久しぶりの大阪昼酒で白昼夢を見た。
2009年 09月 02日
一足先に秋を味わおうと、新秋刀魚の塩焼きを戴いた。カウンターの目の前では、板前さんが秋刀魚の両面に細かく包丁を入れる。こうする事で中までしっかりと火が通りふっくらと焼き上がるのだネ。
最後に出て来る白玉汁粉が、嬉しい限り。
月の夜や石にでて鳴くきりぎりす
加賀千代の詠んだ一句だが、夕べは美しい月夜だった。帰り道の路地では虫たちがリンリンと啼いていた。数日前の台風の夜、不動前を歩いていると何処からか金木犀(キンモクセイ)の匂いが流れて来た。雨上がりのせいか、香りが一層強くなって鼻を突いたが、ハテ?花が何処で咲いているのか暗くて判らなかった。もう秋が近づいて来たって事だネ。
さて、先週、仕事で大阪へ出掛けて来た。
仕事は午後の三時に終わったので、「平日昼酒」へと繰り出した。先ずは、地下鉄御堂筋線に乗って天王寺へ。此処に来るといつも大塚まさじの唄う「天王寺思い出通り」が頭に浮かぶ。僕が大阪に憧れたきっかけみたいな歌だからだナ。
駅から歩いて数分、時が止まったかのように佇む一軒の酒場『明治屋』はもう暖簾が下がっていた。
ガラリと戸を開けると、愛想の良い声で「いらっしゃ〜い」と、姐さんが入口近くのカウンターを勧めてくれた。
シャツの下から茹だる様な湯気が出ており、思わず黒ビールを頼んだ。
冷たいビールで仕事疲れを吹き飛ばし、大好きな「きずし」を頂いた。
生鮨とは、いわゆるシメサバだが、鰆なんかでも同様にきずしと呼ぶ。
そして、これにはやはり日本酒だネ。キリンスタウトをチェイサーに変え、白岳仙吟生酒を頂いた。
続いて、明治屋お馴染みのシュウマイを頼む。
酒は菊正宗を「ひや」で。冷やは冷酒と違い常温の事ネ。
心地良く酔った所で、『明治屋』を後にして阿倍野の交差点を右へ。
市営住宅の棟を曲がると其処から飛田新地に出る。東京の吉原遊郭が無くなった後、古き良き遊郭の匂いを色濃く残しているのは、此処飛田だけだネ。
遊郭(ゆうかく)は「くるわ」とも呼ばれるが、郭(くるわ)とは「囲い」の事だ。江戸吉原同様に大門を正面にして四方グルリと高い塀で囲われており、その中だけで遊ぶから『遊郭』なのでアル。
また、店内は日光東照宮を模した造りになっており、眠り猫や陽明門まで有るのだ。味方によってはグロテスク過ぎる程の美の追求なのだが、これが浮世離れと云うものなのだ。先日、僕の友人でもある着物スタイリスト、如月まみさんが『鯛よし 百番』を訪れたそうで、ブログで店内を紹介していたので、是非ご覧あれ。
ぐるなびにも出ており、値段も手頃だし家族でも行けるので、大阪に行ったら一度は訪れてもらいたいものだ。
この辺りは、間違ってもデジカメ持ってうろうろしちゃいけないヨ。此処はお上も黙認しているような非日常空間な訳であり、世間に顔を知られたくない方々も大勢居る地域なのだから。だから、カメラ片手にバシャバシャ撮っていたら、何処からともなく怖い筋の方達がやってきてカメラ持っていかれちゃうからネ。
山王プラザの通りが「青春通り」と呼ばれ20代の若いコが多いエリア。
先ほどの『鯛よし百番』を真っ直ぐ過ぎた通りがナント「妖怪通り」と呼ばれているが、別にバケモノが居る訳じゃぁない。ただ、年配の女性たちが多い店が立ち並んでいるのだ。もう一本隣に「妖怪通り2」なんてのも在る。だが、案外注意して眺めて行くとイイ女性も居るのだ。若いコはちょっとネ、なんて向きにはオススメかもしれないナ。
で、僕は青春通りで一休み。むふふ、白昼夢の三十分だった。
外へ出ると良い感じの夕暮れ時になっていた。西成地区から動物園前まで行く間の商店街には、これまたディープな酒場が沢山在る。
さっき使ったスタミナが見事に蘇るのだナ。ぐふふ。
元々、沖縄料理がメインだったので、チラガースモークとか沖縄料理も美味い。そして酒はやっぱり琉球泡盛なのだナ、此処は。
さぁ、電車の時間まであと少し。新地まで出て『北サンボア』へ。
新幹線の中で、ひと際臭いを漂わせ、『蓬莱』の豚まんを頬張った。
夜23時過ぎ、渋谷から代官山『アマランスラウンジ』へと直行。
学生時代の仲間たちと待ち合わせだ。店に着くと皆既に集まっていたが、パーティ帰りのジャスミンや湯山玲子さんにも逢う事が出来て随分と愉しい夜になった。
そう云えば、湯山さんのブログ『湯山温泉』のタイトルバックの画像は、立石『愛知屋』の看板猫だネ。
彼女はいつもパワフルだが、今月は宮真貴リサイタルvol.3 『Beautiful People』の企画プロデュースでとても忙しい日々を送っているそうだ。
夜も深くなって来たところで、場所を『シンガポールナイト』に移し、酩酊したのであった。