東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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花の香りを求めて、福島まで小さな旅に出た。

朝6時15分、けたたましい目覚まし時計の音で強制的に起きた。

まだ前日の酒が残っていると云うのに、大きなベルの音は電動ドリルの様にグルグルと僕のこめかみ辺りに穴を開けているかの様だ。
イカン、頭が割れそうに痛い。開いた穴から脳味噌と一緒に花見の記憶さえ溢れ出てしまいそうな感覚だ。

まだ、頭が覚醒しているのだナ。朦朧(もうろう)としていながらも躯は勝手にベッドから這い出てバスルームへと進む。とりあえず、バスタブに熱い湯を貯めてしまえばシメたもんだ。
テレビのスウィッチを入れ、朝のニュースを聴いた。

熱い湯に浸かりながら、手を伸ばしシャワーを出す。お湯になるまでの少しの間は冷たいまま勢いよく水が出る。シャワーヘッドの無数の小さな穴から飛び出た水飛沫が顔面を直撃し、云わば無理矢理二日酔いの頭を覚ますのだ。

躯からは汗と共にアルコールが抜け出て行くのが判る。

我が家は浴室とキッチンが行き来できるので、深煎りの珈琲をドリップしつつ、ドライヤーで髪を乾かすのだ。変に器用なんだな、俺は。
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さぁ、漸くいつもの朝を迎える事が出来た。

この日は、今年初めて土曜立石朝酒を休むのだ。
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外も気持ちよく晴れている。青春18切符をポケットに入れ、家を出た。いざ、気ままな旅へ出発だ。

上野から快速ラビット号で宇都宮に出ようと思ったが、目黒からの山手線は12駅も有るのだネ。それならば、恵比寿から湘南新宿ラインのグリーン車に乗る方が一足早く旅気分に浸れるってもんだ。
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8時丁度の電車に乗り込み、真っ直ぐ宇都宮を目指す。普通車両には通勤の方々が多いから、ソコで酒は呑めないものナ。

赤羽を過ぎた頃にはすっかり旅気分でアル。
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女性乗務員(グリーンアテンダントと呼ぶらしいネ)を呼び止め、缶ビールを購入。迎え酒はたまらんナ。
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ビール片手に仙台の酒場コースを思案中なり。

宇都宮から東北本線に乗り換え黒磯へ。うーん、いつもなら京成立石駅に着いた頃か。
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黒磯駅で35分程時間が有ったので、駅前周辺を散策した。
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此処は那須塩原温泉郷への入口だネ。
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渋い佇まいの酒屋や和菓子屋が在った。
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時間が有れば、お茶菓子でも食べたいのだがナ。
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古い石造りは元黒磯銀行の建物で、今はカフェらしい。
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威風堂々とした姿に歴史を感じるネ。
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何故か酒屋のウィンドウには映画「スーパー巨人(ジャイアンツ)」の額装ポスターが飾られている。ハテ?

黒磯から郡山経由で約2時間、福島駅に到着だ。
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駅からバスに乗り、花見山公園まで行く事にした。
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此処は、一個人の阿部一郎さんが山を開墾し花木を植え続け、見事に花が咲き誇る山にしていった私有地なのだが、多くの観覧希望者の願いを酌んで、昭和34年に『花見山公園』と名付け市民に開放したそうだ。
凄いねぇ、寛大な心の持ち主なのだネ。
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此処に咲く花は花屋等に出荷する商品として栽培されているので、山全体が畑な訳だ。

それ故、公園の下から山頂まで至る箇所に市民ボランティアのガイドさんたちが丁寧に案内をしてくれるのだ。

写真家の故・秋山正太郎氏は、1979年に初めて此処を訪れた際に「福島に桃源郷あり」と語り、全国にその名が広まったそうだ。ガイドさん達は、此処のいろんなエピソードを教えてくれるので、約一時間の山巡りも実に楽しい。
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あと一ヶ月もすれば桜が満開になる時季だが、今は梅、レンギョウ、オカメ桜、サンシュ、ロウバイ、ヒョウガミズキなどが綺麗な花を咲かしていた。
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レンギョウの黄色い花が青空に映えるネ。見事だ。
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この緋乙女椿も見事な形に咲いているナ。
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小さい花を付けているのはヒサカキだ。
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これは、可憐に咲く十月桜。四月に咲くのに十月桜とは是如何に。
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こちらの濃いピンクはオカメ桜だそうだ。
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小さな池にはガマ親分が睨みを効かせてた。
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卵を守ってるのだろうか。
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凄いね、此処にも春が近づいてるネ。

元禄二年の春、俳人・松尾芭蕉は隅田川近くの芭蕉庵を出て、栃木、福島、宮城、山形と旅に出た。ご存知、「おくのほそ道」だネ。
那須の蘆野(芦野)の里を訪れた芭蕉が詠んだ句がある。

         田一枚植ゑて立ち去る柳かな
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先日、竹橋の「小野竹喬展」で観た『奥の細道句抄絵』の中で、竹喬画伯はこの句を題材に田に映る青い空と雲を描いていた。
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さながら、こんな光景を眺め芭蕉の句を表現したのだろうネ。

旅の想い出とは時として花や草木の香りで思い出す事がある。
今回の小旅行もそんな記憶のひとつになって、時々その花の匂いを探してみたいものだナ。

さぁ、春の花を満喫した後は、酒を求めて仙台市へと急ぐのであった。
by cafegent | 2010-04-06 14:28 | 飲み歩き