東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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ミシュランガイドを閉じて、目黒で至福の鮨を食べる。

この日は朝からテレビの向うで、ミシュランで☆三つ獲得した銀座、新橋界隈の鮨の名店の話題を取り上げていたせいもあり、無性に寿司が食べたくなった。
そして昼過ぎを見計らって、目黒の寿司店に電話を入れてみた。

今日の今日で席が空いているか不安だったが、暫くして「大丈夫です。」との返事を貰った。嬉しい、前回から1ヶ月だから何を出してくれるのか楽しみだ。

午後になり、小石川後楽園から神楽坂界隈を散策した。
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この秋、二度目のシジュウカラを見つける。

「ペコちゃん焼き」が評判の不二家神楽坂店も大行列が出来ており、あんな賞味期限改ざん事件があった事など露と消えた感じだ。まぁ、あれだけ後に同様の事件が続けば忘れてしまうか。
この「ペコちゃん焼き」は目の部分を二つピっと取っ払い穴を開けておく。そしてホッペの部分を思いっきり押すと、目からニュル〜ッと餡が飛び出るのだ。若い頃、これがやりたくて随分と買った事があったなぁ。我ながら実に悪趣味でアル。

行列の不二家は素通りし、お隣「紀の善」で粟ぜんざいで一服。寒い季節の「粟ぜんざい」は、神田なら「竹むら」、浅草ならば「梅園」か「梅むら」が好みである。で、神楽坂に寄ったならば、ここ「紀の善」だね。

日が暮れ出したので、目黒に移動しのんびりと「寿司いずみ」へと向かうことにした。
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6時半にお邪魔すると、既に一家族が鮨を楽しんでいた。4歳の男の子が居たが、こんなに小さな頃から美味い魚の味を知る事が出来るのだから、なんて幸せな子供なのだろう。聞けば、隣のお母さんもこの子と同じ位の時から、ここに連れてきてもらっていたとの事だった。親子代々にわたって、目黒の鮨を味わっていたとは、脱帽だ。

先ずはビールを戴いて、座付けに伊豆のサザエと鳴門のわかめ寄せ固めが出る。
このサザエは、海老漁の網にかかっただそうだ。今の時期、サザエ漁は出来ないそうだ。

ハゼの頭の素揚げ。完璧に血抜きしたハゼを天日干ししてある。
能登の富来で揚がった10キロもある鰤(ぶり)を和芥子で戴く。
能登鰤も今年最後か。まずは、鰤の背から。
続いて、背びれの真下の部位、最後は脇腹だ。おろし玉葱と和芥子を乗せて頂く。全て、脂の乗り方から、味の違いを楽しめる。

今度は同じ薬味で能登鯖を戴く。
いい感じに〆てあって一気に三枚ぺろりといってしまう。

「鰤の腸のづめ焼き」が出て来た。これも美味い。
まるでもつ焼と云う味と食感だ。

金ちゃんから「寿司屋の命、干瓢です。」と大将と同じ口ぶりでかんぴょうが出る。近江の干瓢はガリ代わりである。
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「穴子の肝臓の塩焼き」。これもお馴染みの一品でだが、これは酒に合うぞ。

「鰤の肝臓のお茶炊き」だ。番茶と玉露でじっくりと炊いたものだ。
お茶の甘味が美味しい汁となり、皿まで指ですくって舐めてしまう程の旨さだ。
ここで冷酒を戴く。最初は越後の銘酒「越の松露」だ。

ここで親方の新作料理が出る。
本まぐろのコロッケだ。中に角切りにした信州林檎と巨峰が隠れている。こうやって食べると鮪の身はまるで肉のようだ。

赤貝の肝。うぅ、美味い。

今度は親方の自信作登場だ。天然牡蠣の蒸し物である。
小粒の天然生牡蛎を一椀になんと15、6個使っていると云う。牡蠣をすり鉢で摺り、それを裏ごしする。その上に白味噌を溶いてかけ、蒸した天然牡蠣の味噌プリンだな、こりゃ。上に一つ牡蠣のにんにく味噌焼が乗っているが、親方曰く「牡蠣が載っていないと牡蠣料理だって判んないから、こうしてるけど下の蒸し物が主役だからね。」、もう文句なしに最高の味である。

酒が旨くなって来たので「痛風まっしぐら」と行くとしよう。
秋田の「奥清水」で、三年物の鰹の酒盗と二年物の鮪の酒盗の登場。

二年物の子うるか、五年物の苦うるか、うるかはこの他、かわりうるか、みそを入れたみうるかが有ると云う。

静岡の酒「杉錦」。上品な吟醸酒だ。うるかがススむ。
たくあんで箸休め

ここから握りが始まる。
淡路産細魚(さより)の酢橘洗い。
握りにはさっぱりとした吟醸酒が良いと、群馬の「水芭蕉」に。

この時、隣のお客さんに凄い一品が出た。
親方もどうだ美味そうだろう、と云う満面の笑みを浮かべ「何日も前に一番最初に予約をくれたからねぇ。それにもう一匹しか残ってないからさぁ」と「落ち子持ち鮎の茶炊きびたし」を用意したのだ。
もう見るからに美味そうな鮎である。ところが、二人だけで食べちゃもったいないと、何とこちらにもお裾分けして戴いたのだ。
四万十川の鮎をたっぷりのお茶に浸して鮎にふくませる。鮎の上に鮮やかな新緑色の海苔がかかっていたのだが、これは四万十の糸海苔だと云う。鮎はこれを食べて育つそうだ。
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子持ち鮎はほんのりと茶の香りたしていた。

