東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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<   2015年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

季節を72に分けて表す七十二候では「土潤溽暑」(つちうるおいて、むしあつし)の頃、ムッとした熱波が漂い肌にまとわりつく蒸し暑い季節がやって来た訳だネ。「溽暑」とは、いささか難しい漢字だが「じょくしょ」と読む。腕の毛穴から汗が吹き出して来る、そんな湿度の高い蒸し暑さを指す言葉でアル。
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「溽暑」が過ぎれば、今度は「炎暑」の到来だ。クラッと目眩のする様な砂灼(すなや)くる暑さは堪ったもんじゃない。ゆらゆらと陽炎の様に熱波が揺れる灼熱のアスファルト、打ち水をして涼をとる光景を目にする季節だネ。

    柔らかく女豹がふみて岩灼(や)くる    富安風生

酷暑が続く八月の夏真っ盛り、長屋の一角、開け放たれた玄関の簾の向こうに肌襦袢姿で畳の上に横になる女の姿を目にして、灼けた岩の上でしなやかな姿態をさらけ出す女豹(めひょう)にでも見立てたのだろうか?
あぁ、そんな光景に出会(でくわ)してみたいものだナ。
      ◇           ◇           ◇
閑話休題。

先日、久しぶりに大好きな寿司屋へと出掛けた。我が家から歩いても10分程に在るのでもっと通えるのだが、如何せんその店の主人(あるじ)が15年以上修業した寿司屋さんに行くことが多いので、ご無沙汰してしまっている次第なのだ。

その店は目黒と五反田の間、桐谷斎場の通りから脇に入った処に在る。
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『なかのや』の暖簾を潜ると主人のキンちゃんが笑顔で迎えてくれた。

席に着くと、先ずは日本酒と塩のみで味つけした白身の骨と貝ヒモの出汁で仕上げた一口大の雑炊が出て来た。
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柚子の香りが立ち、胃に優しい一品だ。最初にこれを戴くと悪酔いしないかもしれないナ。

続いて、三浦半島で獲れた蛸を粗塩で戴いた。
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うん、旨味が凝縮して噛めば噛む程に美味さが広がっていく。これに合わせる酒は、「魚沼」の辛口純米だ。むふふ。
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出汁に漬け込んだ子持ちシャコも実に美味い。そして、漬け込んで二ヶ月の茶ぶり赤なまこの登場だ。
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こんな手間のかかる仕事ぶりは、キンちゃんが研鑽を積んだ目黒の『寿司いずみ』仕込みだネ。さっぱりとして、涼を感じる一品だ。

再び、シャコが出てきた。
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愛知産の蝦蛄を酢で〆ている。おぉ、これまた美味い。酒を和歌山の地酒、平和酒造の「紀土(キッド)」に切り替えた。純米の風味豊かな香りにしっかりとキレのある口当りの酒だった。クゥーッ、旨い。

お次は、琵琶湖の天然鮎だ。
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季節を味わうってのは、至福のひとときだナ。小さいながら、豊富な藻を食べて育った鮎の肝に琵琶湖の味を感じることが出来た。
今度は、ホシガレイだ。
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こちらは、肝ポン酢に付けて戴いた。ギュッとした歯ごたえも美味さを引き立てる。続けて、ホシガレイのエンガワの炙りだ。
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皮付きのエンガワは、口溶けが凄かった!あぁ、幸せだ。

さぁ、この季節がやって来た。
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エゾバフンウニの濃いオレンジ色が磁器の器に映えている。ムヒョーッ、口へ運ぶと濃厚な旨味と甘味がズンと残る。可成り後味が強いウニだネ。冷酒がクィクィと進むのだ。
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外房で獲れたアワビの蒸しも素晴らしい。
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山葵をちょいと載せて口へ運ぶ。おぉ、身が柔らかく味も濃い。

次に出て来たのは、青柳を干したモノだった。
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コレは酒に合う珍味だナ。噛めば噛む程旨味が口一杯に広がり、酒を誘う。

