うばかり。

みんなで応援しましょうネ。
by cafegent | 2011-03-23 14:20 | ひとりごと | Trackback | Comments(2)