東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/休み明けの兵六で呑み、寿司屋を借り切る。

今朝、いつもと違う道を歩いていたら、入口の戸が開け放たれていた町工場から油の匂いが漂ってきた。昭和40年代頃の旧式電車の床の匂いと同じだった。たしか、白馬ワックスだったと思うのだナ。その匂いは、幼い頃に実家で嗅いだ香りとまるで同じだったので、一気に小学生の頃の我が家を思い出した。
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我が家は札幌市内。ススキノのど真ん中に在った印刷屋だった。
二階が生活の場で、一階が仕事場だった。床を磨いたワックスの油と珈琲の香りが入り交じった匂いは、今も強烈に覚えている。

幼い頃から、親に「レコードと美術書と本には、金を惜しむな」と教えられて来た。物心ついた頃には、我が家ではストーンズやビートルズ、スタン・ゲッツ、ジェリー・マリガンなどが朝から晩まで流れていた。

レコードは、いつも『玉光堂』で買っていた。両親の好きなアーティストの新譜が入荷するとレコード屋さんの方から連絡が入るのだ。
父は買ったばかりのレコードに針を落とし、母の叩く和文タイプもリズムを刻んでたっけ。

1969年、僕が最初に貰って覚えている9歳の誕生日プレゼントは、このトム・ジョーンズの「ラヴ・ミー・トゥナイト」だった。
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確か兄貴には、ゼーガーとエヴァンスの「西暦2525年」か、1910フルーツガム・カンパニーの「インディアン・ギヴァー」だったと思う。

話はそれるが、69年の洋楽は素晴らしい名曲が多かったナ。
フィフス・ディメンションの「輝く星座」やビートルズの「ゲット・バック」、メリー・ホプキンの「グッドバイ」やマーヴィン・ゲイの「悲しいうわさ」も流行った。フルーツガム・カンパニーの「トレイン」も好きだったなぁ。

今年83歳を迎えた母は、今でもモダンジャズを聴く。そして、父もまたマリア・カラスとライ・クーダーをこよなく愛し、毎日CDを架けながら源氏物語や佐伯泰英などを拝読している。

そんな家に産まれた訳だから、兄は当然の如く音楽家になり、僕は自由気ままに生きる様になった。日々、街を歩き、句を詠み、画廊や古書店へと足を運ぶ。そして、陽が暮れる頃には酒場の暖簾を潜るのだナ。

      雨あがり窓の向こうの秋涼し    八十八
       ◇        ◇        ◇
昨日は、長い夏休みが明けた神保町の酒場『兵六』の暖簾を潜った。
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冷暖房が無い酒場は、当然の如く八月は暑い。当然ながら、窓も入口も裏戸も開け放たれているのだが、コの字カウンターの一番奥に座ったならば、風のかの字も流れて来ない。そんな訳で、毎年この酒場は二週間の夏休みを取るのだナ。

故に、昨日は行き場を失った神保町の酒場難民たちが、一斉に押し寄せた。午後六時を前にカウンターも二卓のテーブル席も一杯だった。

テーブル席で暫く相席をさせて戴き、コの字へと移動。ビールから無双の白湯割りに切り替えたところで、酒朋ビリー隊長がやって来た。

この日三度目の移動をし、一番暑い奥の席へと座った。
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FC東京の不甲斐ない成績に業を煮やしながら、酒を酌んでいるとカウンターの向こうから「東京自由人日記の方だネ」と声を掛けられた。

僕の日記を以前から読んで戴いている様で、随分と僕の俳句趣味や街歩きなどを知っておられた。坂崎重盛さんのお知り合いとの事だったが、その方は中川六平さんと云う御仁だった。ハテ、何処かで聞いた名前だナと思っていたら、昔読んだ坪内祐三さんの「古くさいぞ私は」の編集をしていた晶文社の方だった。

夕べのお話では、もう晶文社には居ないみたいだったナ。ご同席の中村さんも講談社の方で、矢張り此処『兵六』には出版関係の方が多く集うのだネ。

晶文社と云えば、1970年代頃に夢中になって読んだ本の多くがこの出版社が出していた本だった。

小林信彦さんの「東京のロビンソン・クルーソー」や植草甚一氏の「ワンダー・植草・甚一ランド」など、当時の晶文社の本は今も時々読み返す事がある。
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「植草甚一スクラップブック」は、全40巻と別巻の1冊総て揃えたものだ。77年に出た「僕の東京案内」を読んで、初めて池波正太郎に興味を覚えたりしのだったナ。

