今日の朝4時頃に、また大きな地震が起きたネ。揺れが続いたので、すっかり目が覚めた。またしても震源地は東北だ。
いつになったら穏やかに過ごせる時が来るのだろうネ。
涼しい日が暫く続いた東京だが、今日はまた灼熱の太陽が戻って来た。
「白熱の太陽がもう一尺でも地球に近づくなら生けとし生ける北半球の動物が焼死してしまふであらう」
これは、昭和8年7月25日、山形市でこれまでの最高気温である40.8度を記録した日の事を「山形新聞」が報じた記事だそうだ。
だが、今と違ってコンクリートやアスファルトの照り返しが少なかったため、気温が高くても今よりずっと過ごし易かったらしい。
地震による津波被害も心配だが、猛暑による熱波も辛いネ。被災地では解けた魚介によって大量発生したハエ問題も可成り深刻みたいだし、東京もこれから蚊が一段と多く発生する時季となった。いづれにせよ、穏やかに過ごせる日はまだ先だネ。
◇ ◇ ◇
さて、今月4日、奄美大島で国内では大変珍しい大型のハタの仲間「タマカイ」が水揚げされた。体長約1メートル、重さ15キロもある。
地元の漁師が奄美大島近海で釣り上げた魚で、大きい物は3メートル以上に育つそうだ。奄美や沖縄での水揚げは本当にまれだそうだ。
地元新聞でも大きく報じられた件(くだん)のタマカイを目黒の寿司屋が手に入れたと伺った。そう、目黒の住宅地にひっそりと佇む『寿司いずみ』でアル。
毎年、夏になると魚介の仕入を兼ねて奄美大島へと旅立つご主人佐藤衛司さんは、そのニュースを知って、早々に地元の前川水産にお願いして仕入れたそうだ。
タマカイはヒレに黄色と黒のまだら模様が入っているので、タイガースファンに喜ばれる魚だネ、と相変わらずの冗談を飛ばしていた。
先週の金曜日、神保町の酒場『兵六』口開けで暖簾を潜り、詩人の水上紅さんたちと酒を酌んだ。
そして午後7時半、『寿司いずみ』へと伺った。
此処は先代の頃から36年間一度として暖簾が出た事がない。いつも「準備中」の木札が置かれているのだナ。カウンター10席の小体のお寿司屋さんは、常に予約で埋まっているから、暖簾を出す必要が無いのだネ。
先ずは、復活したサッポロ赤星を戴いた。
この日最初の料理は夏らしく「鯵つみれの水なます」ブルーベリーの実がサッパリ感を際立たせていたナ。
途中で、バルサミコ酢を加えるとまた一段と味に広がりが出るのだネ。さすが、親方の夏の名物。
鰻入り玉子焼きも相変わらず美味い。
伊豆伊東のイサキと八戸の胡麻鯖の刺身が出たので、酒を戴いた。
長野「明鏡止水」でお馴染み大澤酒造が造る「夏吟醸」、ガツンとした強い口当りだったネ。
続いて、赤鮑と黒鮑の登場。
豪快にブツ切りで戴けば、海藻をたっぷりと食べて育ったアワビ本来の味が口一杯に広がるのだ。うーん、酒もススむ。肝をつけても美味い。
蓋物は、海鞘(ほや)の蒸し物抹茶仕立てでアル。
海鼠(なまこ)の内臓で造った塩辛「コノワタ」に同じく海鼠の卵巣「このこ」もたっぷりと入って美味いのなんの。
吞んべいには堪らない茶碗蒸しだったのだナ。むふふ。
箸休めの蕗(ふき)味噌も日本酒に合う。
先程の鮑の肝に酢飯を入れて戴いた。云う事無し!
大振りの天狗茄子の焼き浸しをエゾバフンウニで和えて。
これも夏らしい一品だった。
さぁ、これが噂のタマカイの皮を使った煮こごりだ。
滅多に味わえない貴重な料理だった。
酒は宮城の「阿部勘」を合わせた。
続いて鮎の背越しの登場。
四万十川の川海苔を食べて育った鮎はほんのりと天然青海苔の味がして素晴らしかった。
ホロ苦いうるかを合わせて食べると最高だネ。
普段ならば、握りに行く前に痛風まっしぐらの濃厚塩辛、からすみ類に移るのだが、ちょいと躯に気を使い止めておいた。
カブの漬け物で一段落し、握りへと進むのであった。
握りの最初は、ジンタン(鯵の稚魚)の黍(きび)酢〆から。
そして、キンちゃんが握ってくれたのは、お待ちかねタマカイの握り。
もう最初で最後の味となるのだろうナ。味はクエに似ている。
酒は静岡の「志太泉」を戴いた。
続いて、むつの稚魚の握り。
お馴染み鯵の赤酢〆。
なめこの赤出しで胃を落ち着かせて、いよいよウニ4連発へと突入。
最初は、利尻で穫れたエゾバフンウニから。
旬のエゾバフンは、濃厚で甘い。
『いずみ』では、利尻の漁師からこうやって海水のまま送られてくるのだネ。
お次ぎはエゾバフンよりも淡いあっさりとした味のキタムラサキウニ。
こちらも利尻から。
3つ目は、青森のアカウニ。
これもエゾバフンよりあっさりした味だが、実に美味い。
そして最後は、奄美大島で今月初めに解禁になったばかりのシラヒゲウニの握りだヨ。
独特のコクと甘さは一度知ったら病みつく美味さのウニなのだネ。
いつも此処で夏になると楽しみにしているウニ三昧なのだナ。
先程刺身で戴いた八戸の胡麻鯖を握って貰った。
玉ねぎ醤油とはまた違った味わいに感動。
酒を秋田の「山本」に。
金目鯛のヅケも素晴らしい。
鰊の赤酢〆も美味。
穴子を煮て作るツメを塗ったに穴子。
最後は江戸時代の仕事を再現した車海老の酢おぼろで〆た。
最後は親方や先代女将さんたちと話も弾み、お土産まで戴いてしまったネ。
いつもいつも本当に美味い寿司と酒を有り難うございます。
料理14種、握り13貫、お腹も一杯でアル。
あぁ、夏の間にもう一度来たいものだナ。
外に出るといつもなら生暖かい風が顔に当たるのだが、この日はとても涼しい風が吹いていた。では、酔いを冷まそうと、千鳥足を引きずって歩いて帰ってみた。