東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/たまには若者に交じって巷の繁盛店へ!

夏至が過ぎて、季節は半夏生(はんげしょう)を迎えたネ。田畑などで半夏(からすびしゃく)が生え始める頃というわけだ。烏柄杓(からすびしゃく)の茎から取れる生薬の名を半夏(はんげ)と呼ぶのだナ。

この半夏生の時季に花を咲かせるのがハンゲショウ(半夏生、半化粧とも記す)で、葉の半分ほどが白くなるので、半分化粧を施しているように見えるからだ。
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漢方薬に用いられる半夏と半夏生は違う花だが、同じ頃に開花するから混同しがちなのだネ。

関西では、ちょうど鱧(ハモ)の季節になった頃だ。
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梅雨の季節が一番脂が乗って美味いと言われている鱧だが、東京だとちょいと敷居の高い食材と思われているかもしれないナ。京都の家々では、祇園祭の話に花を咲かせながら、鱧料理を楽しんでいる。捌いたり骨切りしたりと手間がかかりそうだが、家庭料理として親しまれているのだナ。

あぁ、「鱧の落とし」(骨切りした鱧を湯の中に落とし、冷水で締め梅肉で食す)も葛粉をまぶして吸い物にした「ぼたんはも」夏の季節に欠かせない一品だ。

そう云えば、先日NHKのテレビドラマ『みをつくし料理帖』を観ていたら、「ふっくら鱧の葛叩き」という料理が登場した。
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黒木華演じる澪(みお)も素敵だが、毎回彼女が作る料理がこのドラマの最大の魅力だよナァ。
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最後に彼女がドラマの中で作った料理を家庭でも作れるように再現してくれるのが、またイイのだ。モダンなキッチンスタジオでドラマ同様に着物に割烹着姿で料理を作る姿につい見惚れてしまうのだナ。

ハモハモ言っていたら、徳島の居酒屋『小島』で食べた鱧料理が食べたくなったナ。
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まーどーでもイーか。

     ◇        ◇        ◇
先日、巷で評判になってい店に行ってみた。この歳になると中目黒や代官山、学芸大学など若者たちが賑わうエリアから足が遠のいている。その中でも、新規オープンの店となると余程の知り合い関係じゃないと、億劫になってしまうのだナ。だが、友人たちが挙(こぞ)って足繁く通っていると聞いたので、重い腰を上げたのでアル。

いつものように武蔵小山の酒場『牛太郎』からスタートだ。
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此処ではホッピーは飲まない。何故ならば、地元武蔵小山を代表するハイサワーの本社が近くに在るからだ。
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僕と同い年の三代目社長の田中秀子さんの人柄も素敵だし、何よりキリリとしたレモン果汁の味が好きだからなのだ。
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ハイサワーは甲類焼酎を割って飲むのも旨いが、白ワインで割ってもイケるのだ。

牛太郎に来たら、先ずはコレを食べなくちゃ!
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一皿120円の「とんちゃん」は、酒がススむ最高の肴だヨ。ガツやアブラなどをニンニクなどに漬け込んで、特製の丸鍋で蒸し焼きにする。熱々のとんちゃんに刻んだネギと自家製の味噌ダレを添えてくれるのだ。都内縦横無尽に東京の酒場を飲み歩いているが、この料理を目にしたことは一度も無い。以前、店主の城(じょう)さんこと、新井城介さんに「とんちゃん」のことを伺ったことがある。元々は九州の筑豊地方の炭鉱向けのスタミナ料理だったそうだ。初代牛太郎の店主だった城さんの父が炭鉱夫だった店のお客さんに聞いた料理を思考錯誤して創り出した一品で、いつしかこの店の名物となったのだネ。

此処は煮込みも美味い。居酒屋のもつ煮込みと言えば、味噌が効いた濃い味が主流だが、牛太郎は玉ねぎの甘さが際立っている。優しい味が沁みたシロやフワなどがたっぷりと入っており、パンチの効いたとんちゃんとは対極の味わいだ。とんちゃんと煮込み、この二品が絶妙な酒菜のコンビネーションとなり、酒のグラスがどんどんと空いていくのだナ。

ハツ、ガツ、テッポウ、タン、なんこつなどの焼きとん串もスバラシイ。
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塩かタレを選んで焼いて貰うのだが、素焼きにして戴いてとんちゃんに乗せる味噌ダレで食べるのも実に旨い。そうそう、ピーマン焼きも美味いのだ。此処では、ピーマンの種を取り除かずに焼くのだが、種の部分も香ばしくて好い味だ。
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僕もピーマンの種は、牛太郎で初めて食べたかもしれないナ。

さて、程よく飲んだので、後ろで待つお客さんに席を譲ろう。この店では、後ろの待合席で待つことも大事なのだ。初めて訪れた方々も、待ち席で先客の注文の仕方やタイミング、帰り際の食器の片付けなどを黙って眺めていれば覚えてしまうからネ。
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城さん、ご馳走様でした!

