今日の東京は霧雨が降り、少し肌寒い。明日はまた初夏の陽気になるらしいが、気温差が激しいと躯の調子が狂うのだナ。
先日は桜流しの雨が美しい花筏を見せてくれたが、今日の様な雨は春時雨(はるしぐれ)とでも云うのだろうか。

不動公園の片隅ではアヤメの花が雨を浴び、美しさを増していた。
こんな時に雨の日も素敵だなぁ、と思うのだネ。
週末の土曜日、東京は朝から冬に戻ったかの様に寒かった。東急池上線のホームでは、雀が朝ご飯を求めて線路に降りていた。

お腹一杯になったのか、ふっくらとしていたナ。
東京駅から新幹線に乗り桜咲く新潟を目指した。深川めしと酒を買い込み、MAXときに乗り込んだ。

さぁ、居酒屋新幹線の旅が始まるのだ。

昼過ぎに新潟に到着。
新潟では、この時季「高田お花見号」と云う臨時列車も出ている。直江津から高田間、満開の桜の中を列車が走るのだネ。

日本三大夜桜に数えられる高田の桜は、夜のライトアップされた城と桜が幻想的で美しい。

新潟駅で俳句仲間の佐々木夫妻とお遭いしたので、一緒に白新線・特急いなほ5号に乗り菊水酒造の在る新発田(しばた)駅へと向かった。
新発田駅からは、タクシーに乗り菊水酒造さんへと移動した。

途中、桜が見事に咲き誇りお花見をしている方々を多く見かけた。

この日の新潟がフェーン現象の影響か、初夏の様な陽射しだった。
先に到着していた吉田類さんは加治川の畔で一人吟行をしていた。僕も俳句のお題を求めて加治川沿いを歩いてみた。

川面の上を低く飛び、川岸に舞い降りたのはハクセキレイだった。

この辺りは鳥達の餌も豊富そうだネ。

樹々の上からはヒヨドリの啼く声が聴こえてくる。

土手では小さな土筆(つくし)が顔を出していた。
以前、詠んだ句を思い出した。
土筆摘み かがむ乳房も 揺れてをり 八十八
加治川の向こうにはまだ雪が残る飯豊(いいで)連峰が連なる。

暖かい陽射しの中で眺める残雪も美しい。
「菊水」を造る菊水酒造は、飯豊山系を源流とする加治川沿いに建つ。

「ふなぐち」やにごり酒の「五郎八」など僕の好きな酒を多く造っている。越後が誇る米のみならず、飯豊連峰の雪解け水などが良質の軟水となり、美味い酒が生まれるのだネ。
千雪さんは桜の着物が素晴らしい。

吉田類さん主宰の句会「舟」は、今回この菊水酒造に在る『日本酒文化研究所』にて催された。

伊勢さんをはじめ、句会仲間が次々と到着だ。

此処には我が国初の有機空間の認定を受けた酒蔵「節五郎蔵」が在る。

江戸時代元禄期に造られていた酒の味を再現して造られた「節五郎元禄酒」の製造工程を見学させて頂いた。漕口(ふなくち)は、酒を絞る木製の水槽が舟型をしていたことからその名が付いたと伺った。

