東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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目黒にて、春の魚介を食べ尽くす。

三月は伺う事が出来なかったので、今年三度目の「寿司いずみ」へお邪魔した。
此処はいつ来ても「準備中」の札が出ている。今まで一度たりとも「営業中」の面を見た事がない。
要するに、毎日予約のお客さんで一杯だから、ふらりと行っても席が無いのだナ。

先日は、あのヤンチャな横綱、朝青龍関もいずみへ来たそうだ。一体、何れだけの量の寿司を食べたのだだろうか。まーどうでも良いが。
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先ずは、赤星サッポロラガーで喉を潤すと、空かさず親方が新作料理を出してくれた。
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「利尻産エゾあわびの肝ゼリー寄せ」だ。利尻昆布をたっぷりと食べて育った鮑の肝は、磯の芳醇な香りが口の中一杯に広がる一品である。

二品目は「蝦蛄(シャコ)のダシ巻き玉子」。
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昨年、一昨年と江戸前の蝦蛄が穫れず、此の時期に出せなかったのが、今年は瀬戸内海は香川の志度、観音寺港で穫れた蝦蛄が手に入ったそうだ。茹でるのも旨いが、贅沢に出汁で卵焼きにしてくれた。
蝦蛄は4月から6月が旬なので、とびきり美味しい料理となった。

続いて、「子持ちヤリイカの煮付け」が出た。
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親方曰く、此の一品はイカはもちろんの事、いずみ自慢の煮汁とイカ専用に作っているツメを味わって欲しいとの事だった。
開店当時から33年間継ぎ足して来たイカの煮汁とツメは素晴らしい味である。
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たんまりと子が詰まったヤリイカは煮付けが一番ウマい。
子持ちヤリイカは歳を越すと子を持つそうだ。此処いずみでも一年で3週間のみ提供する料理である。

四品目は、「初鰹のタタキ」。
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宇土から宮崎県沖で穫れた初カツオを京都宇治の和芥子とおろし玉葱を乗せて戴いた。
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此の和芥子はからし菜と芯を一年置いて、自然乳酸発酵させた芥子だ。
夏場になると発酵も増し、まるでニンニクの様な香りを発するらしい。

同じ和芥子を付けて頂いたのは、今年最後となる日本海産の鯖だ。
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最後か、と思うと一瞬感慨深くなったが、一口でパクっといって仕舞った。実に美味い。

其の鯖の魚卵、白子(精巣)と真子(卵巣)を珍味で出して貰った。
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矢張り、此れには酒だナ。

此処で日本酒を戴くことに。
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長野県大澤酒造の銘酒「明鏡止水」のしぼり酒だ。先日、親方に戴いた「益荒男」も旨かったが、此れもイイネ。

七品目は、親方が満面の笑みを浮かべて紹介してくれた逸品だ。
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「いずみの醍醐桜蒸し」と云う新作である。
芝えびの真上(しんじょう)とすり身をの中にお馴染みのさくらんぼの梅漬けをサワークリームで包んだモノが入っている。其れを桜鯛でくるみ、更に大島桜の葉で巻いて蒸して有るのだ。塩のみの味付けが素材の味を一段と引き立てていた。
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春を感じる素晴らしい料理に感動して仕舞った。

続いて春の定番「筍蒸し」だ。
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此れも、海老真上と角切りにした新筍をワンタンの皮で包み、其れを筍の皮でくるみ、まるで粽(ちまき)の様にした蒸し物だ。
ワンタンの皮に染込んだ筍の香りとサクっとした歯触りが、たまらない一品である。

日本酒に合う珍味が登場した。
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四万十川で穫れた天然鮎の肝を使った塩辛「苦うるか」である。

四万十の鮎は二寸程の大きさのうちは川虫やザザ虫などを餌にしているらしい。其れが三寸鮎に成って来ると川海苔を食べる様になるそうだ。此の三寸鮎の肝だけを使ったうるかなのだが、この一皿分で鮎7、80尾分の肝を使い5年もの間寝かせたモノとの事だった。驚きだネ、まったく。