続いてもまた珍味だ。
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アワビの肝の味噌粕漬けか。キンちゃん、「寿司いずみ」の大将仕込みの味をしっかりと受け継いでいるネ。酒は山形の地酒「銀嶺月山」の純米だ。おぉ、酒米の仄かにフルーティな香りが僕の鼻腔をくすぐる。月山の名水で仕込んだ酒ならではの、まろやかで優しい喉越しの酒だ。クィッと呑める一杯だ。

さぁ、キンちゃん劇場の第一幕が終わり、握りの幕が上がった。

先ずは、小鯛のおぼろ握りから。
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おぼろに漬け込んで小鯛の味を濃く出していた。こんな江戸前の仕事は、中々他店では味わえないのだナ。むふふ。

こちらは、蒸しあゆの握りでアル。
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鮎の肌の色が美しいネ。
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続いて、中トロの握りと静岡で獲れた小肌の握りだ。
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どちらも云うこと無しの美味さだネ。

続いて出たのは、キタムラサキウニの握りだ。
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こちらは、エゾバフンウニよりも色が白い淡い味が特徴のウニだネ。
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愛知のトリガイは、歯ごたえも良く良い味がしていた。
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鹿児島のアジ握りも脂の乗りが良く旨い。
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マグロ赤身、クルマエビおぼろ漬け握りと美味い寿司が続く。
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そして、箸休めになかのやの焼き印が押された卵焼きを戴いた。
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おぉ、甘くて美味い。
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キンメ昆布締めには、広島の地酒「極鳳」の純米酒を合わせてみた。間違いない取り合わせだナ。
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沢庵をかじり、ホッと一息。

お次は、三重桑名のはまぐりの二つ合わせ握りだ。
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あぁ、もう申し分ない美味さに感動だナ。

立て続けに煮穴子の登場だ。
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穴子のためだけに煮詰めたツメが極上のテリを魅せていた。
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イカの握りも甘い。

マイワシの細巻きをリクエストしてみた。
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むほッ、脂の乗りが絶妙で美味い。細巻きなので、パクパクとイケるのだナ。

そして最後の締めくくりは、銚子の金目鯛の炙りだ。
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脂乗りも凄い!口の中で溶けるようだった。

キンちゃんの握り劇場も無事に終演だ。
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〆の味噌汁が満腹の胃袋をサラリと流してくれた気がした。

相変わらず、良いおもてなしをしてくれたネ。残った酒をグィと飲み干し、ご馳走さま。
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渋めのお茶を戴いて、酔いを冷ますことが出来た。

次回はいつ訪れようか。ウニの季節にもう一度来ようかナ。外はすっかり暗くなっていた。我が家を通り過ぎ、そのまま武蔵小山『長平』に向ったのでアール。
by cafegent | 2015-07-29 16:49 | 食べる | Trackback | Comments(0)
暦では「大暑」を迎えた昨日、打ち合わせを終えた足でそのまま横浜・桜木町へと向った。午後四時、桜木町駅から野毛動物園方面へと急ぐと案の定目指す店の前では長い行列が出来ていた。

普段は午後五時開店の居酒屋『武蔵屋』だが、この日は一時間前倒しにしての口開けとなった。
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何故ならば、前日の新聞に「3杯屋、歴史に幕」の記事が出たからだった。

御歳93歳の喜久代おばちゃんが横浜国大の学生アルバイトたちと切り盛りする小体の居酒屋「武蔵屋」が、今月一杯で店を閉じることになった。
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現在、木・金曜日の週二日しか営業をしていないので、今週と来週の4日間で終わりとなる訳だ。
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酒場番長の矢野寛明さん、プロモデラーのMAX渡辺さんも少し遅れて到着だ。
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看板猫のクロも行列が気になるのか、覗きに来ていたナ。

「コップ酒は、一人3杯まで」先代の木村銀蔵さんがお客さんの躯を気遣い酒は3杯までと決め武蔵屋を始めたのが、今から69年前、昭和21年のこと。元々、大正時代に横浜港近くの酒屋の一角で立ち飲み屋としてスタートした。戦後、この野毛に移転して「武蔵屋」として始めたのだナ。'83年に銀蔵さんがお亡くなりになった後は喜久代おばちゃんと妹の富美子さんの二人でこの店を継いだのだ。