また、貯蔵蔵の奥に置かれた木の大樽も見事に江戸期の酒造りを再現していたネ。

此処には、盃を置く「杯台」の膨大なコレクションが有り、それはもう見事だ。

昔は直に盃を置くのはマナーに反するとのことで、細かく装飾を施した杯台が普及したそうだ。

また、時代物の燗付け器も素晴らしく、酒好きには堪らないコレクションばかりでアル。

更に酒や食文化に関する書籍の蔵書も凄い。
学術本のみならず、僕が集めているような吉田健一や池田弥三郎等の食の随筆本等も沢山集められている。

もちろん、我らが吉田類さんの本も何冊も有りましたヨ。
さて、酒蔵見学や素晴らしい加治川の眺めなどをお題に各自三句を詠むこととなった。

類さんも思案中。

そして、句会の皆さんも思い々々句を考えている。
皆さんの投句が終わるまで、暫く美味しい菊水さんの造る酒を愉しむことにする。

新潟と云えば笹団子だネ。僕は甘いものを食べながら酒を吞むのも好きなので、もう嬉しくて仕様がない。

「無冠帝(むかんてい)」の吟醸は、後味スッキリで料理との相性も良い酒だナ。
こちらは、新潟名物「ぽっぽ焼き」だ。

黒糖を使った菓子パンの様で実に美味い。新発田では「蒸気パン」と呼ぶと教えて貰った。
今回は菊水酒造さんでも開催されている句会の方々も参加された。

俳号「小紫」さんこと綾子さんを含め、皆さん新潟の方だったので、今後の新潟の旅も一層楽しくなりそうだ。

おや、伊勢さんと泥頭さんは早々に句を提出したのか、余裕で飲んで居ましたネ。
投句が終わり、先ずは、菊水で乾杯!

そして、真剣に句を選ぶのだネ。

さぁ、皆さん「天」と「地」の二句を選び、発表となった。

主宰から講評を聞くのが一番愉しい。

この日一番、「天」3つと「地」2つを獲得した句をご紹介しよう。
酒の神 麹の床に 春眠す 泥頭
泥頭(でいず)さんの句は、先程ご案内戴いた蔵の「床(とこ)室」で寝かせている米麹を見事に詠んでおりましたナ。
私、八十八が「地」に取った句をご紹介。
花散りて 地蔵様にも 髪飾り 夢音
新潟で俳句を詠んでいる夢音さんの句は、なんとも愛らしい光景が目に浮かぶネ。
では、主宰の句もご紹介しよう。
黄水仙 マドモワゼルの 吐息(といき)かな
類さんが先程歩いた加治川の土手には沢山の黄水仙が咲いていた。

新発田の自然を歩き、絶妙なセンスで情景を切り取った一句でした。
こちらは、千雪さんと泥頭さんが「地」に取りましたネ。
ついでに八十八の詠んだ句もひとつ。
紋白の羽根ひろげたる日和哉(ひよりかな)
この日は、本当に素晴らしい天気に恵まれた。加治川の土手を気持ち良さそうに飛んで来た紋白蝶が、羽根を広げて休みたくなる程の長閑な気候だったのだナ。
無事に句会も終わり、夕方から菊水酒造で働く皆様達と共に『菊水観桜会』が催された。

菊水酒造の五代目、高澤社長からご挨拶を賜り、いざ酒宴へ。
毎回、江戸料理を再現して振る舞われるとの事。今回も此処『日本酒文化研究所』が所蔵する江戸料理の文献から幾つもの料理を再現して、割烹『志まや』さんが春らしいお重にして提供してくれた。

「料理早指南」「豆腐百珍」「素人包丁」等の文献の中から、「桜ますのすずめ焼き」や「三色田楽」、「桜飯」などが作られた。
「素人包丁」に書かれた桜飯は、蛸を煮て桜色を出して、ご飯を炊いたのだネ。

見事な江戸料理だが、味もまた素晴らしかったナ。

最後に出た「菊水の酒粕」を使用した根菜粕汁も美味。

江戸元禄期の酒を再現した「節五郎元禄酒」は度数が高いが、実に奥深い味わいの酒だった。

素敵な方にお酌して頂くと、一層酒も美味くなるのだナ。

あぁ、至福の味わいだ。

今回も伊勢さん、大変お疲れさまでした。

吉田類さんも前日のイベントでも大いに吞まれたそうだが、この日も楽しく吞まれてましたネ。

佐々木夫妻、千雪さん、ゆりいさんもお疲れさまでした。

泥頭さんも夢音さんと俳句&酒談義に花を咲かせておりましたナ。
皆さん、大いに吞み、楽しく交流を深めることが出来た。

次回は一泊して地元の方々行きつけの店で酒宴といきたいところだ。
名残惜しかったが、翌日東京で予定が入っていたので僕は一人先に新発田を後にした。

短い滞在だったが、新発田では沢山の俳句のお題が見つかった。
帰りの新幹線では、車中ずっと手帖に句を詠んだ。もちろん酒を片手にだった事は、云うまでもないのだナ。