東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/何のその 百年後は塵芥(ちりあくた)

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寒くなると必ず食べたくなる料理が幾つか有る。

銀座松屋裏に佇む江戸料理の名店『はち巻岡田』の鮟鱇鍋、目黒のはずれ『寿司いずみ』のクエ料理、神楽坂の『御料理山さき』の鴨の巌石鍋も冬ならではの味だ。

『はち巻岡田』は、故山口瞳が「はち巻岡田の鮟鱇鍋を食べなくちゃ、僕の冬は来ない」とまで書いている冬の名物だ。

そして、もうひとつ神田錦町に店を構える『流水楼』のシュワンヤンロウも外せない。この「シュワンヤンロウ」とは、子羊のしゃぶしゃぶのこと。日本のしゃぶしゃぶの元になった料理だと聞く。

生後4、5ヶ月のラムを生で仕入れて、超薄切りにして出される。これをしゃぶしゃぶの鍋の中に潜らせて、テーブルに並べられた10種類もの薬味で戴くのだナ。

鍋が炭火で出されるのも良い。鍋の〆は羊肉の水餃子や麺を入れてくれる。コースに出されるスッポンの姿煮込みも京都のスッポン料理とはひと味も二味も違う、此処ならではの味だ。

この店で、何よりも愉しみにしているのが最後のデザートでアル。

その名は、「三不粘」(サンプチャン)だ。「三つ、粘らずくっつかない」の意味だ。主人曰く「箸にくっつかず、皿にくっつかず、歯にくっつかない」から、香呼ばれているのだとか。
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黄金色の色合いも味も、中華風カスタードクリームの趣きか。

作家の檀一雄は、この「三不粘」が大好物だったらしい。

壇太郎さんのエッセイによると父・一雄は日頃から、「何のその、百年後は塵芥(ちりあくた)」と言い放って、ものを溜め込むことを極端に嫌っていたそうだ。
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あらためて思うと、今流行りの「断捨離」のハシリかもしれないナ。

昭和44年の今日、12月9日にも壇一雄は作家仲間や香港財閥の当主と、『龍水楼』を訪れた。そして、西太后が愛した宮廷料理の「三不粘」を好んで食べたそうだ。

黄金色のデザートを食べ終えると、色紙と硯を店の主人に用意させ、筆をとった。

        何のその 百年後は塵芥  檀一雄

この歌を色紙に記すのだから、可成り上機嫌だったのだろう。

店主は当時、壇一雄がどんな作家かも知らなかったらしいが、この色紙は今も店に飾られている。

この逸話は、’96年の朝日新聞のコラムで知ったのだが、それ以来冬が近づくと『龍水楼』の「シュワンヤンロウ」と「三不粘」が恋しくなるのだナ。

「はち巻岡田」の鮟鱇鍋

「山さき」の鴨の巌石鍋
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Commented by cafegent at 2011-12-12 15:09
寧夢さま、コメントありがとうございます。

有吉佐和子さんの本も読んでみますネ。
殆ど吞んだ暮れ日々のことばかり書いておりますが、
これからも宜しくお願い致します。
Commented by 寧夢 at 2011-12-12 20:07 x

何だか誤字だらけのコメントで申し訳ありませんでした。
あんまり恥ずかしいので、消して本の題名と合わせて
内容を訂正しておきます。
古書店や図書館ならば多分まだ手に入ると思います。

檀一雄の『檀流クッキング』は、昔好きな本でした。
作るより食べる方が好きですが。

>はじめまして。食べたことはないのですが、今日の記事を見て、
>『有吉佐和子の中国レポート』に出ていたデザートだったと
>思い出しました。小澤征爾のご家族も好きだった逸品だと。
>それは、日本国内でも食べられる物だったのですね。
>(といっても、関東まで出向く用事もありませんが)

>美味しいお酒やお料理の記事があるので、
>最近こちらにちょくちょくお邪魔させて頂いています。

by cafegent | 2011-12-09 15:58 | 食べる | Trackback | Comments(2)