東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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大井町「廣田」のカキフライに感動し、幻の鮭児に舌鼓。

朝、家からオフィスまで歩いて行く途中沢山の種類の鳥の鳴き声が聞こえて来る。近くに自然教育園があるからか、珍しい野鳥も見かけることがある。先日も雀に交じり、ルリビタキが高い枝に止まっていた。しかし、デジカメと云うモノは起動に時間がかかり、いざ撮ろうと思う時には何処かへ飛んで行ってしまう。
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ビルの屋根にシジュウカラ発見。
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小さな枝にはメジロのカップルが楽しそうに鳴いていた。

急激に寒さが増してきた一昨晩、大井町「廣田」にて冬の名物カキフライを食べる事が出来た。本当ならば、今年から大井町では食べる事が出来ず、田園調布「廣田」だけでの提供だったのだが、ご主人の猿渡さんのご好意で大井町での宴となったのである。

大井町駅を出て郵便局脇の露地に入り、青森郷土料理の渋い割烹居酒屋や数軒の飲み屋を過ぎ、殆ど人の気配の無い辺りに「廣田」の暖簾が掛かっている。
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6人程しか席がない小さなカウンターの中でエンドさんが難しい顔をして電話をしていた。

カキフライの前に出そうと思っていた食材が手違いでまだ店に到着していないとの事だった。でも、もう間近の所まで運ばれているとの事だったので、順序が入れ替わるが宴を初めて頂くことにした。
基本的にカキフライは僕のリクエストだったのだが、それ以外の料理はエンドさんにお任せである。そして当日、友人宛にメイルにて幻の食材「鮭児(ケイジ)」が手に入るのでどうだね、との連絡が入った。北海道に生まれた僕だって中々食べる事が出来ない本当に幻の鮭である。これを食べない訳など有り得ないのだ。

この「鮭児」なるシャケは普通漁で獲ろうったって、出て来るもんじゃない。本来、シャケは5、6年海遊した後、産卵のために生まれた川に戻って来るのだが、川で漁獲されるシャケは歳とって疲労困憊の頃なのである。しかしながら、この鮭児と云う奴はまだ若い1、2歳位のシャケで群れからはぐれ手しまい、訳も判らず川に戻る老シャケについて行ってしまった元気溢れている若いシャケだ。鮭の児童なので鮭児と呼ぶのだね。脂が乗っていて、人によってはトロより好きだと云う輩も居るほどである。

ちょうど今頃が鮭が川に戻る時期なので、時折混ざっている貴重な鮭なのである。であるからして、普段は高級料亭や銀座あたりの寿司店に回るので、我々の口などに入る機会など滅多に無いのである。

さて、サッポロ赤星を呑んで喉を潤して待っているとガラガラと戸が引き、二人のお客さんが入ってきた。おや、顔を見ればイラストレーターのソリマチアキラさんご夫妻であった。
思えば、この名店「廣田」もソリマチさんから教えて貰ったのが最初だったっけ。なんとも奇遇だな、と嬉しく思っていたら、エンドさんが気を聞かせて大井町で特別にカキフライを出すからとインフォメーションしていたそうだった。
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僕の目の前のワイン木箱にはソリマチさんが落書きしたエンドさんの似顔絵があった。うん、これ似てるかも。

ビールが空いた頃合いにカキフライが揚がってきた。以前、僕の誕生日の時にここで白トリュフ料理で祝ってもらっていた時に隣の席で、何やら凄く旨そうな料理が出ているなぁと羨ましく眺めていたのが、このカキフライだったのである。
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大抵の店で出すカキフライなる料理は生牡蠣一つづつに衣を付けてサっと数分で揚げている。これも大変美味しいのだが、冷めてしまうと揚げ油の味が強く残り冷めたら食べれたもんじゃない。まぁ、そう云うカキフライは、揚げたてをすぐ口に入れるのが正しい食べ方である。
そして、エンドさんのカキフライはと云うと、これが何と20分から30分かけて揚げるのである。こうしてじっくりと油で揚げる事で完璧に牡蛎に火が入り、牡蠣の持つ旨味が全部廻りの衣の中に充満するのだそうだ。
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ゴロンとしたテニスボールのようなまん丸の衣の中には、普通のカキフライの二人前分もの牡蠣が使われている。
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一個づつのカキフライは口に入れた時にちょうど火が通るくらいのレアが旨い。でも、廣田のカキフライは完全に火を入れているので冷めても美味いのである。ワインを呑みながら、ゆっくり味わえる極上カキフライなのだ。
白ワインにしようかなと思っていたら、エンドさん曰く「ウチのカキフライは赤でも合うよ」とのお言葉にススメられるままにブルゴーニュの赤を頂く事にした。
「シャトー・ド・ピュリニー・モンラッシェ」の極上ピノ・ノワールだ。さっぱりして呑み易いワインだが、本当にこのカキフライにもマッチしていた。

