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by cafegent
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志の輔落語が映画になった。「歓喜の歌」で新春初笑いを!

立川談志一門の落語は本当に面白い。面白いのだが、その昔談志師匠が落語協会と大げんかして飛び出してしまったので、談志一門の噺家は寄席に出られないのである。三遊亭円楽一門も同様に寄席の定席では観ることが出来ないのである。

談志一門の中で今飛ぶ鳥落とす勢いで人気沸騰中なのが立川談春。彼の古典落語は抜群に巧い。また、立川談笑の新解釈古典落語も凄い。冬の定番古典落語「芝浜」だって、談笑の手にかかると暴走族あがりの夫婦の人情噺「シャブ浜」になってしまうのだ。

今、彼らの落語を聞きたいと思ったら、必死になって一門会や独演会のチケットを探さなくてはならない。即日と云うか即効で完売になってしまうのである。

そんな立川一門だが、根強い人気を保ち、毎年新作落語会を繰り広げているのが立川志の輔だ。ここ数年続けている「志の輔らくご in パルコ」もチケットが中々取れない厄介な独演会である。
清水義範の小説「バールのようなもの」を題材にした創作落語が人気を博し、今では笑福亭釣瓶、林家正蔵、柳家花緑、春風亭小朝、春風亭笑太師匠たちと「六人の会」を旗揚げし、「大銀座落語祭」を大人気のイベントに仕立てている。

この大ベテラン立川志の輔が作った創作落語に「歓喜の歌」と云う演目がある。
年末が近づいた、とある町の公民館のダメ職員が、二つの名前の似たママさんコーラスグループの大晦日の市民ホール公演をダブルブッキングしてしまったのだ。
やる気の全くない公民館の主任にママさんコーラスのメンバーたちは怒り爆発で、それでも大晦日はやってくる訳でこの主任がてんやわんや奔走し、コンサートの当日を迎える、と云う人情噺なのである。

この人気創作落語の傑作「歓喜の歌」が映画になって登場する。
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メガホンを取ったのは今年「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」が大ヒットした松岡錠司監督だ。そして主演は小林薫である。たぶん、前作で気があったのだろう。

兎に角、いい加減で無責任な駄目ダメ公務員を薫さんが好演しているのだ。どこの町でも有り得る「民と官の対立」をテーマにした「志の輔らくご」の世界を「映画ならではの喜劇」として絶妙なテンポと好キャスティングで仕上げている。
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昨年末の新聞に載ったお詫び広告をパロった映画宣伝広告も大いに笑わせてくれた。

まず、何が可笑しいって小林薫演じる公民館の主任だ。場当たり的な応対と優柔不断の事なかれ主義である。自分の無責任な言動で善良な市民たちが困り果てているにも関わらず、いつの間にやら自分が被害者モードに切り替わってしまう奴なんである。全ての事がだんだん自分に都合良く解釈してしまうのだ。そんな主任に振り回される部下を演じる伊藤淳史もひょうひょうとした小林薫を余計に際立たせていて良い。
久しぶりにスクリーンにカムバックした安田成美も素晴らしい。実に清々しく、チャーミングでありながら可成り滑稽な芝居を見せてくれて、この人情喜劇に欠かせない存在感を残している。
脇を固める由紀さおり、浅田美代子、藤田弓子、根岸季衣、そして渡辺美佐子といった蒼々たる女性陣も光っていた。各人がベテランとしての魅力を放ち、映画の奥行きを広げていた。

トホホな程に「事なかれ主義」が板についていた主任が、ふとした「北京飯店」の餃子のお陰で心の何かが変わり初めて行くのだが、無事に騒ぎは納まるのであろうか。さて、大晦日のママさんコーラスの「歓喜の歌」の運命や如何に?

可笑しく、笑い転げて、最後にはホロりと泣かせる新春最高の映画だ。

「歓喜の歌」2008年2月2日 全国ロードショー公開
シネカノン有楽町1丁目・渋谷アミューズCQN・新宿ガーデンシネマ他
「歓喜の歌」公式サイト
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(c)2008 「歓喜の歌」パートナーズ
by cafegent | 2008-01-09 14:39 | ひとりごと