3年前には女優の五大路子さんが「野毛武蔵屋 三杯屋の奇跡」と云う舞台を上演したり、林文子横浜市長が直々店まで感謝状を持参した等、横浜では大変有名な居酒屋だ。

古き良き昭和の香り漂う木造の建て屋は、売却され取り壊されると聞いた。とても残念でならないが、喜久代おばちゃんが決めたことだから仕方が無い。夕べは1時間半程並んだが、この店で酒を酌み交わした友たちのことを思い出しながら、ゆっくりと3杯の燗酒を味わった。
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仙台に赴任中のビリー隊長やブラジルに赴任中の浜田信郎さんとも此処でご一緒したネ。

しかも、昨日は我が酒朋たちが沢山集まっていた。開店と同時にカウンターに座ったのが、ヨシタカさんとヒロミチ君、奥の座敷には「野毛ハイボール」の店主、佐野さん。
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僕の数人前にはNMBEプロジェクトの庄子さんとレコード番長の須永辰緒さん、そして僕の後ろには、チャンピオンやボヤちゃん、牛太郎仲間の大沢さんなどが並んで居たのだナ。
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待った後のビールは最高に美味い!
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玉ねぎの甘酢漬け、おから、鱈豆腐、お豆、納豆、お新香といつもの定番料理が順序良く出た訳だが、この日は五菜に加え最後に赤飯が出て来た。
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おばちゃん、最後に粋な計らいをしてくれたネ。
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この鱈豆腐ももう食べ納めかと思うと寂しいナァ。
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なみなみと注がれた燗酒は、口を持っていかないとこぼしてしまう。

壁に掛けられた多くの文化人たちの色紙をあらためて眺めた。日本画家の平山郁夫さん、洋画家の中西繁さん、コラムニストの青木雨彦さん、作家の川上弘美さん、新井満さん、内館牧子さん等々、皆個性溢れる言葉を残していた。その中でも僕が大好きなのが青木雨彦さんの色紙だ。

      塗箸の剥げて小芋の煮ころがし

武蔵屋の塗り箸、今は面取りした箸に代わったが昔は丸くてスグにコロコロと転がって机から落ちてしまうことが多かったのだナ。玉ねぎの甘酢漬けの皿やおからの皿で上手く箸をはさんで落ちない様に工夫しながら燗酒を呑んだことも今では愉しい思い出となった。

遠くから蝉の鳴く声が聴こえてきた。開け放たれた窓から時折流れ込む風も夏の武蔵屋の憩いだった。横浜で育った画家、中島千波さんが色紙に描いた武蔵屋の木枠の窓辺の絵が僕らの座ったテーブルの横に掛けられていた。
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この絵ももう見納めか、と感慨深く眺めてしまったナ。

     尋ね人尋ねあぐねて赤蜻蛉(とんぼ)

こちらは、新井満さんの色紙から。
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一時間程、瓶ビールと3杯のコップ酒を愉しんだ。
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気心しれた酒朋たちと酒を酌み交わせたのも最高の思い出となった。
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喜久代おばちゃん、永い間本当にお疲れさまでした。まだまだ元気そうだし、ゆっくりと休息してくださいませ。

そして、呑ん兵衛の赤蜻蛉たちは、夕暮れの街へとハシゴしたのだナ。
by cafegent | 2015-07-24 12:02 | 飲み歩き | Trackback | Comments(2)
昨日7月7日は生憎の雨となった。東京は湿度が高く、重く湿った空気が歩く足を遅くしていたナ。

七夕の日に降る雨を『催涙雨』と言う。彦星(牽牛)と織姫の涙が雨になったものと云われている。それは、二人が逢った後に再び別れるときに流す惜別の涙か、逢えなかったときに流す涙だとか。どちらにせよ随分とロマンティックな話だネ。
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その七夕の日をはさんだ7月の6・7・8日の三日間、入谷では東京の初夏の風物詩「入谷の朝顔まつり」が催されている。
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入谷鬼子母神・真源寺の境内をはじめ、周辺の通りには100軒以上もの朝顔業者が沢山の朝顔鉢を販売するのだネ。
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そして反対側の通り沿いでは100軒近い露天商が軒を連ねる。
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先ずは、入谷鬼子母神へお詣りをしに行かなくちゃ。
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小雨がまだ降り続いていたが、大勢の方が来ていたナ。
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僕もそうだが、毎年贔屓にしている朝顔屋さんを訪ね朝顔の鉢を買う方が多い。
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世話になった方々へのお中元を兼ねた鉢の発送手配を済ませ、自分用の鉢を買うのだナ。
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今年は千葉の稲毛に住む旧友が一緒だったので、朝顔を買った後入谷の路地裏に見つけた店で一休みした。

