東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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晩秋の夕焼けに遠い日の想い出が浮かんだ。

夕暮れの冷たい風が冬の匂いを運んで来た。窓の外では、ビルとビルの狭間からこれでもかと悪あがきをする様に太陽が赤く燃えている。
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前を横切る鳥たちは逆光のうちに黒々としていた。さっきまで大空高く照っていた太陽は数分も経たずに見えなくなり、残った雲だけが葡萄色に染まってる。

ずっと夕日を眺めていたから、瞼に赤く残像が残ってる。目を閉じると二つのビルのシルエットだけがくっきりと映り、それが無くなるまでじっとそのまま風の中に立つ。

子供の頃、サイダーのシュワシュワした炭酸の輝きに魅入ってずっと瓶の中を覗いていた事が有る。片目を瞑り、瓶の中で弾ける気泡を眺めているとまるで万華鏡を廻しているようだった。そのうちにサイダーを飲んでいた事を思い出すのだが、そのまま瓶を持ち上げてしまい、目の中にサイダーが流れ出て来たっけ。忘れてしまった遠い記憶は沢山あるけれど、何故かこんなクダラナイ事ばかり覚えているのだナ。

     豆腐屋の喇叭(ラッパ)追いかけ茜空

近所のワインバーに立寄り、ボージョレ・ヌーヴォーを戴いた。
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生ハムをアテにワインが進む。一杯目に飲んだヌーヴォーよりも二杯目のボージョレ・ヴィラージュの方が僕の好みだったかナ。夜のスタートには軽いヌーヴォーが丁度良い。
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ニューヨーカー、とりわけウォール街辺りで働く金融マン連中は毎日が関ヶ原の如く戦っているので、仕事が終わった後はバーへと直行し一日の出来事を綺麗サッパリと忘れる為にハードリカーを口にする。
ウィスキーやジン、ヴォッカをそのままストレートで煽ったんじゃ荒くれ武士のままの自分を拭い去れないから、馴染みのバーテンダーがコ洒落たカクテルグラスに酒を注いでリキュールなんかを振りかけた真似をして貰うのだ。そして、早々にガツンと己を覚醒させて夜の帳へと身を任せるのでアル。

そんな生活に縁の無い僕は、強い酒の前に軽めのワインか何かで十分。胃袋に酒の味を思い出させてから、生の焼酎へと移るのだナ。こうやって自分のカラダをゴマカしながら深酒する訳だ。
        ◇        ◇        ◇
目黒不動尊の近くでは、もう山茶花が咲いていた。
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暦ではもう立冬だが、日中はまだコートも要らない程の陽気だ。

さて、夕べは練馬文化センターに落語を聴きにいった。
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此処は駅を出てスグと云うロケーションが便利なので、移動が苦にならない。練馬文化センター恒例となっている昔昔亭桃太郎師匠の主宰する落語会でアル。

丁度一年前には鶴瓶師との競演も催された。あの時は桃太郎師が十八番「ぜんざい公社」と鶴瓶師は「青木先生」を演じた。「ぜんざい公社」は古典の域に達していたナ。

そして、今回は柳家喬太郎師と滝川鯉昇師との三人会だ。前座の滝川鯉ちゃの「新聞記事」は、まぁ無難に聴けた。そして桃太郎師匠が登場したのだが、なんと「らくだ」を演じたのだ。丁度先週、立川志らく師でも「らくだ」を聴いたが、これはもう完全に別モノと云った感じだったかナ。

昔昔亭桃太郎師匠はその存在感だけで、客を掴んでしまう。その風貌も語り口も赤塚不二夫にそっくりで、何を演じても可笑しいのだ。何でも金曜の落語会が権太楼師匠とさん喬師匠との長講三人の会らしく、そこで「らくだ」を演るために今回ネタおろしとなったそうだ。
本人も「この歳になって、こんな長講一席を覚えるたぁ思わなかった」なんて語っていたけれど、途中で切ってしまうし相変わらず桃太郎節全開でしたナ。

柳家喬太郎師は「幇間腹」を演じた。この噺も先週の立川一門会にて生志師で聴いたが、続けて違う落語家で聴くのも実に愉しい。それぞれの持ち味が有って、あぁこの人でアレを聴いてみたいなぁ、と思うのが尚楽しいのでアル。

最後に登場した滝川鯉昇師は「二番煎じ」を演じた。この噺は今は亡き八代目三笑亭可楽師匠が十八番にしていたネタだね。燗酒と猪鍋が出て来て、登場人物それぞれの飲みっぷりや食べ方の表現が見どころだね。冬が近づく今の時季にぴったりの一席だった。
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池袋からタイミング良く湘南新宿ラインが入って来たので、恵比寿までツーっと行く事が出来た。
恵比寿駅交番前では毎年恒例の巨大クリスマスツリーが輝いていた。
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ガーデンプレイスは今年もバカラのシャンデリアが点灯したのかな?

『縄のれん』は、溢れんばかりの人で賑わっていた。鳩山首相が来訪してから新客が増えたのかナ。一瞬たじろいだが、カウンターの一番奥に入る事が出来た。僕は此処のハイボールが大好きでアル。
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都心では一番旨い焼酎ハイボールだと確信しているのだ。

ハラミとミノにシロを戴いた。むふふの美味さだネ。
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レバが品切れとの事だったがお母さんがステーキ用のレバーを切って串を作ってくれた。嬉しいねぇ。
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三杯目のハイボールと共に縄のれん自慢の一品、ナンコツを戴いた。
此処のは、串じゃないのだヨ。見よ、このカタマリを。
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豚の喉のあたりの軟骨だそうだが、これが歯ごたえ十分で「コリコリ好き」にはたまらない味なのだヨ。最後はアブラを戴いてご馳走さま。

夕べはこれにて終了し、「深夜食堂」を観に帰ったのだった。
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家路の途中、こんな凄いクリスマス・イルミネーションを見つけた。
それにしても可成り気合い入ってるネ。

帰り道コンビニエンスストア限定アサヒの限定復刻「アサヒゴールド」を買って来た。コレ、昭和33年発売で我が国初の缶ビールなのだ。
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缶のデザインは「口紅から機関車まで」の巨匠レイモンド・ローウィ作である。味の方も最近のビールよりも深みが有り、サッポロ赤星に負けず劣らず旨かった。これで、素敵な家酒を愉しんだのサ。
by cafegent | 2009-11-26 16:45 | ひとりごと