ここで親方が、鮎にかかっていた糸海苔を出してくれた。
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四万十で採れた天然の川のりだそうだ。これも酒に合った。
福井、南部酒造の「花垣」も糸海苔ですぐに呑めてしまう。たまらんね。


先程の細魚の皮を炙ってくれた。こう云う一品が酒に合うのだ。
平目の昆布じめ。平目の歯ごたえにねっとりとした昆布の粘りが口の中で絡むのだ。昆布の香りも鼻から抜けて行く。

さて、ここから寿司いずみ劇場だ。
コハダ三番勝負。
親方は、今の時期のコハダが一番旨いと云う。
まずは酒粕から造る12年熟成の赤酢から。
続いて米の酒酢をつかった白酢。
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そしてゆず酢の何とも云えず上品な香りがコハダを引き立てる。。

次に江戸の頃の魚の保存を再現した白魚の握りだ。
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「さかしお蒸し」と云う、白魚を塩だけで五分蒸し上げたものに芝えびのおぼろを入れて握る。
ここで大将の江戸ウンチク。浅草三社祭とは、もともと隅田川の白魚の祭りとの事。二人の白魚漁師と一人の和尚を称えた祭りだそうだ。

千葉は富津で獲れた江戸前青柳。食感もいいし、味が良い。
僕はこんなに美味しい青柳を他で食べたことがない。

握りがどんどんと続くのだ。
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カワハギ肝載せから。小さいながら身がプリッと締まった皮剥ぎは旨いのなんの。
そして、赤貝。
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それにしても、先程の青柳といい、この赤貝といい、味良し、香り良し、食感良しと文句無しに美味しい。

焼き白子。
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この時期の真白子は生より焼いた方が旨いそうだ。
酒は新潟越後の吟醸「越の魂」、この酒は随分とスッキリした口あたりだ。

此処でまた箸休め。お馴染み「さくらんぼのしば漬け」だ。

穴子の三年魚の釜揚げ。
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ツメが絶妙な味付けで、ふっくらした穴子が口の中で溶けてしまうのだ。ここでは、穴子を焼いたりしない。

利尻の蝦夷アワビの肝載せ。
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利尻昆布を沢山食べた鮑は海の天然の旨味をたっぷりと含み、これが本当の鮑の味なのかと、改めさせてくれた。鮑の肝も贅沢な味だった。
平貝の塩かぼすを「磯部焼き」で。酒がクィクィと進んでしまうなぁ。

「本鮪の和芥子漬け」。
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いわゆる「マグロのヅケ」だが、これまた和芥子の味が滲みて美味い。

さぁ、煮蛤(はまぐり)の登場。親方の寿司は蛤、穴子、アワビ、煮イカと全てツメを変えている。また、ツメも砂糖を一切使っていないのに、仄かな甘味が素材の持つ旨さを引き出してくれるのだ。酒と味醂と三十年継ぎ足してきたツメはどうやったって真似の出来ない旨味を秘めていた。

酒は「新政 吟」。
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米どころ秋田ならではの吟醸酒には奥羽山脈伏流水の軟水を使用しているそうだ。親方は寿司に合う日本酒を良く知っているなぁ。
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久しぶりに親方が付け台に入り、握る姿を拝見した。まだまだリハビリ中だと云うが来年中には元気に復活して欲しいと願うばかりである。

北寄貝を塩で戴く。香り良し、味良し。
時知らず(鮭)の筋子。
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あぁ、またも痛風まっしぐらな味わいだ。

津軽本鮪の中落ち。
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素晴らしい味だ。脂が多過ぎず、鮪の旨味を堪能出来た。

ここの処、必ず最後はこれを食べないと帰れない、「車海老の酢おぼろ漬け」だ。
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冷蔵庫など無い江戸時代の魚の保存法のひとつが、卵を裏ごししたおぼろの中に漬ける方法だったそうだ。
卵が高価だった時代には粟やひえを代用して漬けていたそうだが、この漬け床の卵をシャリにした握りはシビレる程の旨さである。
しかし、ここ「寿司いずみ」は親方の魚に対する愛情と情熱が全ての料理から伝わってくる。そして、当然ながらその総てが美味しい。食べているこちらの方が、表現に困るほどである。

この日は最後の客になってしまったが、酒も進むし親方の江戸前寿司ウンチクも立て板に水の如くさらさらと言葉が出てきて止まらない。
「なんなら、奥に泊まる所用意してあるから、もっと呑むかい?」と最後まで親方の冗談が絶えない晩秋の夜であった。

帰り道、つくづく「いずみ」に☆などつかなくて良かったと思った。
きっと、ここを訪れたお客さん全員がそう思っていることだろうナ。
おぉ、夜はさすがに冷える。
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by cafegent | 2007-12-10 18:10 | 食べる