東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々雑文雑多日記/今年二度目の土用丑は『との村』で。

昨日8月2日は、今年2度目の「土用丑の日」であった。
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うなぎの歴史は実に古い。かの万葉集にも大伴家持が石麻呂に宛てて詠んでいるのだから、遥か1250年も前になるのだネ。

    石麻呂にわれもの申す
        夏痩せによしというものぞ
               武奈伎とりめせ

万葉集では、うなぎの「う」の字に武士の「武」の字を当てている。
当時は、うなぎの事を「むなき」と言ったとの説がある。
梅を「むめ」、馬を「むま」と書いて、読み方は「うめ」「うま」と発音したらしいので、むなきも矢張り「うなぎ」と読んだのだろうネ。

万葉集の頃から、夏痩せには「うなぎ」と言っているのだから、その滋養、栄養価値も判っていたのだネ。
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この事は、宮川曼魚の随筆「深川のうなぎ」で知った。

今の様なタレをつけて焼いた蒲焼きが流行ったのは江戸時代だネ。
居眠り磐音が朝早くから、せっせと鰻を捌いていた様子が目に浮かぶのだナ。

駒形に『前川』と云う老舗の鰻屋が在る。創業は文化・文政年間というから約200年前から在り今も盛業している。

創業時は隅田川沿い(昔の大川)に臨(のぞ)んでいたので、屋号を前川としたそうだ。駒形橋の移転に伴い、今の場所になったのだネ。

池波正太郎や高村光太郎も贔屓にしていた名店だ。
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台東区立中央図書館内に在る『池波正太郎記念文庫』のレジスターから出てくるレシートには粋な『前川』の広告が刷り込まれているのだナ。

腰掛け席が無く総て小上がりなのだが、夕暮れの隅田川を臨みながら一献、鰻が焼き上がるのを待つのも大変オツなものでアル。
今ならばスカイツリーの勇姿も一望出来るか。
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自慢のう巻を食べながら吞む酒はまた格別美味い。豊島屋酒造の十右衛門は一本4千円程だが、二人ならスグに空いてしまう。
此処はワインも揃えているが、中々どうして鰻にワインは合うのだナ。麻布台『野田岩』でも、天然うなぎに赤ワインをススメられるからネ。

此処のタレは、太平洋戦争の時、疎開先まで持って行き守った物を注ぎ足して今に受け継いでいるそうだ。

大川の眺めも贅沢この上なく、今も確か鰻重が2,500円前後だと思うので、手頃で至福の時を味わうことが出来る。吞んべいには白焼きも堪らない。ツンと効いた山葵をつけて、鰻そのものの味を堪能するのだナ。そして酒がススムって訳だ。
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因みに此処「駒形の前川」の事は、「コマカタのマエガワ」と云うのが正しいそうだ。下町に暮らす江戸っ子らしいネ。20年程前に、薄井恭一の書いた随筆「味めぐり」で以前知った事のウケウリだがネ。

天然うなぎが捕れにくくなっており、養殖うなぎも今までは稚魚を穫って育てていたから、稚魚の乱獲によりウナギそのものが激減し、全国的に価格も値上がりしている。

そんな中、東大大気海洋研究所の塚本教授が中心となり、ニホンウナギの卵を2年前に世界で初めて発見したのだネ。

調査研究を始めてから、実に36年もの歳月を費やした世紀の大発見だ。
卵からの人工孵化に成功すれば、昔の様な天然うなぎの味を安価で味わう日が来ることだろうネ。

7月から東京大学総合研究博物館に於いて「鰻博覧会 この不可思議なるもの」展が開催されている。
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「旅するウナギ」の最新研究成果や貴重な標本や生態展示、うなぎに関する江戸の浮世絵や美術品なども展示され、実に興味深い内容だ。

中でも、塚本教授らが今年6月に2度目の採取に成功した卵の標本と、生きた仔魚(しぎょ)「レプトセファルス」も公開されている。10月16日(日)までの開催なので、うなぎ好きの方は是非!
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       ◇        ◇        ◇
そんな訳で、昨日も鰻を喰いに出掛けた。
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カミサンが出張中なので、『前川』や『重箱』って訳にも行かず、一人で気楽に美味いうなぎが食べたいとなれば、もう東日本橋の繊維問屋街にひっそりと佇む『との村』しか思い浮かばない。

午前11時半開店なので、それに合わせて仕事場を出た。

都営浅草線の東日本橋駅を出て、5分程歩けば到着だ。まだ、支度中だったが、外に居た親爺さんが、暑いから中へと入れてくれた。

小体の店なので、6席のカウンターはあっと云う間に埋まってしまい、次々と外で待つ人が出た。

そう云えば、此処のテレビが地デジに変わった日も此処で昼から吞んで居たナ。
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目の前で捌いたばかりの特上うなぎを親爺さんが外で焼く。
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その間、女将さんと他愛無い世間話に花を咲かせるのだ。

お漬け物をつまみながら、焼き上がるのを待つ。
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この辺りは、かつて繊維問屋が多く軒を連ね、関西方面のお客が多く訪れたそうだ。

それ故に、此処の蒲焼きは関西風の蒸さずに焼く、所謂「地焼き」が有るのだネ。関東の蒸して焼く蒲焼きも好きだが、此処に来るといつも蒸さないで焼いて貰うのだナ。今では、「徳と肝を!」と言えば、地焼きのうな重と肝吸いを出して戴けるので、実に嬉しい限りでアル。

此処は、捌いてから焼くので、南千住の『尾花』同様に30分程待つことになる。ビールを飲みながら待ったり、文庫本片手に待つ人も多い。
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さぁ、お待ちかねのうな重が登場だ。

蓋を開けると香ばしい薫りが、鼻をくすぐるのだナ。
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地焼きの食感は一度味わうと病みつく美味さなのだネ。香ばしくカリっとした表面と中のもっちりした身の味わいは、堪らなく美味い。

尾花の様にじっくりと蒸し上げていないので、ふんわり柔らかな蒲焼きとはまるで正反対なのだ。
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箸ですんなりと切れる訳ではないので、そんな時はガブリと直に噛むのだナ。そして、豪快にご飯をかき込むのでアル。じっくりと焼き上がりを待ったうな重も食べ終わるまでは、ほんの10分足らずなのだ。
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あぁ、小さな幸せを味わい、仕事場に戻ろう。この店でダラダラと長居は無用ノ介!ご馳走さま、と外に出れば扇子片手に待つ人の列が出来てるのだからネ。

今年の夏は、まだまだうなぎの日々が続きそうだナ。
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Commented by たっきぃ at 2011-08-04 16:01 x
昨日は1日遅れの二の丑としゃれ込んで、夕食は家で白焼き→うな丼とキメてみました。
家飲みで白焼きをつまみに冷酒で一杯……たまらんです(笑
でも、たまにはまるます家以外の鰻屋でも一杯やりたいですが(苦笑
by cafegent | 2011-08-03 13:48 | 食べる | Trackback | Comments(1)