昔の人は険しい山に入り、鮎釣りをする時には薬の代わりに「うるか」を持って行ったのだそうだ。今の様にタッパーウェアなど無い時代だから鮎の肝を蛤の貝殻の中に詰めて閉じて、寝かせたそうだ。
此れを胴巻きの中に仕舞い、山に出掛けたのだ。八竹の中に入れた竹酒を呑みながら、小さな木の枝を拾って、其れでうるかを舐めたそうだ。
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此の気分を味わって欲しいから、と黒文字(落葉樹の枝で作るヨウジ)で舐める様薦められたが、ロマンを味わうって感じだネ。酒が旨い。

十品目は、五島列島、中通島(なかどおりしま)で揚がった「平鱸(ひらすずき)」の刺身。
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磯場で穫れたすずきは冬が旬の魚だが、身が締まって固いので刺身が一番だそうだ。クセが無い味でとても美味しかった。
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其の平鱸の皮をポン酢和えで。此れに合う秋田の「奥清水」を戴いた。

一品料理は此処までで終わり。さて、続いてはいよいよ握りなのだ。

先ずは、春が旬の桜鯛から。
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皮が旨いネ。
続いて、先ほどの四万十の天然若鮎。
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鮎の下に川海苔が入っており、香りが良い。
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細魚(さより)の酢橘洗い。
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其の細魚の皮の炙り。酒のアテに良いね。

此処で椀モノ登場。
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蓋を開けると、フワっと桜の花が咲いていた。
マグロの血合い抜きの鮪節の出汁で取ったお吸い物である。
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此の鮪節は其のまま食べても十分美味しいモノだった。

いずみ劇場はまだまだ続く。

お馴染み小肌の握りだが、今年は四連発。
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一つ目はスペイン産ジンと赤酢で〆てライムを絞ったジンライム小肌。結構、ハマる味なのだ、此れが。

二つ目はお馴染み赤酢〆、続いて白酢(米酢)〆とゆず酢〆だ。
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写真に撮るとどれも同じにしか写らないのだナ、残念。

富津で穫れた江戸前青柳の握り。
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威勢良く二つだ。アトムの頭だね、こりゃ。
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そして、マグロ赤身の和芥子ヅケ。此れも美味しいねぇ。
赤身の持つ本来の美味しさを引き立ており、トロより美味い味わいだ。

焼き筍は木の芽の香りとマッチして良い味だ。
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口の中で御飯がホロっと崩れる程度に握っているので下に敷いた筍の皮ごと口に入れ、皮を引き抜くのだ。
筍のシャリ感と酢飯のホロリが絶妙なのである。

先ほどの鮪に続き、今度は鯵の和芥子ヅケの登場。
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アジをヅケにして食べたのは初めてかナ。其れにしても美味しい。
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お次はエゾあわび肝和え。

寿司屋の命「かんぴょう」を戴き、酒を越後の吟醸「越の魂」を貰う。
春は貝も美味しい季節なのだ。
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秋田産の赤貝と北寄貝を戴いた。
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いつもは車海老のおぼろを戴くのだが、先ほどの蝦蛄(しゃこ)を玉子に浸けたと云うので、迷わず蝦蛄のおぼろ握りを戴いた。
江戸の仕事を味わうのは素晴らしい体験だ。其れが最高に美味いのだから、云う事無しである。
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腹も十分一杯に成って来たので、最後は煮穴子で〆た。
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口直しの沢庵もぬかが効いていて美味しかったナ。

たっぷり三時間程の「いずみ劇場」は、春を存分に味わう事が出来た。
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親方も日を追う毎に元気に成って居る。三十三周年は愉しみだなぁ。

外に出ると、嵐の様な雨風も上がり、穏やかな夜に戻っていた。目黒通りまでの道のりも食後の散歩に丁度良かった。
by cafegent | 2008-04-10 18:43 | 食べる