ヴァレンタインデーと誕生日が近いと殆ど一緒にされる。それでも多少なりともチョコレートなんぞを戴くとオジサンは嬉しいのだナ。
日頃から酒浸り不摂生の日々を送っているからか、チョコレートに交じって「レバウルソ」なる肝臓に効くクスリを頂戴した。ちょいと試してみるとしようかナ。
そして、誕生日祝いに岡山の地酒を戴いた。
「符羅芭(プラバ)」と云う変わった名前の純米吟醸酒だ。
プラバとは、サンスクリット語で「鴨」の事だそうだ。備中宇治の豊かな風土の中、合鴨農法で育てた有機無農薬栽培の山田錦米で造った酒なので、名付けたらしい。
余りにも呑みやすくて、クイクイと一気に空になってしまったヨ。
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さて、展覧会の話題をひとつ紹介したい。
写真家・比嘉康雄の没後10年を機に昨年11月から年始にかけて沖縄県立美術館にて開催されていた写真展「母たちの神」が、静岡県長泉町に在る『IZU PHOTO MUSEUM』に巡回される。
比嘉康雄さんは、奄美諸島から与那国島へ連なる琉球弧に古くから伝わる祭祀(さいし)を永きに渡り撮り続けた写真家だ。
1968年のB52爆撃機の墜落事故がきっかけとなり、警察官から報道写真家に転じた異色の経歴を持つ。
米国から返還前、激動期の沖縄を写真と云うカタチで社会に伝えて来たが、1974年、民俗学者の取材に同行し宮古島の祭祀と出逢い、「人間と神との厳粛な交感」に衝撃を受けた。それ以来、祭祀の撮影をライフワークとしたそうだ。
琉球信仰に於いて、神が宿る聖域「御嶽(ウタキ)」は男子禁制だ。
今でも、一定区域までしか男性は入れない。
久高島では、「男は海人(うみんちゅ)、女は神女(かみんちゅ)」の諺が昔から伝わっている。
琉球弧の祭祀は、女性(母)が神となり、島の守護神となる「母神」にある。豊穣や繁栄を祈る白装束の女性たちが神々とともに舞い踊る「神遊(あし)び」や「イザイホー」(30歳以上の既婚女性が「神女」になる儀式)の光景など、それまで男性が立ち入る事が出来ぬ神聖な儀式だったのだ。
比嘉さんは、祭祀に関わる女性たち「神女」との親密な交流により信頼を得てこの儀式を撮影することが可能になったのだ。
久高島には百回以上も通ってその熱意を伝える事が出来た。
昨年放映されたNHK「日曜美術館」にて知ったのだが、今回の写真展開催にあたり展示される「母たちの神」と云う162枚のシリーズは、比嘉さんが写真集にするため、亡くなる直前まで構想を練っていたが、遂に日の目を見る事無く封印されていた作品群でアル。
独自の「ベタ黒」の深みのある陰影を本人亡き後にどうやって再現してプリントするか、写真家の小橋川共男さんはじめ、関わった方々の苦労する姿がとても印象に残った。
展覧会は5月8日まで開催しているので、静岡酒の旅を兼ねて拝見して来ようかナ。
母たちの神―比嘉康雄写真集
「IZU PHOTO MUSEUM」のサイト
「日曜美術館」のサイト