東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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久しぶりの大阪昼酒で白昼夢を見た。

午前中、神田に出掛けたので昼飯を末広町『花ぶさ』で食べた。

一足先に秋を味わおうと、新秋刀魚の塩焼きを戴いた。カウンターの目の前では、板前さんが秋刀魚の両面に細かく包丁を入れる。こうする事で中までしっかりと火が通りふっくらと焼き上がるのだネ。
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はらわたまで綺麗に食べてしまったヨ。

最後に出て来る白玉汁粉が、嬉しい限り。
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昼時、千円札一枚の至福なのであった。むふふ。

     月の夜や石にでて鳴くきりぎりす 

加賀千代の詠んだ一句だが、夕べは美しい月夜だった。帰り道の路地では虫たちがリンリンと啼いていた。数日前の台風の夜、不動前を歩いていると何処からか金木犀(キンモクセイ)の匂いが流れて来た。雨上がりのせいか、香りが一層強くなって鼻を突いたが、ハテ?花が何処で咲いているのか暗くて判らなかった。もう秋が近づいて来たって事だネ。

さて、先週、仕事で大阪へ出掛けて来た。

仕事は午後の三時に終わったので、「平日昼酒」へと繰り出した。先ずは、地下鉄御堂筋線に乗って天王寺へ。此処に来るといつも大塚まさじの唄う「天王寺思い出通り」が頭に浮かぶ。僕が大阪に憧れたきっかけみたいな歌だからだナ。

駅から歩いて数分、時が止まったかのように佇む一軒の酒場『明治屋』はもう暖簾が下がっていた。
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この日の大阪は東京よりも暑い上、僕はスーツ姿でアル。

ガラリと戸を開けると、愛想の良い声で「いらっしゃ〜い」と、姐さんが入口近くのカウンターを勧めてくれた。
シャツの下から茹だる様な湯気が出ており、思わず黒ビールを頼んだ。

冷たいビールで仕事疲れを吹き飛ばし、大好きな「きずし」を頂いた。
生鮨とは、いわゆるシメサバだが、鰆なんかでも同様にきずしと呼ぶ。
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僕は1970年、大阪万博の時に生まれて初めて「鯖のバッテラ」なるものを食べ、一気に虜になってしまったのだ。だから、大阪に来ると必ずきずしかバッテラを食べるのだ。むふふ。

そして、これにはやはり日本酒だネ。キリンスタウトをチェイサーに変え、白岳仙吟生酒を頂いた。
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うーん、キンキンに冷え、キリリと美味い辛口だ。

続いて、明治屋お馴染みのシュウマイを頼む。
酒は菊正宗を「ひや」で。冷やは冷酒と違い常温の事ネ。
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薄張りガラスの徳利で献る酒は実に美味い。
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カウンター越しに店のお姐さんと話が弾んだ。長い事東京で仕事をしていたそうで、共通の知り合いが居たのには驚いた。世間って本当に狭いのだナ。

心地良く酔った所で、『明治屋』を後にして阿倍野の交差点を右へ。
市営住宅の棟を曲がると其処から飛田新地に出る。東京の吉原遊郭が無くなった後、古き良き遊郭の匂いを色濃く残しているのは、此処飛田だけだネ。
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この場所は今は美しく整備されているが、かつて『嘆きの壁』と呼ばれていた高い塀が在った。此処は廻りの生活地域から或る意味「隔離」されているエリアでアル。
遊郭(ゆうかく)は「くるわ」とも呼ばれるが、郭(くるわ)とは「囲い」の事だ。江戸吉原同様に大門を正面にして四方グルリと高い塀で囲われており、その中だけで遊ぶから『遊郭』なのでアル。
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この「嘆きの壁」の脇の階段を下ると其処が飛田新地なのだ。
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こんな風に小さな料亭が200軒程軒を連ねて密集している処だが、古き良き時代の遊郭の面影をそのまま残している店が在る。
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『鯛よし 百番』は、浮世から離れた世界でひとときを過ごす為に建てられた大正時代の遊郭だ。此処だけは、健全に食事を楽しめる料亭として残っているが、昔は大勢の遊女達が二階の回廊からお客を求めていたのだろうネ。
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昼間はこんなに大人しい門構えだが陽が暮れると豪華絢爛な明かりが灯り、改築前の目黒雅叙園よろしく摩訶不思議な竜宮城の世界となる。

