東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/年の瀬の浅草で『松風』を偲ぶ。

近所のマンションのエントランスは、毎年この時季になると見事なクリスマス・イルミネーションで彩られる。
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廻りの家の分までクリスマスを祝福してくれているみたいなので、我が家では何も飾らない。

昼間は青空が広がったが、夜になるとさすがに冷えるネ。

夕べはカミサンが岡山出張から戻り、岡山の実家から義父が育てた法蓮草や大根などの野菜をたんまりと持ち帰ってくれた。
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外も一段と寒さが増して来たので、「常夜鍋」を作ることにした。

毎晩食べても飽きないから、常夜鍋と名付けられた訳だが、野菜不足の我が身にはとても有り難い鍋でアル。
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豚バラ肉と法蓮草だけで作るいたってシンプルな鍋だが、我が家では昆布で出汁をとり日本酒をドッと入れた鍋に豆腐やシメジ、長ネギなども入れる。

大根おろしを沢山入れてポン酢で食べたのだが、法蓮草の山があっと云う間に無くなった。法蓮草のアクも日本酒が消してくれるのだろうか、〆の素麺も大変美味かった。

そう云えば、向田邦子さんもこの鍋が好きだったと書いていたナ。

     徳利の酒 温(ぬる)くなり 冬日和   八十八

     ◇          ◇          ◇
年の瀬が来ると毎年、浅草寺まで出掛ける。
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小さな羽子板と正月用の注連縄(しめなわ)を買いに行くのだ。
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また、この一年無事に過ごす事が出来たことをお詣りするためだ。
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初詣とはまた少し違って気も引き締まるのだナ。

今年は新しいピーコートを手に入れたので、日々愛着が湧いて来る。
いつものマリンキャップにも、とても似合う。さながら、「タンタンの冒険」に登場するハドック船長の気分だろうか。
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風が強い日などは、コートの襟を立てるとちょうど耳を覆うことが出来るので、耳当てなども要らないのだ。

お詣りを済ませた後は、浅草寺からホッピーストリートを歩く。もう永い間、羽子板市の帰りは居酒屋『松風』で酒を引っ掛けていた。
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先ずはビールの小瓶を戴き、自分の一年を清める。それから、日本酒を戴くのだ。『松風』は全国の地酒を揃えていた。此処の酒のアテも良かった。煮豆だったり、奴だったり、塩辛などと何れも酒に合うものばかりでアル。

酒を注文すると、店の方が復唱するのだが、その声の響きがまた良かった。僕は宮城の地酒「浦霞」に始まり、岩手の「南部美人」そして福島の「大七」で締めた。

但し、「当店では御一人様に付き、酒は三本以内にお願い致します」の貼り紙が壁に無情に貼られていることには、いささか参った。
酒三合とは、丁度ほろ酔い気味になりかけた頃合いだからでアル。

文句の一つや二つ云いたい所だが、小心者の吞んだくれ故にいつも唯黙って三本の酒を呑み干して席を立つのであった。

時代が移り行き、街の景色も日々変わっていく。浅草の街もなんだか面白みが薄れた様に感じるのは僕だけだろうか。
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若者たちは、もう羽子板などに目も向けないのだろう。

今年の浅草寺の境内は一段と風が冷たく感じた。そして、あの『松風』も今はもう無い。
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     冬の陽を 甍(いらか)に浴びる 浅草寺   八十八
by cafegent | 2011-12-20 13:34 | 食べる