東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/55歳の誕生日、大好きな天ぷらで祝う。

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「奇跡のリンゴ」で全国的に知られるようになった青森の無農薬リンゴ栽培の木村秋則さんが作ったリンゴふじを戴いた。
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木村さんが監修をしている雑誌『自然栽培』に僕も旅の紀行文を連載しているご縁で、頂戴した貴重なリンゴだ。
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収穫前の2週間以上続いた異常寒波によりリンゴが凍り収穫できない状況が続いたそうだ。
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木村さん自身、樹の上でこれ程何度も凍りついたリンゴは初めての経験だったそうだ。それゆえに味はバラツキがあるとのことだったが、木村さんが手塩にかけて育てたリンゴなのだから、心してじっくりと味わってみたいのだナ。
    ◇          ◇          ◇
閑話休題。
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天麩羅屋の名店老舗がひしめく茅場町・八丁堀界隈に於いて、革新的な天ぷらに挑み訪れる人達をもてなしてくれるのが、八丁堀2丁目の雑居ビルの中にひっそりと佇む『てんぷら小野』だ。
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二代目のご主人、がっしりとした躯とは対照的に、実に優しい笑顔で客を出迎えてくれるのだナ。
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L字型カウンターは、総てのお客さんをもてなすのに丁度良い大きさだ。この日は早めの時間に訪れたので、店主とゆっくりと会話を愉しみながら、旬の野菜や魚介を味わうことが出来た。

毎年、誕生日には大好きな天ぷらを食べに出掛けることが多い。
『みかわ』、『てん茂』、『近藤』、『山の上ホテル』『よこ田』しかり、でアル。ここ『てんぷら小野』は前々から友人たちに薦められていたのだが、今回初めての訪問となった。

先ずはビールを戴き、喉を潤す。
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その間、主人は黙々と天ぷらの支度に動いている。

先ずは、対馬の鱚(キス)からだ。添えられた塩で戴いた。
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おぉ、ふっくらとした鱚の白身に香ばしい衣が絶妙だったナ。

続いて、沖縄産の車海老だ。
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さいまき程の大きさの海老には、同じく沖縄の紅芋の色素で色付けされた塩で味わった。
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頭も香ばしく揚がり、実に美味い。

ビールの次は白ワインを戴いた。
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奥様がずらりとオススメのワインを出してくれた。大いに悩んだが、サンセールを選んだ。
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アンドレ・ヴァタンが生産するAOC.サンセールのシャルム2013年は、程よい酸味とフルーティな香りで、芽キャベツの天ぷらに実に良く合った。

お次は、二代目店主が自信を持って薦めてくれた三陸沖のホタテ貝の天ぷらだ。
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贅沢な白トリュフを使った塩で戴いたが、芳醇なトリュフの香りが、ホタテの旨味と絶妙に絡み合った。むふふ、な味わいだったナ。

続いては、神経〆をして四日目の墨イカだ。
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しっかりと熟成されたイカはとても甘く、頬が緩む美味さだった。

そして、山形の蕗の薹(とう)の天ぷらだ。
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まだまだ冬が続いているが、暦ではもう春でアル。蕗の薹の苦みに一足早い春の息吹を感じることが出来た。
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主人に薦められて、この蕗の薹にこれから旬を迎えるホタルイカを載せて、一緒に口へと運んだ。ガーンッ!ふきのとうのほろ苦い味わいとホタルイカのワタの旨味が渾然一体となって、僕の脳を刺激した。

聞けば、二代目の志村幸一郎さんは、縁あってこの『天ぷら小野』の娘さんと夫婦になったそうだ。以来、初代の味を活かしながら、革新的な天ぷらを日々探求し、天ぷら激戦区に於いて暖簾を守り続けているのだネ。志村さんのホスピタリティは、天ぷらの味はもちろんのこと、お客への気配り目配りにも冴え渡っている。
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得意の英会話を活かし、海外からのお客様からの人気も絶大だ。この日も馴染みのイタリア人が休暇を取って家族4人で日本旅行をしている途中に、此処を訪れた。

