東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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路地裏の至福、『と乃村』の鰻に舌鼓を打つ。

先週の金曜日、朝から無性に鰻が食べたくなり頭からウナギが離れなくなった。午前中の仕事を終え、目黒駅から地下鉄に乗り東日本橋へと向かう。そう、目指す先は富沢町の『と乃村』だ。
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午後1時半に暖簾を潜ると女将さんが昼ご飯を食べていた。
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今日はヒマなのよ、と笑いながらビールの栓を抜いてくれる。
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昼間のビールは、何故か美味いのだナ。むふふ。
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うな重の特上と肝吸いをお願いして、ご主人がウナギを捌く姿を肴にグラスを傾ける。
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寡黙なご主人と対照的に女将さんは陽気に会話が弾むので蒲焼きが出来るまでの時間も飽きないのだナ。
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日本橋富沢町界隈は、昔から繊維や反物の問屋街として栄えた地域だ。出入りの客も多く、贔屓筋たちに鰻を振る舞う事が多かったらしい。
それ故、日本橋界隈には鰻屋が数多く在ったのだネ。
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此処『と乃村』も、元は近くの久松町の大きな鰻屋だったそうだ。

戦後、本家の『登乃村』が店仕舞いをすると云う事で、長くそこで修行を積んだ先代の主人が此の場所に小さな鰻屋を開き、屋号を引き継いだのだ。

現在のご主人は二代目で、女将さんと所帯を持った頃はまだ電気の配線工事の仕事を生業にしていたと聞く。
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先代が始めた頃は、バラックの屋台の様な店だったのだが、戦後復興の区画整理と衛生上の理由によりこの一角に店舗が集まって長屋の様になったそうだ。

70代も後半になったご主人は何度か脳梗塞に見舞われたのだが、幸い軽く後遺症も残らなかったので、今も元気に鰻を捌き、焼き場に立つ。

30分程で鰻が焼き上がり、女将さんが重箱にご飯をよそってくれる。
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老夫婦の粋の合った連携作業を眺めているだけで、食べる前からホッコリと温まるのだナ。

此処の蒲焼きは南千住『尾花』や麻布『五代目野田岩』と云った東京の老舗の様に舌で溶ける柔らかさでな無い。どちらかと云うと関西風の歯ごたえがしっかりと残る焼き加減に仕上げてある。蒸し加減が少ないからなのだが、頼めば一切蒸さない地焼きにもしてくれるのだネ。
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うーん、香ばしい薫りにお腹が鳴る。
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問屋街だから関西方面から来るお客さんが多く、焼き加減もタレの味も舌の肥えた常連のお客さん達の厳しい意見を聞いて、切磋琢磨し今の蒲焼きに辿り着いたそうだ。

鰻と云えば夏のスタミナ食と思われがちだが、今の時季も美味い。
女将さんも「11月頃から今が一番脂も乗って太くて美味しい鰻が穫れるのよネ。でも、昔の天然鰻が穫れた頃のハナシね。今はみんな養殖だからサ」と笑ってた。

まだ本所深川界隈にお堀が多く在った頃、潮の満ち引きにより美味い鰻が沢山穫れた。
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隅田川を挟んだ日本橋界隈でも、冬場には見事な棒杭(ぼっくい)鰻が入り、客ちも喜んでその味に舌鼓を打った事だろう。

一人だとうな重だけでお腹一杯になってしまうので、次回は是非誰かを誘って「白焼き」を食べに来よう。
いつも拝読しているブログ「journaux 出挙」さんさんオススメの白焼きが眼に浮かぶ。

今年創業60年を迎える『と乃村』は、お二人が元気な間はずっと鰻を焼き続けていることだろう。それまでは、こうして時々路地裏の暖簾を潜るのだナ。

午後一から幸せな気分を味わった。
店を出ると両国橋の先にスカイツリーがそびえ立っていた。
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空気の澄んだ冬の空では、ヒヨドリが大きな電波塔を遊び相手に飛び回ってたナ。

一度仕事場に戻り、所用を終わらせる。午後6時、木場の『河本』の暖簾を潜り、真寿美さんのホッピーを三杯戴いた。
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閉店と同時に猫ちゃん登場。営業中は出て来ないから不思議だネ。
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外に出ると永代通りの上に、大きな満月が出ていたな。
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大手町で電車を乗り換え、神保町へ。

金曜日の『兵六』は、カウンターも卓席も満杯だ。
酒朋ハッシーやトクちゃん、キクさん、それに荒木マタエモンさんと知った顔ばかりが集っていたネ。
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辛うじて卓に一つだけ席が空いていたのでご相席となった。
丁度、一週間程前浅草田原町の『簑笠庵』で知り合ったバンド「トライセラトップス」のベーシスト林さん夫妻が、早速『兵六』に来てくれたのだった。嬉しいネ、愉しいネ。

聞けば、口開け早々から来ていると云うので、随分と愉しい時間を過ごしていたのだネ。自分がこよなく愛している酒場で、愉しい酒を酌み交わせる幸せ。コレ、酒呑みだけが判る至福のひとときだよネ。
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ふぅ、冬の名物さつま汁をアテに薩摩無双がススんだナ。
by cafegent | 2011-01-24 14:00 | 食べる