随分と日が長くなった。午後7時だと云うのにまだ空が明るいネ。牛太郎を出て、26号線を夕日の沈む方へと歩いた。目黒通りの信号を渡り、左斜めの道へ入ると学芸大学駅の方へと続く。担担麺でお馴染みの『香気』の角を左斜めに進みUFJ銀行の前を右手に入ると、目指す店に到着だ。

初めてだったが、近くに友人の酒場も在るからスグに判るだろうとタカを括っていたら案の定迷ってしまった。店名の記された看板を探していたのが失敗だった。酒朋のライター森一起さんに場所が判らないので教えて、とラインで送ったりしながら、路地を何度もグルグル回ってしまった。そして、改めて「立ち飲み」だったよナ、「イタリアン」だったよナ、と視覚と嗅覚を再度発揮して店々を見て回ると、漸く辿り着いたのだ。

其処は、角地に立つ新しいビルの一階。オープンエアな間口で、ひと際賑わっている酒場だ。そう、此処が今回初訪問の立ち飲みイタリアン『あつあつ リ・カーリカ』だ。
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それにしてもだ!小さな木の板に手書きのアルファベットで『atsuatusu Ri Carica APERTO』と描いてあっても、これじゃやっぱり判らないよナ。

学芸大学で評判のイタリア料理店『リ・カーリカ』『カーリカ・リ』に続く3店舗目となる新店は、この春にオープンしたばかりだが、既に連日大賑わいとなっている。

この日も午後8時前に訪れたのだが、L字型のカウンター席も壁際の席も満杯だった。こりゃ駄目かナ、と思っていたらタイミングよく壁際のお客さんがお会計を済ませて出てきてくれた。

細長い木のカウンターの下にはフックが付いているので、バッグを掛けて狭い通路を妨げないようにするのだネ。それでもオープンキッチンに面したメインのカウンター席と壁際の間は狭いのだ。双方にお客が立てば、その間をすり抜けるのは至難の技でアル。それでもボウタイ姿が可愛いスタッフの男の子は器用に往き来してワインや料理を運んだり、接客に勤しんでいたナ。

ワインはビオワインが中心で、700円から1,200円の幅で白・赤を数種類セレクトして用意している。もちろん、スパークリングも有るし、ビールや日本酒も有るのだヨ。ビールは冷蔵庫からセルフで出して栓を抜く。

料理も冷菜と温菜がそれぞれ10種類ほど、それにパスタが数種類あるのだネ。小体の店なので、これ位の品数が丁度良い。

さぁ、ワインはイタリア産の「レ・コステ・リトロッツォ」の赤を戴いた。
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瓶ごとラッパ飲みする男のイラストが洒落ているリトロッツォは、爽やかな口当たりでガブ飲みしちゃいそうなビオワインだネ。一杯700円は、納得の値段だナ。

このワインに合わせたのが、ズッキーニとからすみのサラダだ。
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煮浸しにした?のかナのズッキーニの輪切りに擦り下ろしたからすみがたっぷりとかかっている。おぉ、こりゃからすみだけを指につけて舐めてもワインがススむススむ。

お次は王様しいたけの熟れクリームソテーが運ばれてきた。
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これは、その名の通りキングサイズの椎茸だが、香りも際立っている。堤シェフが厨房でソテーしている場からも、豊かな香りが漂ってくるものネ。その香りだけで、ワインがクィクィとススんでしまうヨ。二杯目のワインはシチリア・パレルモで造られた「アレッサンドロ・ヴィオラ・ノート・ディ・ロッソ」だ。
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無添加・無農薬の自然派ワインは、栗の樽で熟成しており、何とも言えない深い味わいを醸し出している。こちらは一杯1,000円だが、迷わずお代わりしたくなる味だ。

豚ロースの塊を丸焼きにしたアリスタが焼けていると聞いた。「アリスタ」とはギリシャ語で〝最高のもの〟という意味。トスカーナ地方に伝わるおもてなしの伝統料理なのだネ。

シェフ自慢の一品は、売り切れ御免のスペシャリテなので、来訪したら真っ先に残っているかどうかを聞いておくと良いかもしれない。

ウヒョッ!こりゃ凄いネ!
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ローズマリーやセージの香りを纏った豚ロースは、脂身の部分も最高に美味しい。粒マスタードを乗せて口へと運べば、誰もが頬を緩ませる筈だナ。

白ワインと肉汁が極上のソースとなり、白いんげん豆に旨みが染み込んでいる。あぁ、幸せなひと時だ。

此処は午後7時から、深夜3時まで営業しているのだヨ。
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酒朋の森さんも毎晩のように武蔵小山で飲んだ帰り、夜更けの「あつあつ リ・カーリカ」に立ち寄っていると聞いた。店のスタッフもタフだが、森さんもタフだよネ。僕が訪れた日の前日が、堤シェフの誕生日だったらしい。オーバーオール姿が似合っているシェフは、手を休める暇もない。オープンキッチンは片時も気を抜けないけれど、それ以上にお客さんとのコミュニケーションが深まるって訳だ。それって、料理以上に大事な財産になるものネ。
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さて、次々とひっきりなしにお客さんが店を訪れる。外で待っている方々も見受けられるし、此処は立ち飲み酒場だ。長っ尻はイケナイね。ご馳走様でした!此処は本当に噂に違わず素晴らしい店だったナ。また、近いうちにお邪魔します。これからは、もう少し億劫がらずに新しい店にも顔を出すようにしなくちゃナ!

と、再び武蔵小山を目指して歩いたのでアール。
by cafegent | 2017-07-05 15:59 | 食べる