藤田喬平の「ドリームボックス」
2007年 10月 01日
「フジタガラス」と称して世界にその名が知られるガラス工芸界の巨匠だが、日本橋高島屋にて大々的な回顧展が催されていた。
1964年、流動ガラスと云う独自の作風を創り出し作家としての地位を確立。その後、琳派の作品に多大な影響を受け、自らガラスを用いて創り出した「飾筥」(かざりばこ)は藤田喬平の解釈による琳派へのオマージュ作品となる。
北欧での展覧会場で、或る観客から「フジタはこの箱に何をいれるのですか?」との質問に「ここには、あなたの夢を入れなさい。」と答えたそうだ。それ以来、藤田喬平の飾筥は、「フジタのドリームボックス」と呼ばれるようになった。
70年代に入り、藤田は伊、ヴェネチアのムラノ島にて、ヴェネチアングラスを学び、ここでも藤田の世界を切り開いている。イタリア伝統の長い歴史から生まれた色彩美豊かなヴェネチアングラスの技法を使いながらも独自の色彩と造形を生み出した。
多彩な模様の「カンナ棒」と呼ばれるレース編みの様な柄のガラス棒を幾つも組み合わせて創るのがヴェネチアングラスの特長だが、藤田は和の色彩も取り入れながら、多くの作品を残している。このカンナ様式で創る茶道具なども素晴らしく、暫くウットリと眺めてしまった。
本展覧会では、初期の代表作「虹彩」から晩年最後の年の作品まで約150点が展示され、藤田喬平の軌跡を辿る事が出来た。
世界のフジタガラスとなった「飾筥」だけでも50点余りが集められており、それはもう見応え十分だった。中でも金箔を黒の中に投じた飾筥「夜桜」は、圧巻であり、光琳が今これを観たら何と言うのか聞いてみたくなった。
見応え十分の展覧会であったが、残念ながら東京展は今日で終了となってしまったのだ。来週から大阪、年明けは2月から名古屋、石川県と巡回するそうだ。機会があれば是非オススメしたい回顧展だ。
小さな作品ならば、丁度今銀座の『ギャラリー 桜の木』にて観る事が出来るので、そちらへ行く事もオススメする。