東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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銀座の裏通りで、極上のワインと極上のおもてなし。

昨日は競馬好きのK君が贔屓にしているカウンター洋食の名店に連れて行ってもらい、実に美味しいワインとそれにとても合う料理を堪能することが出来た。

その店は銀座松屋横のマロニエ通りを昭和通りの方へ進み、3本目の細い路地を曲がった処に在る。そこには「まだ、この店あったのか?」と言いたくなる位、古くからのソープランドがあるのだが、目指す名店は、その向い側のビルの1階にひっそりと佇んでいた。

のっけから面白いのが、入口のところに「お酒の飲めない方、ご遠慮願います。」って書いてある。まぁ、もちろん洒落なんだろうが、オーナーのワインに対する心意気を感じてしまう。
シェフとマダムが二人で営んでいる小さなお店なので今回は店名を出さないが、まぁ「えぇやん」とご勘弁願おう。(って、これじゃあ判っちまうか。)
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オープンして10数年目と伺ったのだが、ここのオーナーシェフは元々某広告代理店にてクリエイティブの仕事をしていたそうだが、ワイン好きが高じて料理の世界に転じて、奥様と二人でこの店を開いたそうだ。

自分の手が届く範囲でしか最高のおもてなしが出来ない、と云う訳でカウンター12席のみの小さなお店なのだ。前に東十条の『埼玉屋』のかぶりつきのカウンター席の事を書いたが、正にここもシェフの腕を振るうパフォーマンスを楽しむ事が極上の贅沢なのである。寿司屋のカウンターの如く、目の前の食材ケースの中から新鮮な魚介や肉を取り出して、見事な料理に仕上げて行く。シェフがフライパンを振っている姿に、次の料理が待ち遠しくなるのだ。
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さて、最初はシャンパンで「カニサラダ」を戴いた。これが実に美味い。カニの香りが口の中一杯に広がり、それを辛口の泡酒でサッと流す。

次にマダムが運んでくれたのは「ポテトサラダ」だった。ジャガ芋の味をしっかり残しながら、極上のハムまでふんだんに使ったポテサラは、居酒屋のポテサラとは別な料理だった。カニサラダにポテサラ、こんなところが、肩肘張ったフランス料理店では真似の出来無いカウンター洋食の名店たる所以だろう。

シャンパンに続き、シェフのオススメの白ワインを貰うことにした。
ブルゴーニュを代表する名ドメーヌ、メゾン・ルロワの「ムルソー」を選んでもらったのだが、辛口でムルソーらしい果実味を感じることが出来た。そう云えば、ワインが大好きと云う店主らしくカウンターの前の処に穴がくり抜いてあり、ワインクーラーが各席の前に備え付けてあるのだ。連れの一人が「しゃぶしゃぶ鍋かと思った。」と云う位、妙に馴染んでいたが、昔新橋烏森口にあった一人すき焼きの「かめちゃぼ」を思い出して思わず笑ってしまった。

このワインに合うだろう、とシェフが創ってくれたのが「ホワイトアスパラのバターソテー」だ。コクのあるバターソースにほのかに香るガーリックが隠し味となって、キリリと冷えたムルソーにとてもマッチしていた。

その間にもシェフは叩いた牛生肉を仕込んでいる。さて、何だろうと思いきや、シェフがカウンター越しにお皿を置いてくれた。
小さな薄切りバゲットの上にこんもりと盛られていたのは、先程の牛生肉だ。
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マダムが優しい笑顔で「ウチのターターステーキですよ。」って教えてくれた。
そう、「タルタル」じゃなくて「ターターステーキ」なのである。しっかりと味付けされたお肉は岩手の前沢牛との事で、これも絶品でした。

今度はシェフがヴォルネイの1999年を勧めてくれたので、開けてもらった。
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ここしばらく「ニュイ・サン・ジョルジュ」にハマっていた友人もこのヴォルネイは気に入ってくれたみたいだ。
そして、この赤に合わせてくれたのが、「フォアグラの春キャベツ巻き」である。
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濃厚なフォアグラがたっぷり入った春キャベツを薄味で煮込んであるのだが、流石ワインに合う味を心得ている。感心しっぱなしで、一人「ウンウン」と頷くばかりだった。

