雑文雑多日記/『包むー日本の伝統パッケージ』展は必見。
2011年 03月 04日
正岡子規の詠んだ句を思い出した。
古庭の古き匂ひや沈丁花
沈丁花の花が咲き始めると一斉に春の花が開花し出す時季が来る。寒さに身を縮めてしまうが、もう春なのだナ。秋の訪れを告げる金木犀の香りと共に沈丁の花の強い香りは季節の指針となる。
沈丁花見知らぬ路地へ誘い香 八十八
仕事場をちょいと抜け出して近くの美術館に出掛けた。
日常生活の中で使われている様々なモノを通して日本の美意識を再認識することが出来る。
あの時の展示品の殆どが岡氏より同美術館に寄贈されていたのだネ。
その何れもが、日本の風土に育まれた自然素材である紙、土、藁、木、笹、竹などを生かした容器であり、その地に長く伝わる手仕事による素朴な美しさを持っている。
今ではもう無くなってしまった貴重な包みや山形の伝統的な「卵つと」(卵を持ち運ぶ時の藁細工の包み方)に見られる美しいパッケージの意匠は必見だ。
また、3Dによる8分間の立体映像『包 TSUTSUMU』も面白かった。
◇ ◇ ◇
さて、昨日は仕事を終えた先から木場へと向かった。
湯豆腐をアテにホッピーが美味い。夕べはいつもより客が少なく、ゆったりと座る事が出来た。
コの字の向こう側のご常連席の方々も少ない。そして、「今日はハトが少ないネ」などと呟いていたナ。
此処で云うところの「ハト」とは、初河本の方々の事を指す。はとバスに乗って観光巡りする様なお客さんの事をこう呼ぶのだヨ。
相変わらず皆さん一見さんには厳しいのだネ。
で、いわゆる「ハト」さんがビールを頼むと皆さん真寿美さんと顔を見合わすのだナ。云わぬが花の吉野山、「ウチはホッピー屋」を自負する真寿美さんは、黙って大瓶の栓を抜きながら莞爾と笑うのでアル。
僕が暖簾を仕舞い、もう一人のコニさんが自転車を仕舞ってくれた。
『河本』の常連さんには、大西さんと小西さんが居る。そんな訳で、紛らわしいからといつの間にか僕は「中西さん」になってしまった。まぁ此処ではそれで良いか。ナハハ。
木場から大手町経由で神保町へと移動した。
今はもう無いが、『兵六』開店当時のマッチを古いお客さんが持って来てくれた。
正二合の無双を呑み干し、夕べは家路に向かった。時には二軒で終わるときだって有るのだナ。
家の近くでも、沈丁花の香りを風が運んでいた。夜空の月は弓の様に細かった。今夜あたりが新月なのだろうか。