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by cafegent
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『ミルコのひかり』を観る。久しぶりに出会えたイタリア映画の秀作だ。素晴らしい!

シネカノンの宣伝プロデューサーをしている松井晶子さんからご案内を頂いていたので、映画『ミルコのひかり』の試写会に行って来た。

6年程前に「イタリア映画祭」で観た『ペッピーノの百歩』と云う映画があった。
マフィアが身近に住み、彼らの世話係で生計を立てていた家族と共に育ったペッピーノが、社会に出て反マフィアとして活動し、短い生涯を閉じるまでのドラマであった。社会性の強い内容ながら、当時のイタリアを生き生きと描いていて、僕の記憶に長く残っている作品だ。

その映画の脚本を手掛けたモニカ・ザペッリが本作品でも監督と共に共同脚本を担当している映画が『ミルコのひかり』だ。
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この映画の主人公は、サウンド・デザイナーとして今現在イタリア映画界で活躍しているミルコ・メンカッチをモデルにしている。

トスカーナ地方でのびのびと暮らしていたミルコが8歳の時に家で起きた不慮の事故によって目を患い、当時の法律の為にジェノヴァの全寮制盲学校に転入させられる。
そこで見つけた1台のテープレコーダーによって、目が見えないながらも、『音』の魅力を発見し、その『音』を通じて盲学校の仲間たちと少しずつ距離を縮めて成長して行く姿を見事な映像と音で描いた素晴らしい作品だ。

視力を失った事で閉ざしていた心を『音の世界』を知る事で克服していき、古い学校の確執により葬られようとするミルコの類い稀な才能を彼の理解者である牧師や寮母の娘フランチェスカ、そしてミルコが目指そうとする盲目の青年マルコたちによって支えられ、成長していく姿を実に素晴らしい物語作品として仕上がっている。

数十年も「クリエイティヴ」を生業にしていると、無邪気に創造の世界で楽しく遊んでいた事など遠い昔の事かと忘れがちだが、『ミルコのひかり』を見終わって、ふと思ってしまった。
仕事など抜きにして、常日頃から目にし、耳にする事柄からイメージを膨らませる事をし続けていないと、結局「仕事」として納得の行く「クリエイティヴ」など提案出来ないのかなぁ、と。

この映画でもうひとつ強い印象に残った事があった。
盲学校でのミルコの友人となるフェリーチェの役なのだ。その役どころを実際に盲目の少年シモーネ・グッリー君が演じているのだが、彼の存在がこの映画をより一層魅力的に引き立ている。そして、「身体が不自由でも自由な好きな生き方を望んで、何がイケナイのだ。」と気付く神父の願いを、観ている僕らにより強く印象付けているのがシモーネの演技だ。

実際のミルコは僕より1つ年下なのだが、この映画を観ていて、同じ時代に生まれながら日本とイタリアではこんなにも環境が違うものなのか、と思った。
でも、この事件がきっかけでその後、目が不自由でも一般の学校に通える事に法律が変わったそうだ。自由に生きたいと願う力が人々を奮い立たせ、そして古い慣習、法律までもを動かしたのだ。

脚本も良いし、映像も音も素晴らしい。ミルコが音から感じ取るイメージを紡ぎ合わせたテープを回すと、その音が映像として画面一杯に広がってくる。やり過ぎじゃないCG映像の使い方も良い。
でも、ここに登場する子供たちが実に魅力的だ。こんな素敵な映画を撮ったクリスティアーノ・ボルトーネ監督の名前は今後、要チェックしなくてはならない。

レコードをクレジット買いする様に映画もクレジット観をすると結構アタリが多いのだ。
9月上旬から渋谷シネアミューズ、等で一般公開となる。
映画『ミルコのひかり』は是非多くの人に観てもらいたいと、素直に感じた秀作だ。
「ミルコのひかり公式サイト」
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『ミルコのひかり』(2005年  イタリア映画)
監督・脚本・プロデューサー:クリスティアーノ・ボルトーネ
共同脚本:モニカ・ザペッリ、パオロ・サッサネッリ
出演:ルカ・カプリオッティ、パオロ・サッサネッリ、マルコ・コッチ、トニー・ベルトレッリ
音楽:エツィオ・ボッソ
上映時間:1時間40分
配給元:シネカノン

2006年サン・パウロ国際映画祭観客賞受賞作品
イタリア映画祭2007参加作品
by cafegent | 2007-07-23 18:20 | ひとりごと