さて、セラーに行って次の赤を探そう。
メゾン・ルロワのワインを中心に様々な逸品ワインが種類豊富に取り揃えられていて、何を飲もうかしばしセラーの中で悩んでしまうのだ。そして、その一本一本に値段も添えられているから、安心して選ぶことも出来る。セラーの中には日本酒「久保田」も在ったし、常連K君は、ワインなど目もくれずひたすら「マッカラン」の18年を手酌で飲んでいる。こんな気楽さもこの店の良い処だなぁ。
そうそう、ここのトイレも必見である。パソコンも在れば、食に関する蔵書も凄いのだ。まるでプライベート・ライブラリーなのだ。

次にシェフが創ってくれたのは、「筍とウニと小松菜のソテー」だ。筍の香ばしい香りと濃厚なウニがからまって、何とも云えぬ美味しさで、喜ばしてくれたのだ。

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セラーの中の数あるワインからようやくルロアの「シャサーニュ・モンラッシェ」1990年を選んでみた。こんな良いワインを12,000円で出しているのだから凄い事だ。えっ待てよ、確か同じ90年のを13,000円で買ったことがあった筈だ。おかしくない?これじゃ、まったく儲け無しだろうなぁ、と人ごとながらに心配してしまいたくなる程だ。香りといい、色といい見事なワインを飲ませてもらい全くもって幸せモンだなぁ、僕は。
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そして、本日のメイン料理「ブイヤベース」の登場だ。先程、伊勢エビや鯛を豪快にさばいて煮込んでいたのがこれだったのか。「どうだっ!!」とばかりに皿からはみ出しそうなくらい豪快なブイヤベースは、モンサンミッシェルが一望出来る漁港のレストランで食べた味を思い出さずにはいられなかった。もう、美味し過ぎて唸ってしまった。
ぐるるるぅるぅー!!って、犬か俺は!

これでもか、って程いろんな料理を次から次と創ってもらい、ワインも美味しかったし大満足な宴だった。
そして、かなり満腹になったのだが、誰かから牛肉の話になりどこの牛が良いだの話に華が咲いてきたら、おもむろにシェフが冷蔵ケースの中からデッカい前沢牛の塊を取り出してきた。こんなモン目の前に出されちゃあ、満腹なんて何のその。「食べてみる?」のひと声に全員一斉に「はい!!」だって。
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じっくりと焼かれていく肉を眺めながら飲むモンラッシェが美味い。
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さて、当然のことながらシンプルに焼かれた前沢牛は山葵醤油で戴いた。これまた、口の中でとろけていきもう言う事無しであった。
でもって、ここでトドメを刺してくれたのはシェフでも無く、一緒に食べていた連れの女の子であった。男連中が皆満腹状態なのに、牛肉を前にして、「白いごはん、ありますかーっ」と来たもんだ。
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いやはや、若い女の胃袋には感心してしまう、と言うか驚きだ。軽く平らげていたもんなぁ。

そして、デザートは別腹と云うことで、〆にメロンを半分に割ってコニャックを注いで食べさせてもらった。いや、これも凄い!!
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肉も果物も腐りかけが一番美味いと云うが、このメロンもかなり熟されていて濃厚な味わいだった。
あぁ、この酒も強いから酔ってしまうのだが、後を引く美味さだなぁ。

あっと云う間に2時間半が過ぎ、シェフとマダムの丁寧なおもてなしに敬服しっぱなしだった。こういうお店を知る事が出来ただけで嬉しい限りだ。K君に感謝!!
何か良い事があった時とか、大切な記念日とかにまた来させてもらおうと決めたのだ。

シェフも競馬が好きみたいだが、万馬券でも当たったらここで祝うとしようかな。
ねぇK君、万馬券当ててご馳走しておくれ。って、またも人頼りなのであった。

雨も上がったみたいだし、さて、次飲みに行きますか。

(あぁ、優秀なデジカメを洗濯して壊してしまったから、手ブレ防止の無い古いのに戻ってしまった。ひとつとして、ピンがあっていないのだ。トホホ。)
by cafegent | 2007-05-11 18:32 | 食べる