そうこうしているうちに漸くお待ちかね、羅臼で獲れた「鮭児」が到着した。
市場に出れば、1匹8〜10万円はすると云われる幻の鮭である。実はこの鮭児を手に入れたのは「くま寿司」との事だった。なるほど、これだけの素材を手に入れるなんて、流石である。しかし、それを分けてもらっているエンドさんも凄い。
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その身は口の中でとろけてしまいそうなくらい脂が乗っていて、そのままで十分美味しい。一口食べてから少しだけ塩で食べたが絶品だった。
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そして、今度はケイジのグリエである。カリカリに焼かれた皮がもうたまらなくオイシい。生も最高だが焼くとそのプリッとした身が「これ、本当に鮭なのか?」と思う程である。いゃあ、「オイシい」しか出て来ない。

お次は、エゾ鹿の登場だ。
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ワインレッド色の赤身をタタキの様にして出して頂いた。これはワインに合うなぁ。ついつい、人の分まで食べてしまいそうになった。

続けて出てきたのはドーンとでっかいエゾ鹿のハンバーグである。
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このボリュームで食べきれるのかなぁと思いきや、鹿肉はあっさりしていてペロリと平らげてしまった。

丁度ワインも終わりそうになった頃合いに〆のご飯となる。
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この日のご飯は香ばしく煎った明太子のふりかけご飯。それに農家のおばあちゃんが漬けたお新香。この浅漬けが素晴らしく美味しかった。
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味噌汁はフランス産シャントレルと云うキノコと鎌倉の小松菜の赤出しだ。たまらんなぁ、この味。

〆のご飯がこんなにもホっと出来るなんて、感無量である。

念願のカキフライに幻のニコラス、いやケイジ。なんちて。
それにジビエの蝦夷鹿料理。「廣田」エンドさんのめくるめく料理探求は何処までも果てしなく続くんだろうなぁ。

その季節毎に旬の料理を食べる、と云う至極当たり前の事が段々出来なくなってきている様な気がする。自分ですら、これって今の季節の野菜だったかしら、なんて思う事があるくらいなのだからナ。ここはそう云う意味でも実に有り難い店である。エンドさんご馳走さまでした。

この夜はソリマチ夫妻にもまた新しい赤羽の店を教えてもらった。是非、年明けにでも探してみよう。至福の食を堪能したあと、目黒へ出て「権ノ助ハイボール」へ向かった。ふと、「廣田」に忘れ物をした事に気付き「年明けに取りに行くので置いといてください」と連絡。ハイボールを呑みながら、武田君と他愛無い話をしているとエンドさん登場。そして、忘れ物も持ってきてくれたのである。いやはや恐縮するばかり。そして、案の定また深酒となったのだった。
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翌日の朝、新聞をめくっていたら服飾評論家の遠山周平さんのファッションコラムが出ていた。そうか、今はアメリカントラッドが流行っているのか。これって、イタリアあたりの洋服トレンドがアメトラだと云うことだろうか。時代は回ると云うが、僕のクローゼットの中には何十年も前に買い漁ったレジメンタル・タイが百本くらいある。また、今の洋服にでも合わせてみようかな。
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このコラムで洒落た伊達男のイラストを描いていたのは前日お会いしたソリマチアキラさんだった。
親しみがまた一歩近づいた気がした僕である。
by cafegent | 2007-12-21 12:27 | 食べる