また、店内は日光東照宮を模した造りになっており、眠り猫や陽明門まで有るのだ。味方によってはグロテスク過ぎる程の美の追求なのだが、これが浮世離れと云うものなのだ。先日、僕の友人でもある着物スタイリスト、如月まみさんが『鯛よし 百番』を訪れたそうで、ブログで店内を紹介していたので、是非ご覧あれ。

ぐるなびにも出ており、値段も手頃だし家族でも行けるので、大阪に行ったら一度は訪れてもらいたいものだ。

この辺りは、間違ってもデジカメ持ってうろうろしちゃいけないヨ。此処はお上も黙認しているような非日常空間な訳であり、世間に顔を知られたくない方々も大勢居る地域なのだから。だから、カメラ片手にバシャバシャ撮っていたら、何処からともなく怖い筋の方達がやってきてカメラ持っていかれちゃうからネ。

山王プラザの通りが「青春通り」と呼ばれ20代の若いコが多いエリア。
先ほどの『鯛よし百番』を真っ直ぐ過ぎた通りがナント「妖怪通り」と呼ばれているが、別にバケモノが居る訳じゃぁない。ただ、年配の女性たちが多い店が立ち並んでいるのだ。もう一本隣に「妖怪通り2」なんてのも在る。だが、案外注意して眺めて行くとイイ女性も居るのだ。若いコはちょっとネ、なんて向きにはオススメかもしれないナ。
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西成地区の交番は、皆こんな風に窓と云う窓全部に金網が張ってある。此処はいつ暴動が起きるか判らないディープな地区だからだ。

で、僕は青春通りで一休み。むふふ、白昼夢の三十分だった。

外へ出ると良い感じの夕暮れ時になっていた。西成地区から動物園前まで行く間の商店街には、これまたディープな酒場が沢山在る。
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『丸一屋』のカウンターで一杯引っかけて、ジャンジャン横丁へ。此処は串かつ屋が多く、一番人気は『八重勝』で常に行列が出来ている。
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だが、僕は隣の『てんぐ』が好きなのだ。
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此処の「どて焼き」が最高に美味い。
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どてと串かつをアテに軽く呑んで、その先の『ホルモン道場』へ。
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大阪に来たら、此処にこなくちゃ、ってなくらいに大好きな店でアル。
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親爺さんが鉄板で焼くホルモンの美味いのなんの、南野陽子。

さっき使ったスタミナが見事に蘇るのだナ。ぐふふ。
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この界隈に来ると血が騒ぐと云うか、妙に興奮するのだ。どの店に入っても、安い、美味い、居心地良しと三拍子揃っているのだからサ。
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ジャンジャン横丁を抜けると通天閣の灯りが見える。新世界のソウルフード『丸徳』も良いゾ。
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此処のホルモンうどんは、東京八広の『丸好酒場』で食べるホルモンうどんと双璧だナ。
元々、沖縄料理がメインだったので、チラガースモークとか沖縄料理も美味い。そして酒はやっぱり琉球泡盛なのだナ、此処は。
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ちょい先に在る『ぎふや食堂』もイイ店なのだ。
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冷蔵ケースから好きなもの出してビールを一杯なんて、最高だ。親爺さんの作る豚汁もウマい。今回は寄れなかったが、次回は真っ先に来ようかナ。

さぁ、電車の時間まであと少し。新地まで出て『北サンボア』へ。
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此処は今年で創業60年を迎えた老舗のバーだ。
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ハイボールをクィっと呑んで東京へ戻ろう。

新幹線の中で、ひと際臭いを漂わせ、『蓬莱』の豚まんを頬張った。
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う〜ん、たまらんね、この味は。

夜23時過ぎ、渋谷から代官山『アマランスラウンジ』へと直行。
学生時代の仲間たちと待ち合わせだ。店に着くと皆既に集まっていたが、パーティ帰りのジャスミンや湯山玲子さんにも逢う事が出来て随分と愉しい夜になった。

そう云えば、湯山さんのブログ『湯山温泉』のタイトルバックの画像は、立石『愛知屋』の看板猫だネ。

彼女はいつもパワフルだが、今月は宮真貴リサイタルvol.3 『Beautiful People』の企画プロデュースでとても忙しい日々を送っているそうだ。

夜も深くなって来たところで、場所を『シンガポールナイト』に移し、酩酊したのであった。
by cafegent | 2009-09-02 17:00 | 飲み歩き