朝、四十雀(シジュウカラ)の啼く声を聞いた。目を細めて、木の上を見ると一羽見つける事が出来た。
こんな時、一眼レフが欲しくなるなぁ。
今日は四谷で打ち合わせが終わり、そのまま地下鉄に乗って不動前まで出た。目黒の不動前駅から五百羅漢まで行く途中に『蛸薬師』が在る。
蛸薬師に在る龍の手水舍の前にとっても可愛い箱庭が設えてあった。
ホラ、小さな鶴まで居るのだヨ。
その隣りの手打ち蕎麦屋『海老民』は好きな蕎麦屋のひとつでアル。
辛味大根の時季になると決まって「辛味大根そば」を戴く。新そばの風味を愉しみながら、大根の辛さで舌を楽しむのが大好きなのだ。
本日の昼飯は、「山葵おろしそば」を戴いた。
これもまた香りが良い蕎麦なのだ。
おろしたてのワサビってのは、日本酒のアテにもイイ。少しづつ舐めては、酒を呑む。あぁ、これが夕刻だったら熱燗でもつけるんだがなぁ。
サクっと蕎麦を食べ、目黒不動尊『瀧泉寺』へと向かう。そう、今日は節分、午後2時から節分の豆まき式が行われるからだ。
此処は成田山と違って横綱や芸能人などは来ないが、それでも一陽来復を願って、大勢の人々が福を貰いに集まっていた。
風は冷たいが、空は気持ちが良い程に晴れた。
地元の鳶の方々だろうか、きっと節分式の舞台を設営してくれたのだろうネ。感謝。
笛や笙の音が青空高くに響き渡ると、僧侶たちが登場し、それに続き多分地元の名士や区議だろう方々が節分の衣装を纏って舞台に立った。
そして、一斉にお菓子や福銭、福豆などを蒔いた。
皆両手を挙げて福を掴もうとしていたが、賢い方は帽子やトートバッグを逆さに持ってキャッチしていたナ。
さぁ、これで今年も無病息災か。しかし、新年に初詣で願い、正月7日の七草粥でも無病息災を祈願し、1月18日の亡者送りでも除災招福を祈願した。ハテ、こんなに沢山願ってしまって良いのだろうか。
一仕事終えた親方たちの後ろ姿が鯔背(いなせ)だね。
目黒不動尊を出た処で、古い友人の尹(ユン)君に会った。最近は電話でしか話をしていなかったから元気でなによりだ。僕が下北沢でバー『アルゴンキン』をやっていた頃、良く来てくれた友人たちの一人だ。
『五百羅漢』でも豆まきが有るみたいで、沢山人が集まっていた。
その近くでは盆栽の梅が綺麗な紅白の花を咲かせていた。
春はもう、すぐそこまで来ているのだナ。
◇ ◇ ◇
さて、昨日は午後7時頃に立石『宇ち多゛』へ伺った。
ビールを呑んで酒朋ビリーを待ち、梅割りへ。
閉店間際はもつ焼きの種類は少なくなるが、穏やかな時間を過ごす事が出来るのだ。
程よく呑んで、二軒目へ。青砥経由で鶯谷駅へと向かう。
呑んだくれオヤジはもう酔い心地だ。
『ささのや』の煙りにも惹かれたが、二人は一路『鍵屋』を目指した。
ガラリと戸を開けるとカウンターも座敷も賑わっていたが、ちょうど燗付け器の前に座る事が出来た。
外は冷えるが、此処は温かい。ニヤっ子、じゃない「煮奴」とうなぎの「くりから焼き」を戴いた。酒はお馴染み桜正宗の熱燗でアル。
このお通しの煮豆も酒のアテに合うのだナ。
店主の清水さんの手が年季の入った燗付け器から徳利を取り出す。
長年の経験から徳利を触っただけで熱燗の温度加減が判るのだと云う。そして、甘口の桜正宗が善い塩梅の燗酒に仕上がるのだ。
「くりから焼き」も丁寧に焼いてくれる。
「くりから」とは、剣に巻き付く大蛇の「倶利伽藍龍王」の事で、その串の姿がそれに似ているから、こう呼ばれているのだ。
大阪の『明治屋』、京都の『赤垣屋』、そして東京の『鍵屋』。何れも僕の大好きな居酒屋だ。鍵屋は本当に「東京の酒場」って云う佇まいが良いのだ。酒も肴も古き良き東京の味だ。
おや、いつの間にか僕らだけになっていたネ。
熱燗をもう一本戴き、店を出た。夕べは家路に着くまでポカポカと温かく帰れたナ。