東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/寿司いずみにて、春を食す。

久しぶりに目黒の『寿司いずみ』にお邪魔した。

都立林試の森公園の裏手の住宅街にひっそりと佇む寿司屋は、開店以来ずっと「準備中」の札が出ているままだ。
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何故ならば、小体の店ゆえに常に予約の客で埋まっているので、ふらりと訪れても空いていないのだネ。

この日は「名残の鮟鱇を食べ尽くす」と云う会が催されており、たまたま二席だけ空いていたので、入ることが出来たのでアル。

そんな訳で、僕ら以外は皆さん鮟鱇づくしの宴となっていた。
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もちろん、僕らはいつもの様に大将にお任せだ。

先に『牛太郎』でビールを戴いていたので、此処では日本酒からスタートしよう。先ずは富山県滑川の「千代鶴」純米吟醸を戴いた。
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口当たりは少しトロッとした感じだったが、後味がサラリとして旨い。

此処では、料理が出ても決して先に箸をつけてはいけない。そんなルールがあるのだ。どの料理も大将が手間を惜しまずに試作を繰り返し完成したものばかりなので、大将の講釈(料理の説明、魚の産地など)を聞いてからじゃないと食べてはいけないのでアル。

もしも先に勝手に食べたなら、「勝手な行動をすると感情的になって、勘定100倍にやるよ!」と一括だ。この究極なオヤジギャグに苦笑いしながら、過ごすひとときもまた愉しいのだヨ。

そして、この日も「名残の鮟鱇を食べ尽くす」会の方々に同じギャグを言いながら、突然こちらに振るのだナ。
「アチラのお客様は、常に勘定二倍を戴いているので、いつでも好きな時に食べていいんですヨ!」だとサ。この容赦ないイジリに心ならずも幸せを感じるのでアール。

さぁ、「いずみ劇場」の幕開けだ。最初はお隣さん達の鮟鱇のお裾分けから。「あんこうの冷や汁」の登場だ。
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能登では、あんこうの卵巣を「布」と呼ぶ。平板状で布切れのようなので、ヌノと呼ばれているそうだ。この布を大根と一緒に冷や汁仕立てにしているのだが、凝縮された旨味がすべて大根に滲みていた。まさに深まる春に相応しい一品だったナ。

お次は「焼き蝦蛄」だ。
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岡山浅口で獲れた蝦蛄は、香ばしくて酒がススむ。岡山ではシャコはおやつ代わりに食べているらしく、我が家でも毎年カミサンの実家から大量の蝦蛄が届く。カミサンは手慣れた手つきで殻を剥くのだが、僕は可成り手間取りながら剥くことになる。慣れとはスゴイよネ。

そして「タコの桜煮」が出た。
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桜の花と葉を一緒に煮込むため、桜の良い香りが食欲をソソルのだナ。
タコは「明鏡止水」でお馴染み大澤酒造が作るサイダーを使って煮込んでいるのでとても柔らかい。器まで桜の花とは、この時季ならではの料理だ。

酒は富山県高岡の「勝駒」しぼりたて新酒を戴いた。
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これはまたフルーティで爽やかな新酒だナ。

この酒に合わせるようにカツオと花鯛の刺身が登場。
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「いずみ」では、刺身は玉葱の擦りおろしに和芥子を載せて食す。今回は静岡山の新玉葱に、いずみ自慢の和芥子を合わせる。大将曰く、この和芥子はユーサイドの久保田社長渾身の本物の和がらしで、からしの産地は季節によって変わるそうだ。
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カツオに載せて口へ運ぶ。あぁ、むふふの瞬間だ。
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花鯛は、きび酢で軽く〆ており、酒がススむススむ。

お次は再び、あんこうのお裾分けだ。
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「あん肝玉子」は、たっぷりのあん肝が入っており「痛風まっしぐら」な一品だった。赤山椒をパラリと振り掛けて、戴いた。あぁ、最高に美味い。

今度の酒は千葉県の飯沼本家が造る「一喜」を戴いた。
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この酒蔵は「甲子(きのえね)正宗」が評判だが、この一喜もフルーティでスッキリとした呑み易い酒だ。では、この一杯の喜びをじっくりと味わおう。

蕗(フキ)味噌をアテに酒がススむ。
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油炒めをしていないので、蕗の旨味をストレートに味わっている感じだったナ。

料理は続く、どこまでも!
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さぁ、お次は大将自信作の「桜蒸し」の登場だ。
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お椀の蓋を取った瞬間に桜の香りが、僕の鼻腔を突き抜けた。芝えびのすり身でサクランボの実を包み込み、大島桜の葉で巻いてある。その下には桜鯛の身だ。これを大島桜の花と葉を刻んだあんに絡めて戴くのだナ。むふふ。視覚、臭覚、味覚が渾然一体となって、小さな椀の中に百花繚乱の桜を表していた。

     世の中にたえて桜のなかりせば
            春の心はのどけからまし

この味に、思わず在原業平(ありわらのなりひら)が詠んだ歌が浮かんだ。
この世の中に、桜の花がなかったら、どんなにも春を長閑(のどか)な気分で過ごせただろうに、と詠っているのだネ。