小さなお子さんたちにも天ぷらを好きになって貰いたいとの思いから、揚げ方、衣の付け方、食材と、きめ細やかに対応していたのにも驚かされた。イカの天ぷらもイタリアに行けば「フリット・ディ・カラマリ」と似て非なる食べ物があるからネ。

不器用にも必死で箸を使うイタリア人一家に、自らフォークを差し出さないことも、彼らの努力を尊重した見事なもてなしだったナァ。
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さぁ、天ぷらは群馬のアスパラガス、椎茸と続く。

僕はこの日、この椎茸が一番感動したナ。
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肉厚で濃厚な味と薫りをしっかりと衣で包みじっくりと時間をかけて揚げていた。食材の味や時季によって、衣の厚さ、硬さを変える辺りも心憎いのだナ。この椎茸にはブルゴーニュのピュイ・フュッセ、白ワインがベストマッチ。
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ドライでガツンとくる味に椎茸の旨味が絶妙に絡み合った。

志村さん、仕事の合間を縫って日々、多くの料理人と交流を深め、刺激しあっているそうだ。それは、料理人だけではなく野菜を作る農家の方々も同様だ。足で探し歩いて自分で納得した野菜農家と契約して分けてもらっていると伺った。鶴岡の井上農場の小松菜を使った野菜サラダは本当に旨いと思った。
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この武井ファームの無農薬で育てた蕪の天ぷらも絶品だったナ。
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熊本産の早採りの筍、沖縄のさんぴん人参も甘くて美味い。
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旬の野菜の天ぷらが続いて、春を独り占めした感じだったネ。

お次のワインは、ブシャール・ペール・エ・フィスのピュリニー・モンラッシェだ。割と良いワインだが、誕生日と云うハレの日なので、まぁ良いか。
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遥か遠くのブルゴーニュの葡萄園に思いを馳せながら、天ぷらとのマリアージュを愉しんでいる。
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さぁ、今度は〆てから一週間置いた天然とらふぐの天ぷらだ。
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これにも重めのモンラッシュが合ったナァ。
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完熟の赤胡椒を振り掛けたとらふぐは香ばしくて頬が緩むゆるむ。
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白子の天ぷらには、沖縄産もずくを合わせて食べた。
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菜の花、長野の自然薯(じねんじょ)も素晴らしい味だった。
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ワインはムルソーへ。
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木の実の薫り漂う濃厚なワインの味に合わせたのは穴子と大間のウニだ。
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ウニは、沖縄のあおさを和えて揚げてくれた。あぁ、むふふ、な旨さに脱帽だった。

一通りの食材を戴いたが、小ぶりだけど旨味の詰まった牡蛎が有ると云うので、それも追加で揚げて貰った。
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その間も店主は、イタリア人一家を相手に饒舌な会話で食材の説明などをしていた。ホタルイカを「ピッコリ・カラマーリ!」と云うなんて、ニクいよネ!

〆のご飯は、卵の黄身を天ぷらにした卵ごはんにし、連れは天茶をお願いした。
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卵の天ぷら飯しと云えば、高円寺の大衆天ぷら『天すけ』がお馴染みだが、此処のはその極上版といったところか。
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十二分に満腹となったが、最後の金柑が口の中をさっぱりとしてくれて、良き〆となった。

此処は誰かをもてなす時に最適な一軒だナ。居心地も天ぷらの味もワインの味も、総てが僕の心を捕らえてしまったようだ。こりゃ、ハレの日と云わず、旬毎に訪れてみたくなった。
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ホッコリとしたひととき、実に最高な誕生日の夜であった。

外に出ると雨もすっかりあがり、少しだけ春の香りが漂っていたナ。
by cafegent | 2015-02-24 16:30 | 食べる