東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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『簑笠庵』に咲いた桜草一輪にオジサンはときめくのだ。

今の季節、梅の花が咲き、桜も芽吹く準備をし出している。先日も土手沿いを歩いていたら桜草が咲いていた。自生していたのだが、誰かが植えた物が咲き続けているのだろうか。
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我が家でも鉢で育てきれない桜草は廻りの土に植えている。

   我国は草もさくらを咲きにけり

僕の大好きな一茶の詠んだ句だ。桜の花が舞う大地の足元にも小さな桜が咲き誇る。百花繚乱の桜と可憐な桜草は、どちらも日本人の心に響くのだナ。

   頬染めて酒に酔うたか桜草

コレは以前、僕が詠んだ句だが、この句を見て永井荷風の句を教えてくれた友人が居た。

   葡萄酒の色にさきけり桜草

素晴らしいね。桜草は千以上もの種類が有り、姿や色も皆違うし、それぞれの雰囲気を表した名前もまた素晴らしいのだ。
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真っ白な花の「新雪」や僕が一句詠んだ時の「吹上桜」なども良いネーミングだ。
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酔った頬の色でしょ、コレ。

荷風先生は、きっとこんな桜草を眺めて詠んだのだろうか。
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葡萄酒の色ならば、これが「竜田姫」
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こっちは、「緋の袴」
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それに、この「明烏」あたりかナ。
        ◇        ◇        ◇
さて、週末いつもの京成立石で朝酒を愉しんだ。
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早々に切り上げて、もう一軒『えびすや食堂』で呑む。

皆と別れ電車に乗ったら、無性に鰻が食べたくなり慈恵医大病院近くの『手の字 本丸』へと向かった。
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此処は江戸から続く老舗だが、安くて美味いのが嬉しい店でアル。
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これで1,500円なのだから、納得の「ぐふふ」なのだ。

銭湯でひとっ風呂浴びて、昼間の酒を抜いた。
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読みかけの本を詠み終えて、夜は田原町の居酒屋『簑笠庵(さりゅうあん)』へお邪魔した。

店主の山本さんが新作の「温野菜のアンチョビソース和え」を作ってくれたが、これがまた格別酒に合うのだ。
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出汁の味が絶妙で人参の甘さをグっと引き出しており、これにアンチョヴィの塩っぱさが絡み合い箸が止まらなくなる。またまた、名物を作っちゃったネ。

カウンターでのんびりと酒を呑んでたら、ガラリと戸が開いた。酒場で良く合う酒朋フルちゃんが友人を連れてやって来た。
真希子さんは僕も一度神保町の『銀漢亭』でお逢いした事があるが、写真を撮っている方らしい。
また、彼女に写真を習っていたと云うトクちゃんは、『兵六』を始め、今ではすっかり僕らの酒仲間になっているのだナ。トクちゃんを神保町の酒場に連れて来たのが、何を隠そう真希子さんであった。

ただ、僕は余りお話をした事がなかったので、この晩の簑笠庵でやっと打ち解けて酒が呑めた。
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心弾むと云うか、何つぅか、彼女の笑顔や物腰、それに会話が実に素敵なのだナ。子供じゃないので、チャーミングとか可愛いなんて表現は野暮だが、盃を空ける度に頬が赤く染まり出し、まるでさっきの句の様じゃないか。うーん、この色は、きっと桜草の「明烏」の色だナ。
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「恋は遠い日の花火じゃない」なんてコピーを思い出したが、オジサンだって心ときめくのだ。どんどん、ときめいてイイのだ。

しかし、百花繚乱に咲き誇り見事に散る桜の花が「恋」ならば、この場合チト違う。今はパッと散る「恋」よりも、永く楽しく酒を酌み交わせる「友」が良いのだネ。そう、野に咲く桜草の様にね。

さて、今日は門前仲町にでも繰り出そうかナ。
by cafegent | 2010-02-23 17:04 | 飲み歩き