日々是日記/8月末、天然鮎と天然鰻に酔う!
2014年 08月 31日
西岡小十さんの作品が好きで、店を出す時にも使う器を焼いて戴いたそうだ。小十翁最後の作品になったと言うのだから感慨深いネ。
11年前に『銀座 小十』を開いて以来、ミシュランで三ツ星を獲得し続けており昨年はフランスのパリにも出店を果たした。オープン間もない頃はパリと東京との往復が続き、東京の店に居ない時も多くなっていたそうだが、最近は銀座の店に居ることも多くなったみたいだ。
今回も奥田氏が自ら腕を振るってくれる事を期待して、カウンター席が取れる日を予約した次第でアル。
美しい一枚板のカウンターは樹齢700年の檜だそうだ。席に座った時から「奥田劇場」の幕が開く。此処はワインも充実しているが、前日にワインを飲み過ぎたので、先ずは生ビールで始めることにした。バカラのローハンに注がれたビールで乾杯!
そして、最初に登場したのは、毛蟹と北海道産の生雲丹を焼き茄子とズイキの冷製和え物だ。毛蟹と茄子、雲丹と茄子、毛ガニとずいき、雲丹とずいき、と交互に味の変化を楽しんで戴ければ、と奥田さんが薦めてくれた。
この料理が載る器もまた素晴らしかった。真白き岩の砦の頂上に色鮮やかな雲丹と毛蟹の色が映える。青白磁の斬新な器は、陶芸家の加藤委(つばさ)さんの作品だ。加藤さんは僕より二つ若いが、僕が六本木のAXISで仕事をしていた時に同じビル内の陶芸ギャラリー『サボア・ヴィーブル』での初個展を観たのが最初だった。ギャラリー店主の宮坂さんに薦められて以来、好きな作家の一人となった。多治見出身の作家だが従来の多治見焼き、美濃焼きとはまるで違う作風は現代の陶磁器を牽引している陶芸家だと思っているのだナ。
酒は福島の純米酒「早瀬浦」を二合戴いた。ガツンとした中に感じる甘い香りが毛蟹の味を引き立ててくれた。
お次ぎはアワビの素麺すり流しだ。アワビの身をすり流しにして出汁と合わせてあり、素麺に絡み合う味に思わず唸ってしまった程だ。細切りにしたアワビの身肉も実に旨い。晩夏に涼を運ぶ一品だった。
三品目に出て来たのは、椀ものだ。
さぁ、此処からお造りだ。奥田氏、僕らの為に再び加藤委さんの大きな青白磁の器に盛りつけてくれ、その姿は迫力満点だったなぁ。
日本酒を変えてみた。お次ぎは三重の「寒紅梅」だ。
そして、お待ちかね若鮎の塩焼きの登場だ。席に着いた時、目の前で活きた天然の若鮎を一尾ずつ串にさしていたのだが、それをじっくりと一時間もかけて焼き上げた極上の逸品でアル。
活きたまま備長炭の遠火でゆっくりと焼かれるのだから、断末魔を迎えて口を開けている姿が印象的だが、一口食べてみるとその美味さに感動しっぱなしになった。
続いて、牛肉と冬瓜の炊き合わせが出た。
酒もススむし、至福のひとときを味わっている。
さぁ、真打ち登場だ。夏の『小十』での人気の料理は天然の大鰻だ。
あぁ、本当に美味しい料理を堪能した。
煎茶の後に戴いた抹茶も素晴らしかったナ。
カミサンもとても喜んでくれた様子だし、8月の終わり『小十』に来れて良かった。安定した三ツ星のグランメゾンも良いが、常に意欲的な料理人が腕を振るう和食にして大正解だった。