東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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吉祥寺『ボア』が閉店。この頃思い出の店が増えるばかりだ。

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1970年代の終わり、若者の間では「サーフィン」が大流行していた。当時、まだ学生だった僕は10万円近くもするサーフボードなどとてもじゃないが高価で手が出なかった。あの頃は、男はジンスラ、女はエンジェルフライト履いて六本木のディスコに通っていた時代だ。
アディダスの「TABACCO」買う為バイトして、ポパイを欠かさず読み、西海岸に憧れたのは僕だって他のサーファー連中と一緒だった。

そして僕は波乗りでは無く、2000円前後とかなり安価な「フリスビー」を手に入れた。たちまちこのプラスチック製の円盤に夢中になり、駒澤公園や代々木公園などでチームを組んで、風に舞うフリスビーの虜になっていた。全国に様々なチームが出来て大会で競い合ったり、「日立サウンドブレイク」と云う音楽と映像のTV番組にもフリスビーに興じる姿でチーム皆で登場したりしていた。その姿、あの頃のAORサウンドに何と似合っていたコトか。

’78年に東急ハンズ渋谷店が開店して、そこで初めて「フリスビー・ディスク」を買ったのだ。しかし、ハマればハマる程、追求するタチだから、ハンズの品揃えでは到底満足できなかった。吉祥寺の『エアエース』と云う店が唯一のフリスビー専門店だったので、随分と足繁く通ったものだった。そこで、いろんな種目用のディスクを手に入れては、ゴキゲンで駅に戻り、駅近くの喫茶店でケーキを食べていたものだった。
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そのケーキが美味い喫茶店が『ボア』であり、僕はここの「サバラン」に目がなかった。先日、新聞の記事で、9月一杯で『ボア』が閉店すると知った。1947年創業だから、50年の歴史を誇る老舗である。
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店内には大きな東郷青児画伯の絵が飾られており、店名も画伯自身が、「森」を意味するフランス語ボアと命名したと云う。
社会に出て、フリスビーとも縁遠くなったが、吉祥寺に来ると『ボア』に寄ったものだ。本屋で買った雑誌をここで開き、珈琲とサバランで楽しい時間を過ごすのが好きだった。
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店の入口で販売していたケーキ類も数年前にやめてしまったが、珈琲の味は今も変わらない。
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最近は、390円の「玉葱たっぷりベーコントースト」がお気に入り。
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週末などはこれで小腹を満たし、昼過ぎには「いせや」に向かったものだった。その「いせや」ももうすぐ真新しいビルになろうとしている。
時代は移り、何だか淋しい気もするが、それも仕方の無い事だ。秋分の日の朝、井の頭線に乗って吉祥寺まで出掛けた。『ボア』の扉を開くと、いつもと変わらないホっとする雰囲気が待っていてくれた。
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珈琲の香りが立ちこめる中、店に置かれていたノートに昔の思い出を書き残してみた。
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時折、顔を覗かせるオーナーの星野さんに話を伺うと、「新潟の震災を見たら、怖くなっちゃってねぇ。古い建物だから地震で壊れたりしたら嫌だからさ。」と笑って語ってくれたが、本当は誰よりも一番この店を閉めたくないんじゃなかろうか。話をしていて、そんな気持ちが伝わってくると、なんだか切なくなった。「もう数日ですね。」と云うと、閉店を惜しむお客さんがひっきりなしに来るので、もう1、2週程続けてみると言っていた。

あの頃は、東郷青児の絵などまるで興味が無く、フリスビーに夢中になっていた訳だが、今頃になって漸く画伯の絵画に惹かれてくるようになった。これ、すなわち「歳を重ねてこそ解る」と云う殊か。

『ボア』を出て、井の頭公園まで歩く。
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公園手前の『いせや』は昼過ぎだと云うのに賑わいを見せていた。特製焼売をアテに大瓶「赤星」を酌む。総本店が改装中で仮店舗営業になっているが、公園前店はいつも通りだ。風が気持ち良い今時分の季節は、奥の窓側席が良い。井の頭公園の雑木林を望み、真っ昼間から酔うのが実に心地良い。
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220円の焼酎に梅エキスを垂らす。この梅酎を2杯もやれば、ドカンと夢見心地。
公園のベンチで昼寝して、酔いを覚まし駅に向かう。
駅前のバー『セザンヌ』はまだ健在だ。ここも確か50年以上続いていいるんじゃないだろうか。自分より年上の老舗は、いつまで経っても頭が上がらないモノなのだ。b0019140_1254266.jpgb0019140_1255443.jpg
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by cafegent | 2007-09-26 12:10 | ひとりごと