風薫る五月、テレビのニュースでは、台風6号が今夜にも本州に上陸すると報じている。
ゴールデンウィークを過ぎて、暦では「初夏」となった。七十二候では「蚯蚓出」(みみず、いづる)の頃、蚯蚓(ミミズ)が地面の上を這いずり出る時季が来た訳だネ。
気候が良くなり、やっと地上に出たと思ったミミズも油断する暇もなくムクドリなどの餌になって喰われてしまう。
自然の摂理とは時に非情なものだが、こうやって地球は進化していくのだナ。
出るやいな蚯蚓は蟻に引かれけり 一茶
地上に出た途端、人に踏まれたり灼熱の大陽によって干涸(ひから)びたりしてしまうミミズをしめしめと食糧として運ぶ蟻の群れを一茶は見たのだろうネ。
毎朝歩く公園では、キビタキのオスが美しい音色で囀(さえず)っている。
この声を聴くと春から夏への移ろいを感じるのだが、今年は少し到来が遅かったようだ。だが、肝心のメスの姿が見えないので、オスも空振り状態が続いているのかもしれないナ。
ウグイスもキビタキもメスの気を引くために、囀(さえず)るのだからネ。
五月も中旬を過ぎれば、今度はホトトギスや筒鳥が来る季節となる。だが、いつもの公園がどんどん整備されて雑木林が減っているので、今年は来てくれるかどうか微妙でアル。
◇ ◇ ◇
閑話休題。
さて、この連休は遠出をせずに日帰りで行ける小旅行に出掛けた。
JRが販売している「休日おでかけパス」を利用すれば、2,670円で東京近郊の指定エリア内を一日中何度でも乗り降り自由となるので大変お得だ。しかも、特急券やグリーン券を購入すれば、普通列車のグリーン車や特急、新幹線まで利用出来るのだから嬉しい限りでアル。
今回は、品川駅から千葉の成田駅まで快適なグリーン車に乗って、暫しの「居酒屋グリーン」を愉しんだ。
品川駅で買い込んだ駅弁はちょっと贅沢をして、東京が誇る老舗すき焼店『今半』が作るすき焼き弁当をチョイス。
さすがに高いだけあって、牛肉の質が高かった。
船橋辺りを過ぎると、車窓の向こうの景色が一段と長閑になる。
青々とした田んぼでは、田植えが始まっていた。二缶目のビールを飲み終える頃に成田に到着した。そこから電車を乗り換えて、砂原へと移動した。
砂原の街は、倉敷の美観地区や小江戸川越の様に江戸時代にワープした様な家々が数多く残されている。
よく時代劇の撮影にも使われているそうだが、最近のドラマ「東京バンドワゴン」の舞台にもなったらしいネ。
豊かな水の郷では、沢山のツバメが宙を飛び廻っていたナ。
東京でもツバメが営巣するが、こんなに沢山のツバメが巣を作っているなんて、やはり自然豊かな環境なのだネ。
伊能忠敬の生家を見学し、街を歩いたあとは酒蔵見学へと向った。
創業文政8年の歴史を誇る「東薫酒造」を訪れた。
全国新酒鑑評会で金賞を受賞している大吟醸「叶」は、今もこの左側の年季の入った機械で搾っているのだそうだ。
酒蔵見学の後の試飲も愉しみの一つだが、搾りたて純米生原酒の瓶詰めを買うことが出来たのは嬉しかったネ。
あぁ、来て良かった!
ツバメが多い中、違う鳴き声に目をやると電線にセグロセキレイの姿を見つけた。
一眼レフを持って来なかったのが悔やまれたが、まぁ旅なんて記憶に残れば良いのだよナ。(と負け惜しみ!)
砂原の街をグルリと廻り、大いに堪能した。
再び成田へと戻り、成田山へお詣りすることにした。
ゴールデンウィークなので、参道も凄い人通りだった。
さぁ、参拝を終えた後はお待ちかね『川豊』での鰻だ。
成田山へ行く前に整理券を貰っていたので、店に戻ると丁度タイミング良く入店することが出来た。
二階へと上がり、順番を待つ。この待つ間のひとときも鰻重の味を何倍にも盛り上げてくれるのだナ。
フワフワに蒸してから焼いた鰻の美味いことったら、あぁ堪らない。
端午の節句を控えたこの日、子供に戻った様な心持ちで鰻重を頬張ったのでアール。