東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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新宿末広亭の8月下席、ベテラン師匠たちが際立っていた。

「ミュージックマガジン」9月号の表紙をウチの兄貴が飾っていた。
と云ってもイラストであるが、メガネにあご髭を描けば誰が描いても似るのだ。
「渋谷系」なるジャンルの特集であったが、そこに至るまでに彼ら(渋谷系アーチストと呼ばれていた方々)が聴き込んでいたレコードを紹介していたのが懐かしくって良かった。

しかし、お互い近くに居るくせにもう1年以上も顔を合わせていないなぁ。前に会った時も確か偶然どこかの喫茶店だったような気もするし。「便りが無いのは元気な証拠」とも云うし、外で聞いたり、見たりで近況は判るし、まぁ良しとするか。
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そう云えば、もう随分前の事を思い出した。
兄貴が最初の嫁をもらった時の事だ。結婚式が代官山の小さな教会でとり行われ、久しぶりに逢う友人、知人たちが集まった。

式が終わり、次の宴までまだ暫く時間もあったので、代官山に出来て間もない『ラ・ボエム』でお茶を飲むことにした。ご存知の通り、あの店はイタリアン・カフェであるから、パスタ料理なんかがメインである。で、珈琲だって当時はまだ馴染みの薄いエスプレッソなんぞも有る。
で、こっちも気取って「エスプレッソ、ひとつ。」と注文し、暫くぶりの友人と話に華が咲き、夢中になってしゃべっている。そこへ、ホールの方がエスプレッソを運んで来た。

「よしっ」とばかりに、昔イタリアで教えて貰ったエスプレッソの飲み方をやってみることにした。
小さなカップに入った濃いエスプレッソへスプーン3杯、たっぷり目の砂糖を入れるのである。それを溶かしながらドロっと甘〜い「ライオネル・コーヒー・キャンディ」味のエスプレッソを飲むと云う訳だ。

で、友人と話をしながら白いシュガーポットの蓋を取り、スプーンで砂糖をすくっては入れ、すくっては入れと3杯程入れたのだ。別に難しい行為では無いので、会話を続けながら、片手でやって、クルクルッとスプーンを掻き回す。そのままカップを口元へ運んだ途端、ブッハ〜ッと口から吹き出してしまったのだ。

あの白いシュガーポットに入っているのは砂糖じゃなく、粉チーズだったのだ。
おいおい、こりゃ誰だって間違うだろうに、と怒りが込み上げてきたのだが、よくよく見ればエスプレッソの皿には、ちょこんと紙に包まれた角砂糖が2個載っているではないか。
あちゃちゃちゃちゃぁ、話に夢中になっていて見なかったこっちが駄目だった訳ナノネ。
そして、あれ以来、僕は「珈琲はブラック」と決めているのだ。
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日曜日の夕方、権太楼師匠の落語を聴きに行こうと新宿「末広亭」に足を運んだ。
予定では8時過ぎからの上がりとなっていたのだが、夕方5時半上がりに変わっていた。夜席開始早々の登場である。早く行って良かった良かった。何しろ、権太楼師匠が目当てであったので、行って終わっていたら悔しいかぎり。

そんな訳で、昼の部のトリを務める伯楽師匠の「火焔太鼓」から拝見したが、いいねぇ、やっぱりベテランの高座は。
古典は何度も何度もいろんな噺家さんのを演じるのを聴いて誰それのあれが良い、ってな感じになってくる。「火焔太鼓」は志ん朝が好きだが、それを越えたのも早く聴いてみたいもんだ。

夜の部は、前座に続き、二ツ目の春風亭朝也の「真田小僧」。
アコーディオン漫談の近藤志げる師匠、
そして、まってましたの柳家権太楼師匠の登場だ。それにしても、ここの所の師匠は大忙しなんだろうねぇ、サっと来てドっと演じて、ピューッと去っていった。
今度から、サドピの権太楼師匠って呼ぼうかしら。

で、この日かけたのは「黄金の大黒」と云う、これもお馴染みの噺。

米俵を背負った金の大黒様の像を大家の子供が見つけ、こりゃ目出たいと大家さん宅に長屋連を集めて祝宴をするって噺なのだが、
権太楼師匠は「大家さんの飼い猫」でサゲるって云う、実に痛快な一席に仕立てていた。

大抵のオチは、大家の家で長屋連中が目出たい宴で騒いでいると、大黒様がこっそりと部屋を出て行こうとする。驚いた大家さん「すいません、すっかりどんちゃん騒ぎでうるさ過ぎましたか。」、すると金の大黒様「酒盛りがあんまり楽しい様子なんで、仲間に入れてもらいたい。で、この米俵売ってこようかと。」と云う噺である。

これを権太楼師匠は、うひゃーっってな感じのオチで演じてくれた。
これは、ちょうど1年前の末広亭にて馬桜師匠が演じた「黄金の大黒」と同じオチなのだが、舞台の上で目一杯繰り広げる師匠のテンポよい身振りとキャラクターの個性の妙に最初から最後まで笑いっぱなしだった。

春風亭一之輔は「鈴ケ森」の一席。これもいろんな方が演じているが、ドジで間抜けな泥棒の話だ。
そして、これまた楽しみにしていた春風亭正朝師匠の登場だ。この日は、「悋気(りんき)の火の玉」をかけた。悋気とはいわゆる女のジェラシーである。古女房の幽霊と浮気相手の芸者の幽霊が火の玉になっても喧嘩しあってる、と云う話だ。

三遊亭吉窓師匠は「動物園」、これも先日鈴本夏祭りにて我太楼師匠が掛けたが、そちらの方が笑えたかな。
落語界の朝青龍、三遊亭歌武蔵師匠はお馴染み「たらちね」。あの風体で上品な言葉使いの女房を演じるのが面白かった。この方、相撲取りから噺家になって、噺家になってからも自衛隊に入隊したりと変わった経歴の持ち主である。

続く、春風亭柳朝師匠は「後生うなぎ」、柳家小袁治師匠は「紀州」の天下取りの一席。

そして、トリを飾った春風亭一朝師匠は「黄金餅」で高座に上がった。ケチの西念が餅の中にお金を入れて、腹ん中に隠していたら、喉を詰まらせて死んじまった。
それを覗き見していた男が供養をすると云って、急いで西念を火葬してしまい、金を上手いこと手中に収め、餅屋を開いたと云う古典落語だ。実際にゃ有り得ない話だが火葬場から金をくすねるシーンはなんとも痛快だった。
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この日も大いに笑えた寄席だった。
流石にそれぞれの師匠の味が出ていて、どれも実に楽しく観ることが出来た。
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by cafegent | 2007-08-28 18:35 | ひとりごと