東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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サツマ芋に感謝して、二連チャンの『大坂屋』で憩う。

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僕の仕事場は目黒大鳥神社の近くに在るのだが、今日は朝から沢山の人が不動前の方から歩いてくるのだ。28日だから目黒不動尊の月の縁日だナ、と思っていたら「甘藷まつり」が催されていたからだった。

デザイナーと打ち合わせが終わり、二人で昼飯にした。少し歩かせてしまったが、不動前駅の近く、『piano piano』で好物のベーコンとトマトのきのこソースを食べた。
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相変わらずの美味しさに顔が緩んだ。デザイナーは電車で神保町に出ると云うので、僕は散歩がてら目黒不動尊まで歩いてみた。
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大勢の方がお詣りに来ているネ。
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水掛け不動明王にも沢山の方がお詣りしていた。
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「甘藷」とは、サツマ芋の事でアル。此処は江戸時代の蘭学者で、関東地方にサツマ芋を普及させ、「天明の大飢饉」で沢山の人々の命を救った事で知られている。
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庶民からも「甘藷先生」と称され、此処目黒不動の瀧泉寺に墓がある。
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今年の春に『兵六』の仲間たちと一緒に目黒界隈を散歩した。その時も青木昆陽先生の墓を詣ったが、新しい記念碑が建っていた。
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『甘藷先生生誕三百年報恩塔」と記されていた。上の梵天文字は何て書いてあるのかまるで判らなかったナ。

日頃から『兵六』で呑ませて頂いている薩摩無双だって、甘藷先生なくしては呑めなかった芋焼酎なのだネ。感謝!

石段を下りる途中に秋らしいホトトギスの花が咲いていた。
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柿の実も立派に育ってるネ。
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ひよどりたちもたわわに実った柿を狙ってた。

さて、今週の月曜日は台風の様な雨風が吹き荒れた。夕方外に出ると傘が茶碗の様に反り返ってしまい、まるで役立たずになった。

こんな天気なら、いつも混んでいる店もスッと入れるだろう、と門前仲町へと移動した。『大坂屋』の戸をガラリと明けると煮込み鍋の前は空いていた。先客が三人おり、間に入れて頂きぬる燗をお願いした。煮込みは先ず五本頂いた。

此処のシロは脂がたっぷりと乗ったマルチョウなども入っている。
これに、歯ごたえあるナンコツ、柔らかいフワと、実にバランスが良いのだナ。
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あぁ、この卵スープにシロを混ぜれば幸せになれるのだ。

右隣りの二人が建築談義に花を咲かせていた。二人とも70歳前後なのだが、格好も話の内容も僕の世代となんら変わらない。コルビュジェの建築話からマイケル・グレイブスに飛び、果ては大坂屋で使っているデュラレックスのグラスはF.O.B.コープの益永みつ枝さんだ、なんて話まで出てくるのだ。

益永みつ枝さんは僕が80年代、六本木の輸入雑貨店の仕入れを担当していた頃にお世話になった。その当時、浜野商品研究所と云う都市空間プロデュース会社がAXISと云うビルを創り、その直営店の雑貨店で扱う商品のセレクトも最初みつ枝さんが手掛けた。

恵比寿の『coci』や東京ミッドタウンの『yao』のオーナーで、僕が今でも大変お世話になっている楠林さんも、元浜研出身で開店当時のF.O.B.コープを手伝っていたっけ。皆、凄いよネ。僕なんて生涯追いつかないもんナ。

AXISビルの総合プロデュース・ワークで81年度の毎日デザイン賞を受賞した代表の浜野安宏氏は、正に時代の寵児だったものだ。その頃の話をしながら楽しい酒を呑んだ。

浜野さんと同い年だと云う方のお名前がシイネさんと教えて頂いた。
「椎茸のシイに根っこのネですよ」と聞くと、ハテ何処かで聞いた名前だナ、と考えた。そうだ、数日前に朝日新聞の書評で見た『平凡パンチの三島由紀夫』の著者じゃないか。と、その話題になると案の定ビンゴであった。
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ナント、『大坂屋』のカウンターの隅でのんびり酒を嗜んでた御仁は、雑誌「popeye」や「hanako」などマガジンハウスの人気誌の編集長をしていた椎根和(やまと)さんだったのだ。