そう云えば、最後に買った晶文社の本は、ハウエル・レインズの「フライフィッシング讃歌」とつげ忠男の「釣りに行く日」だった筈だから、もう15年以上も前になる。
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昨年、確か50周年を迎えたのだったネ。
       ◇        ◇        ◇
さて、『兵六』を出た僕らは新橋へと移動した。

昨日は新橋駅前ビル二号館の地階に在る『すし処まさ』にお邪魔した。
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間口一間、三席の小さな寿司屋でアル。故にいつも予約で埋まっているのだネ。前回、4月に伺った際に予約を取ったのが、昨日なのだ。
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兵六にてビールを飲んだので、初めから日本酒を戴いた。
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先ずは「銀嶺立山」から。食事は店主の鈴木優さんにお任せでアル。
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僕とカミサンは、縞海老と淡路島の鯛から開始。海老アレルギーのビリー隊長は、代わりに赤貝を戴いた。
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続いて、北海道の新サンマを刺身で。
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脂が乗り過ぎず、刺身が酒に良く合った。
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濃い豆乳で作った豆腐も此処の名物になっているネ。

此処は、本当に居心地が良い寿司屋だ。
何よりも主人の優さんの人あたりが良いのだナ。
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物腰の温かさと丁寧な仕事ぶりには、本当に感謝しながら愉しく時を過ごす事が出来るのだ。
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牡丹の花が咲いた様なメバチマグロは、炙りで戴く。
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ビリー隊長も喜んでくれて嬉しい限り。
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いや、ただの酔っ払いになっていたかナ。
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それにしても酒がススむ。我ら吞んべいの心を察してか、ホヤを出してくれた。
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もう、ぐふふの旨さ。
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続いて、山口の鮟鱇の肝の登場だ。
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酒を黒龍に切り替えて、握りへと突入。
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本マグロのヅケも美味かったネ。
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島根県で穫れた白イカも甘かった。
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シンコも今が旬だネ。
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黒龍もお代わりし、赤貝を喰う。
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車海老も帆立も良い味だ。
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脂の乗った鯵もこれまた美味い。
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どうですか、美味しそうでしょう!
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イクラの小丼と巻物二種を戴いて満腹だ。
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最後は赤出しで〆た。
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今回も本当に美味しい寿司と酒でしたナ。

愉しい時間は、あっと云う間に過ぎていった。ビリーの終電も気になるし、いざ終了。ご馳走さまでした。
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それにしても、あれだけ吞んで食べて一人当たり1万円程なのだから嬉しいネ。

次回はまた当分先の3月に予約を入れた。予約した事を忘れてしまいそうになる程先なのだナ。
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Commented by 第三モッキリ娘 at 2011-08-23 19:09 x
東京自由人さん、お久しぶりです!ビアガーデン終わって、私の恋の夏もおわった~。ふられましたよ!暫くは腱鞘炎の、針治療に通うのでお酒飲めないですが、自由人さんのブログで、酒場の雰囲気を楽しませてもらいます~。荒木マタエモンさんの、ドーンッ!にはまってます。
 
Commented by 多摩三郎 at 2011-08-24 00:51 x
↑テレ東の「激セマ繁盛店ベスト20」で「すし処まさ」が紹介されてましたよ。雰囲気といい、値段といい、一度でいいから行ってみたいです。それにしても、来年3月の予約ですか……(遠い目)。
Commented by cafegent at 2011-08-24 14:10
第三モッキリ娘さま、こんにちは!

夏の恋も終わってしまったんですネ。残念!
腱鞘炎は、ジョッキの持ち過ぎでかな?早く治ると良いね。

札幌はもう秋ですネ。では、また!
Commented by cafegent at 2011-08-24 14:12
多摩三郎さま、こんにちは!

「すし処まさ」は、とても居心地が良い寿司屋さんです。
気長に待って訪れるのも、これまた良し。
きっと、愉しい酒になりますヨ。
by cafegent | 2011-08-23 15:10 | 食べる | Trackback | Comments(4)