親方の料理の世界は、本当に素晴らしい。お椀の中の壺中天だナ。小さな器の中に無限の宇宙が広がっているかのようだ。
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お次もまた蓋物だった。
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こちらは、あんこうの肝と身のクリーム煮だ。濃厚なあん肝を優しい味で上品に仕上げてあるのだが、これも間違いなく「痛風まっしぐら!」な一椀だネ。ぐふふ。

酒は東北・塩釜の阿部勘酒造が造る「阿部勘」特別純米を戴いた。
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阿部勘と云えば、東日本大震災の被害を受けた酒蔵だが、この4年間で完全に復活したのだネ。

2006年に他界した阿部勘の名杜氏・伊藤栄さんの愛弟子である平塚杜氏が仕込んだ渾身の酒は、僅かに感じる酸味と米の旨味が口一杯に広がり実に味わい深い一杯だった。

この酒に合わせてもう少し珍味を戴こう。
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今回は鯛の子で造った明太子、赤貝の塩辛、それにアワビの肝を出して戴いた。
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あぁ、シアワセのひとときだ。もう、痛風でも何でも来いってもんだ!

更に追い打ちをかけるように出てきたのは、再びあんこうのお裾分け!
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あん肝の酒だった。
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おぉ、濃厚な甘みと旨味が酒とマリアージュしていたナ。

料理の最後は、北寄(ホッキ)貝のお造りだ。
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北海道出身の僕は、この貝に目がない。ほんのり桃色の貝は、本来東北北海道あたりの食べ物なので、東京では馴染み薄だったが、回転寿司屋さんのお陰でやっと日の目を見ることとなった貝かもしれないネ。食感も良く、噛むほどに旨味が広がるのだナ。
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さて、酒を切り替えて「いずみ劇場」第二幕の幕開けだ。

白く濁った酒は「アームストロング砲」の異名を持つ「鍋島」の特別本醸造活性にごり生酒だ。
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フルーティーで甘みの強い酒だが、シュワシュワッとしたスパークリングの炭酸感が食事の幕間をリフレッシュさせてくれた。

握りの最初は細魚(サヨリ)から。
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季節を味わうって素敵だネ。

こちらは、鯵の赤ちゃん仁丹(ジンタン)だ。
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先ずは酢〆で戴く。うん、美味い。
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続いて白板昆布を載せた仁丹の昆布〆だ。甲乙つけ難くどちらも素晴らしい。

そして、陸奥湾の内側、関根浜で獲れた本州ムラサキウニの握りを戴いた。
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口に入れた途端、思わず口角が緩んだ。いやぁ、本当に甘くて旨味が凝縮されいる。

寿司いずみでは、季節毎に美味いウニを各地から取り寄せているので東京に居ながらにして全国ウニの旅が出来るのだナ。

酒は新潟の大洋酒造が造る「越の魂」純米吟醸を戴いた。キレがよく爽快な口あたりの辛口で、いずみの大将もお気に入りの酒でアル。

握りは、春を告げる魚シロウオだ。
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純白なシロウオの群れが泳いでいるような握りだネ。むふふ、のふ。こちらは、マカジキだ。あぁ、これも美味し。

さぁ、寿司いずみ恒例の「小肌三本〆」でアル。
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先ずは赤酢で〆た小肌から。云わずもがなの美味さだネ。お次は、白酢で〆た小肌だ。
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そしてトリは、白板昆布で〆た真打ち登場。いずみと云えば小肌三種の食べ比べだが、時には柚子酢になったり、洋酒ジンを用いたジン酢だったりと大将の遊び心が溢れている。だが、何れもが大変に美味いのだから、只々驚くばかりなのだナ。

最後の酒は、「明鏡止水」でお馴染み長野の大澤酒造が造る変わり種「ラヴィ・アン・ローズ」で締めくくった。盃を口に持って行けば、鼻腔をくすぐるマスカットの様な果実香にクラッとし、口に含めばサラリとした軽やかな味に安堵する。そう、少々呑み過ぎたかナ、と思った時の〆に持ってこいの日本酒がコレだ。

新玉ねぎの擦りおろしを載せたカツオのヅケも味に深みがあり美味し。
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花鯛の握りは、歯ごたえも良く甘い。
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本マグロも云うこと無し。
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香ばしく炙った筍の握りも最高に美味かったナァ。

この後、いずみ自慢の煮蛤に煮穴子も握って戴き、最後は大好きな海老のおぼろで終了した。「おぼろ」とは江戸の頃の寿司種の保存法であり、保存用に車海老を漬け込んでいたおぼろを酢飯に見立てて、握りにするのだネ。
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最後は、春を運ぶ桜のお吸い物で締めくくった。

あぁ、この夜も最高に幸せな時間を過ごすことが出来た。我が家では、ハレの日は大いに奮発することにしている。この日は結婚記念日だった訳だが、夫婦二人が幸せな気分に浸り、酒に酔えるなんてちょっと贅沢だが、これからも続けて行けることを願うばかりでアル。

ご馳走さまでした。次回は北海道のウニの季節に来れたら良いナァ。穏やかな気候の春の夜、林試の森公園を抜けて武蔵小山まで歩こう。まだ『丸佐 長平』が開いている時刻だしネ。
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by cafegent | 2015-05-01 15:37 | 食べる | Trackback | Comments(0)