この本は、二年程前に新潮社から出版されたのだが、ようやく文庫本になったので僕も買ったのだった。この『平凡パンチの三島由紀夫』を読むと、僕のひと回り上の先達らが過ごした時代のなんて自由奔放だったことか、とちょいと悔しくなるのだナ。
本の帯についたキャッチコピーは、「まだ誰も知らない、本当のミシマ」だった。
若者向け週刊誌「平凡パンチ」を通して見た素顔の三島由紀夫を綴っているノンフィクションなのだが、実は三島由紀夫と云う一人のスーパースターと編集者として出会い、あの割腹自決事件までの三年間をともにした椎根和氏の痛快青春小説なのだナ。読み始めから面白くて、一気に読んでしまった。

社会に出て間もない頃、白金台の都営住宅に住んで居たマガジンハウスの編集者、岩瀬充徳さんの奥さんに随分と仲良くして頂いた。ホームパーティなんかには今野雄二さんなども来ていたっけナ。
椎根さんの本の中には、宇野亜喜良さんや長沢節さんなど懐かしい名前が沢山登場しているし、70年代に藤純子に憧れた自分を懐かしく思い出した。
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さて、昨日は立石にてちょいと呑み、また門前仲町へと向かった。
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午後8時を回っていたので、夕方組の方々が引けた頃合いだった。
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カウンターに座り、サッポロ赤星を戴いた。
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煮込みを数本戴いて、まったりとした時間を過ごしていたら、ガラリと戸が開いた。「すいません、三人なんですけど..」と閉店間際に入って来たのはナント酒朋クマちゃんだった。9時には暖簾が仕舞われると云うのに、流石だ。

『大坂屋』のお手洗いに可憐な山茶花が生けてあった。
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女将さんに伺ったら、玄関脇に咲いたのだそうだ。そして、山茶花の隣りには二階にまで伸びたゴーヤが実をつけていると聞いた。店内はもう僕らだけだったので、女将さんは「ちょっと待っててネ」とヒョイと外に出ていった。
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そして、小さなゴーヤの実を取ってきてくれたのだ。
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「コレ、塩揉みが美味しいのヨ」とその場でゴーヤの塩もみを作ってくれて僕らに振る舞ってくれたのだ。
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ゴーヤらしい苦みと旨味が好い塩梅で、追加した日本酒もクイクイと進んだナ。

いい気になって呑み続けていたら9時半を過ぎてしまった。いやぁ、申し訳ないデス。女将さんに椎根さんの本を紹介して、「次回持ってくるからネ」と約束をした。
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東京煮込み二連発は、実に愉しく酔えたのだったナ。

皆とは此処で別れ、僕は武蔵小山へと向かった。

駅近くの小径を入ってスグの処に在る居酒屋『なな福』は、家庭的な店でちょいと小腹が空いた時に重宝する。それにしても、武蔵小山と云うエリアは都心からスグだと云うのに値段設定がスバラシク安いのだ。
他の店に入っても、大抵満足出来るのが嬉しい限り。
此処は、ホイス直系の『焼き肉 みやこや』のご主人もいらっしゃるそうだが、同業に愛される店ってのは、イイネ。
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突き出しの飛竜頭が出汁をたんまりと吸って、むふふの旨さ。
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そして、揚げたてカキフライだ。此処はほとんどのメニューが300円から400円台であり、黒板メニューだって500円前後でアル。

〆の炭水化物は「えびとニラの塩やきそば」を戴いた。
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コレだって500円なのだ。あっ、しまった。高血圧だから塩分控えなくちゃいけなかった。参ったナ、美味いからペロリと平らげてしまった。

秋の夜長、BSで録画をした欧州モルトウィスキーの旅を観た。常盤貴子のナレーションも耳に心地良く、さながら自分がスコットランドに旅をした気分に浸れた。
てな訳で、1991年に樽詰めされたアイラ地方のタリスカーを呑んだ。
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口の中にアイラ島を囲む海風が流れてきそうだナ。シングルモルトの芳醇な味に何故か抹茶風味の丹波黒豆がマッチした。

こうして、また僕はソファで朝を迎えたのであった。トホホ。

さて、タリスカーはアイラじゃなくて、アイランズのスカイ島の酒だった。
そして、こんなコメントを通りすがりさんから頂戴した。
by cafegent | 2009-10-28 16:59 | 飲み歩き