入った店は『Cafe de RaMo』と云う店でワインとアボ豚料理の店だった。「アボ豚」とは、アボカドオイルで育てた豚だそうで、イベリコ豚の様なブランド肉なのだネ。
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この日は、生ビールを戴いただけだったので、次回改めて「アボ豚」料理を味わいに来ることにした。

そして、夕方5時になった。言問通りを鶯谷駅方面に戻り、根岸の居酒屋『鍵屋』の口開けにお邪魔した。店に到着すると丁度賢太郎さんが暖簾を出しているところだった。
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紺地の暖簾から夏仕様の白い暖簾に切り替わっていたナ。

僕らの他にも朝顔の鉢を抱えたお客さんが入って来た。朝顔を間違えない様に女将さんが札をつけてくれた。嬉しい心遣いに感謝!

入口側の焼き台前に座り、桜正宗のぬる燗をお願いした。「鍵屋」では数種類のお猪口が有るのだが、僕にはいつも一番大きなぐい飲みが出てくるのだナ。これだと、ついつい呑み過ぎてしまうのだヨ(苦笑)

年季の入った分厚い楓(カエデ)のカウンターを前にすると、自分がこの酒場に見合う年齢になったのだナ、としみじみと感じてしまう。

お通しは、お馴染みの煮豆だ。
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夏になるとお通しが煮こごりや心太(ところてん)になったりする。
心太が酒のアテになるなんて粋だよネ。

開け放たれた玄関の暖簾越しから時折心地良い初夏の風が流れ込んでくる。首の後ろに風を感じながらぐい飲みを口へと運ぶのだ。
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クゥーッ、ぬる燗の仄かな甘みが五臓六腑を刺激する。旨いナァ。
そこへ香ばしく焼かれた鰻のくりから焼きが登場した。
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蒲焼きと違いプリッとした食感が、このくりから焼きの持ち味だ。山椒を振り掛けてかぶりつく。むほほ、相変わらず美味しい串だったナ。

二本目のぬる燗と共に冷や奴が来た。
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木の簀の子に乗った豆腐は見事に冷たい。薬味の刻み大葉と生姜をつけダレに浸し奴を戴く。このヒンヤリした口に、これまたぬる燗が合うのだナ。

口開けから15分も経たない内にカウンター席も小上がりの卓もお客さんで一杯になった。またもや朝顔市で鉢を買って来た方が居て、入口脇には朝顔の鉢だらけになっていた。

合鴨串も焼いて戴いた。賢太郎さんの塩加減が実に上手いのだナ。
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長ネギも塩が甘さを引き出してくれていた。合鴨は脂が乗っていて最高だ。

三本目の徳利も空いたので、ご馳走さま。

午後6時半、外はまだ明るい。言問通りを渡り階段を昇りJR鶯谷駅へ。此処から秋葉原経由で神保町へと移動した。

地下鉄の階段を昇ると四角い空が見えた。暮れ泥(なず)む東京の空では、彦星と織姫が無事に出逢えたのだろうか。

喫茶『さぼうる』や『ラドリオ』『ミロンガ』の在る路地を抜けて、酒場『兵六』の縄のれんを潜る。馴染みの顔が既に呑んで居た。
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さつま無双の燗酒を白湯で割り、ごくり。ふぅ、落ち着いた。友人は冷たい麦焼酎にしたのだネ。

友人のカミサンも合流し、七夕の夜の酒宴は愉しく続いたのであった。

by cafegent | 2015-07-08 16:01 | 飲み歩き | Trackback | Comments(0)