東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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蒲田にとんでもなく良い仕事をする寿司屋を知った。

美味い飯は美味い店に聞くのが一番である。
そんな訳で、権ノ助ハイボールで酌んでいた時のこと。大井町の名料理店「廣田」のエンドさんとお会いしたので、以前から名前だけ聞いていた蒲田のおすし屋さんの事を尋ねてみた。すると、どうもエンドさんその日もそこで寿司を食べていたらしい。

そして、エンドさん曰く「久しぶりに自信を持って薦められる美味いすし屋だよ」との事だった。小さくて、立ち食いで、いつも混んでいてエンドさんも外で並ぶと言っていたが、一品一品きっちりと丁寧な仕事をした握りは、待ってでも行きたくなる程の素晴らしい店との事だ。

そこまで聞いてしまったら、もう行きたくなるに決まっているのだ。
それからの数日は居ても立っても居られなくなり、仕事が終わると品川経由で蒲田まで繰り出す事にした。
駅前には幾つかのアーケード街が在るが、小さな方のアーケードを真っすぐ抜けると右手に小さな白い暖簾が揺れていた。目指す「くま寿司」は案の定一杯であった。十時近かったが、4組の客が居たので暫く外で待つ事にした。真向かいの鰻料理屋「寿々喜」(すずき)は最後の客が引けたのか暖簾をしまっていた処だった。ここも良い佇まいの鰻屋だ。焼き場の人の年期を感じ、良い店だと直感したので今度食べに来よう。
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10分位待った所でカップル客が外に出て来たので、中に入れた。
それでも、まだ二人客二組、一人客二人居る。この店はご主人が一人だけで切り盛りしているので、当然ながらいっぺんに二つの事は出来ないのである。であるからして、店に入っても暫く待たなくてはならない。
ここは「くま寿司」と云うくらいだから、先行イメージで随分と強面で頑固な職人を想像していた。スキンヘッドで、体型は確かにクマのように大きい。手なんか熊手のようにふっくらとしている。勝手が判らない僕は「郷に入ったら郷に従え」で、大人しく様子を伺うことにした。飲み物は自分で勝手に取るのだ、と教わった。入口脇の冷蔵庫からビールを取り出し栓を抜く。

ご主人、グラスを出しながら「すいません、もう少し待っててくださいな。」と語る。ところが話をすれば、実に優しさが全面で出て来る様な感じだった。ここで漸く僕の中の空気が和み始めた。ビールが喉を潤し、「はいはい、好きなだけ待ちましょう。」と云う気持ちになった。
先客の寿司をひとまず握り終わると、「おまたせしました」と寿司ゲタが前に置かれる。先ずは平目の刺身から。口の中でキュっとした歯ごたえが待ち遠しかった空腹の時間を一気に吹き飛ばしてくれた。次にたっぷりとタレに漬け込んだ煮蛸を切ってくれた。しっとりした甘さといい蛸の柔らかさといい、もうこの時点で「くま寿司」の虜になりそうだ。

ここで、権ノ助ハイボールの馴染み客のプリンセス天功ことみやこさんがやってきた。最初、お二人かと思っていたら、なんと総勢六人で登場。彼女はここのお馴染みさんでウィスキーのボトルが入っていた。7、8人も入れば満杯の店内が一気に賑やかになった。こんなにいっぺんに客が来て、ご主人一人で大丈夫なのだろうか。と、ちょっとは心配したモノのこっちはこれから握りの登場である。ぐふふ。

ビールを一本に抑え、日本酒にする。冷蔵庫の中には全国津々浦々の地酒のカップ酒が並んでいる。では、京都の酒呑童子から。
ここから握ってもらう事にした。熊の様な大きな手で握るのは、意に反してご飯も少なめの握りだ。軽く〆た鯖で始まった。次に良い色に茹で上がった車海老の殻を頭から剥く。おもむろに何か出してきたので、それはと聞けば、芝えびのおぼろであった。車海老の握りの中に芝えびのおぼろを入れるとは、同じ蒲田にある老舗の名店「四代目 蒲田初音」の握りと同じだ。なる程、どんどんと主人の職人気質が伝わってきた。続いて間八だ。これも今が一番旬だな。小肌は余りキツくなく〆ていて美味い。
この辺りからどんどんと仕事をした鮨が握られてくる。鮪は国内モノだろうか。醤油漬けで出てきたが本当に美味しい握りだ。次もまた小さな器の中に鱚を潜らせている。これは酢橘か。鱚をこんなにも美味しく喰わせてくれたのは、ここが初めてかもしれない。鱚と云えば天婦羅だからなぁ。それにしても、ここは一体全体何なのだ。硝子サッシ戸で風情などまるで無い小さな立ち食い寿司屋の筈なのに、今度は目黒の名店「寿司いずみ」顔負けの握りを出してきた。

酒を石川県の萬歳楽にする。ふっくらした穴子のつめも良い味だ。この甘さが日本酒と合う。
今度は長崎のバフンうに。今の時期は北海道よりも美味いらしい。平目のえんがわは肉厚で最高の味だ。最後は山葵の効いた干瓢巻きと鉄火巻きで腹一杯である。

エンドさんがあれだけ薦めてくれたのが理解できた。またすぐにでも来たくなる美味い寿司だ。ご主人、翌日から月末まで旅に出るとの事で店を休むと聞いた。おぉ、なんとタイミングの良い訪問だったのだ。
来月がまた楽しみである。
by cafegent | 2007-10-27 12:44 | 食べる