東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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東十条『埼玉屋』にて、「パリ・テキサス」が浮かんだのだ。

毎朝、珈琲を飲んで頭をシャキッとさせている。朝目が覚めるとペーパードリップで落としながら眠気をさますのだが、珈琲を落としている時間がとても心地良くて好きなのである。家でまず飲むのだが、歩いてオフィスに行く途中で、また飲みたくなるのだ。
ちょっと前まではスタバかタリーズに寄っていたが、最近は目黒駅近くにある『谷中珈琲店』の一杯150円の深煎りの珈琲を飲んでいる。
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いつも夜中に帰宅しているので、大体この珈琲タイムに前日の夕刊に目を通している。今、朝日の夕刊に連載している萩原浩の小説「愛しの座敷わらし」が面白い。これとしりあがり寿の「地球防衛家のヒトビト」の為だけに夕刊を取っているようなものだ。家から目黒駅まで15分、目黒駅からオフィスまで10分。この途中の小休止があるだけで、楽しくオフィスに歩いていけるのが嬉しい限りだ。
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そしてオフィスに着くと、またもや珈琲を入れるのだが、こっちはラクチンのネスプレッソにしている。 

日が暮れて、恵比寿から埼京線に乗って赤羽まで。途中から降り出した雨が本降りになっていたため十条駅で下車するのを止め、赤羽から京浜東北線で東十条駅に行く事にした。
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前回も思ったのだが、東十条の駅を出るとすぐ緩やかな坂道になり、左手に電車の操車場が見える。それがどことなくパリなのだ。北駅とかを彷彿させる光景と坂道は夜の雨で余計にそんな雰囲気にしてくれた。
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坂道を下り「たての百貨店」を過ぎて右に曲がると、この日の目的である『埼玉屋』が見えて来るのだ。
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いつもは4時の開店と同時に満席になってしまう程だが、雨のせいかテーブル席が運良く空いていた。ジョッキの生ホッピーを頼み、しばし待つ事にする。どの店もそうだが、その店独特の流儀やシステムがあって、それさえ判っていれば、安心して酒に酔い、美味いものにありつけるである。

大の大人が大人しくツツマシヤカに待っていると、大将が「ちょっと待っててね、これ食べてて。」って云って、「アブラのタレ」を持ってきてくれた。ここは、アブラと云っても牛のリブロースなのである。もう美味いのなんのって、のっけからシビレてしまうのだ。
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しばらくすると女将さんが「サラダ食べる?」って聞いて来るので、こっちも「うんうん」と頷くのである。ここのサラダは、クレソンと大根だ。やきとん屋でクレソン?って思うが、これも美味い。どことなくこの店は西洋の匂いを感じるのだ。
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そうこうしているうちにカウンターが空いた。大将が「こっち、おいでよ」と呼んでくれ、大将の前に座る。おぉ、ようやくショータイムの始まりだ。ここは大将の焼き場を囲むようにコの字カウンターになっている。まるでストリップ劇場のガブリ席であり、大将の串焼きパフォーマンスに酔いしれるのである。時間も遅いので、売り切れのネタも多い。こういう時は大将に「おまかせ」が一番なのだ。「シロ食べる?」「ハイ」、「バラは?」「ハイ」、と出されるままに食べる。むふふ。幸せなひとときなのである。
角の席に僕らと同世代か少し上の親爺3人がロックを語っている。リトルフィートやらクラプトンだの、昔の音楽を隣の若者君たちを肴に楽しそうに語っていた。すると、大将がぽつり「俺はやっぱビートルズかストーンズだなぁ。ポールに限るよ。」だと。さすが、年期に恐れ入った。

『埼玉屋』は昭和29年の創業とのことだが、店内に飾られているボロボロの暖簾が歴史を物語っている。しかしここのやきとんは進化し続けている。まさに「やきとんニューウェーブ」なのだ。脾臓の部分の「チレ」をタレで焼いてくれた。そこで大将が「ちょっと、そのまま食べないでね。」って奥からボールを持ってきた。なんとエスカルゴに使う「ガーリックバター」である。「これ、全体に溶かして食べみて。」ってスプーンですくって乗っけてくれたのだ。
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これまた美味い。思わず、声に出して「美味すぎるっ!!」て云うと、大将も「うんうん、そうだろう。他で出せるもの喰わしたってしょうがねーもんなぁ。」ときた。これまた、恐れ入る。
クレソンのサラダといい、エスカルゴバターのちれといい、まるでパリのビストロか!。
どの串も大将の創意工夫が本当に味に活かされていて、ただただ「美味い」の連発になってしまうのだ。そして僕の右手のバングルを見るなり、大将が「メキシコ好きか?」と聞いてきた。「今、いいもん出してやるよ。メキシコ好きならサルサだな。」と「シャモのサルサソース」を出してくれた。これまた美味い。
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生ホッピーからレモンサワーに切り替えた。ここの焼酎も凄い。ゴードー焼酎の一升瓶がビンごと凍っていてシャーベット状になった焼酎をグラスに入れるのである。当然、キンキンに冷えた炭酸を入れるので氷など入らない。生レモンを3切れギュッと絞り、ジョッキの口元に塩が盛られるのだ。これもまたまたメキシコのテキーラスタイル。大将、やるなぁ。サワーも生ホッピーも氷無しだから、薄まることが無い。なので、当然酔いも早く廻るのだ。ズシーン。

なすがままに10串程食べただろうか。最後に大将が品切れになっていた筈の「上シロ」を一串焼いてくれた。これももうシロ好きにはたまらない美味さ。こっちが美味そうに食べれば、大将も乗ってきて次に何を喰わせようかと思案する。
まるで客との勝負を楽しんでいるようだ。
ここの料理は、とても上品だし、大将の気合いが感じられる。ホント、パリのビストロなのだ。エスカルゴバターにサルサソース。そうか、ここは「パリ、テキサス」だったのね。
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一串140円は京成沿線に比べると少し高いが、西麻布や白金あたりでバカ高くて普通の串を食べるなら、絶対に『埼玉屋』に通うほうがいい。『宇ち多”』のもつ焼きともまた違う世界なので、当分は立石と東十条を行ったり来たりになるなぁ。

雨も小降りになってきたので、帰りは十条駅まで歩くことにした。篠原演芸場では、「伊達男、都若丸」の舞台がハネた後だった。
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駅の界隈にも良い酒場が点在している。よし次回は、もう少し早くに来て、『斎藤酒場』で一杯やろうかな。

駅に着いた時にはすっかり雨も止んだ。
雨上がりの路地から香ってくるスミレの匂いに春を実感したなぁ。
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by cafegent | 2007-04-13 15:29 | 食べる