花の香りを求めて、福島まで小さな旅に出た。
2010年 04月 06日
まだ前日の酒が残っていると云うのに、大きなベルの音は電動ドリルの様にグルグルと僕のこめかみ辺りに穴を開けているかの様だ。
イカン、頭が割れそうに痛い。開いた穴から脳味噌と一緒に花見の記憶さえ溢れ出てしまいそうな感覚だ。
まだ、頭が覚醒しているのだナ。朦朧(もうろう)としていながらも躯は勝手にベッドから這い出てバスルームへと進む。とりあえず、バスタブに熱い湯を貯めてしまえばシメたもんだ。
テレビのスウィッチを入れ、朝のニュースを聴いた。
熱い湯に浸かりながら、手を伸ばしシャワーを出す。お湯になるまでの少しの間は冷たいまま勢いよく水が出る。シャワーヘッドの無数の小さな穴から飛び出た水飛沫が顔面を直撃し、云わば無理矢理二日酔いの頭を覚ますのだ。
躯からは汗と共にアルコールが抜け出て行くのが判る。
我が家は浴室とキッチンが行き来できるので、深煎りの珈琲をドリップしつつ、ドライヤーで髪を乾かすのだ。変に器用なんだな、俺は。
この日は、今年初めて土曜立石朝酒を休むのだ。
上野から快速ラビット号で宇都宮に出ようと思ったが、目黒からの山手線は12駅も有るのだネ。それならば、恵比寿から湘南新宿ラインのグリーン車に乗る方が一足早く旅気分に浸れるってもんだ。
赤羽を過ぎた頃にはすっかり旅気分でアル。
宇都宮から東北本線に乗り換え黒磯へ。うーん、いつもなら京成立石駅に着いた頃か。
黒磯から郡山経由で約2時間、福島駅に到着だ。
凄いねぇ、寛大な心の持ち主なのだネ。
それ故、公園の下から山頂まで至る箇所に市民ボランティアのガイドさんたちが丁寧に案内をしてくれるのだ。
写真家の故・秋山正太郎氏は、1979年に初めて此処を訪れた際に「福島に桃源郷あり」と語り、全国にその名が広まったそうだ。ガイドさん達は、此処のいろんなエピソードを教えてくれるので、約一時間の山巡りも実に楽しい。
元禄二年の春、俳人・松尾芭蕉は隅田川近くの芭蕉庵を出て、栃木、福島、宮城、山形と旅に出た。ご存知、「おくのほそ道」だネ。
那須の蘆野(芦野)の里を訪れた芭蕉が詠んだ句がある。
田一枚植ゑて立ち去る柳かな
旅の想い出とは時として花や草木の香りで思い出す事がある。
今回の小旅行もそんな記憶のひとつになって、時々その花の匂いを探してみたいものだナ。
さぁ、春の花を満喫した後は、酒を求めて仙台市へと急ぐのであった。