今朝の高校野球準決勝を見ていたら、3回あたりで雨が激しくなり一時間半程中断した。甲子園球場の空は青空が見えて来たが、その頃から東京の空が一面鼠色に変わり、落雷の音と共に強い雨が降り出した。
横殴りの雨に傘など無用の存在となるネ。仕事場に着いた時には頭から足の先までぐっしょりとずぶ濡れになってしまった。
昨日の朝日新聞『天声人語』の中に、僕の好きな言葉が出て来た。
〈列島の天気予報は久々に傘のマークが連なっている。雨のあと、高い天に刷(は)いたような雲が浮けば、夏と秋がすれ違う「ゆきあいの空」となる▼とはいえバテが出る頃だけに、盆明けの電車に揺られるサラリーマンも楽ではない。生身の体をかばいつつ秋を待ちたい。もうひと辛抱か、ふた辛抱か。残暑の酷ならざるを、お天道様に願いながら。〉
古今和歌集で凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)が詠んだ歌に「夏と秋とゆきかふ空のかよひぢはかたへ涼しき風や吹くらむ」がある。
夏が終わり、秋が来そうな空では、片方には涼しい風が吹いている、と云うことだが、二つの季節が行き交う空の事を「ゆきあいの空」と呼ぶそうだ。実は、これも数年前の『天声人語』で知ったのだがネ。
残暑厳しい夏であったが、この豪雨により過ごし易くなってくれることを願いたい。
ベランダの花もうれしや夏の雨 八十八
◇ ◇ ◇
京都の旅二日目は、三条堺町の『イノダコーヒ』で始まる。
本店二階のテーブルから見える中庭は、朝から強い日差しが眩しい。
アラビアの真珠をブラックで戴き、朝飯はハムトーストだ。
このオーセンティックなハムトーストが実に美味いのだナ。
此処にしても寺町通りの『京都サンボア』でも、一人で入ると新聞を持って来てくれるのが嬉しいのだよネ。
イノダの水用グラスも可愛いよネ。
昔、良くお土産に買って帰ったっけ。
あぁ、素晴らしい朝の目覚めとなった。
近くに在る匂い袋の『石黒香舗』は、素敵な匂い袋が多くて、女性への土産に重宝するのだナ。
どうです、可愛いでしょ。
京都の町を散策し、午前中は『清水寺』へ。
参道を歩き、仁王門を潜り、境内へ。
暑いのに大勢の人出だったネ。
沢山の岩手の南部風鈴が涼やかな音色を奏でていた。
清水の舞台に立つと京都市街が一望出来るのだネ。
京都タワーに手が届きそうだ。
万緑の山々も臨む事が出来るし、深呼吸が心地良い。
千日詣りを済ませ、バスで祇園まで戻った。
この日の昼食は、京都に来るたびに訪れる祇園『御飯処 山ふく』へ。
花見小路を入り、午後1時の予約だったのだが、外が余りにも暑かったので、30分早かったが中で休ませて頂いた。
祇園で有名なお茶屋『一力』のスグ裏手にひっそりと佇む『山ふく』は、故山口瞳先生もこよなく愛したおばんざい屋さんだ。
此処は、女将さんが独特の雰囲気を醸し出しているので、その物言いに慣れていないとちょっと躊躇してしまうかもしれない。
お昼の定食は毎日20食分しか用意していないので、売り切れたらお仕舞い。暖簾を仕舞ってしまう。
予約をしていなくても、運良くまだ残っていれば座らせて貰えるのだ。だが、必ず女将さんが何か一言云うのだよネ。僕らもご多分に漏れず、「この忙しい時に30分早く来られても、早くは出来ないよ」とピシャリと言われるのだ。それでもちゃんとスグに用意してくれるのだナ。
後から予約無しの三人家族が入って来たのだが、「ウチは小さな店だから、20食でお仕舞いなのヨ。」と一言。
「じゃあ、もう駄目ですネ」と母親の方が言うと、「駄目だったら、入れずに断るわヨ!」と来たもんだ。思わず吹き出しそうになる。
毎度のことだから、女将さんのあの強烈な一言を聞くと、あぁ、京都に来たのだナ、と思ってしまうのだ。
枝豆とビールを戴きながら、小上がりで汗を拭う。
先ずは「揚げ出し豆腐」から。
薄い衣を纏った豆腐は、とても優しい味だ。
「小鮎の南蛮漬け」は、夏から秋にかけての定番だ。
そして、作り立ての「冷や奴」。これは、本当に美味い。旨い豆腐の味そのものを楽しみたいと思うほどでアル。
カボチャと生湯葉、高野豆腐等の炊き合わせも実に優しい味だ。
甘いのにしつこくなく炊いたカボチャの旨い事ったら。
大豆の煮物は、甘さが強いのだが、干しえびの味と絶妙なバランスで整っているのだナ。
これもビールがススむ一品だ。
じゃこと法蓮草のお浸しもさっぱりとして、夏バテ防止になる味わい。
肉じゃがも此処の定番でアル。
ビールを飲み終えたところで、御飯を持って来てくれる。
この日は、人参の炊き込み御飯だった。松茸だったり、筍だったりと季節に応じていつも変わるのも嬉しい。
前回は、まかない用にしていた前日の炊き込み御飯をお裾分け戴いたりしたナ。そんな気遣いも又嬉しく、京都に来るたびに訪れるだ。
皿にてんこ盛りのお漬け物は、柴漬け、白菜、人参、塩昆布、胡瓜、蕪の浅漬け。
赤出しの味噌汁と炊き込み御飯で満腹になった。今回もまた美味しい御料理をご馳走さまでした。
これだけ食べて、定食1,800円なのだから、大満足なのだナ。
午後の祇園では、和服の似合う芸妓さんたちととすれ違うのだ。
この界隈も歩いているだけで、楽しいのだヨ。
食後は、腹ごなしに『銀閣寺』まで足を伸ばした。
琵琶湖疎水に続く、分線沿いに植えられた桜並木が見事な「哲学の道」を歩き、銀閣寺へ。
此処は500円の拝観料を払うと入場券が付いたお札をくれるのだネ。
入口で下部を切り取ると「銀閣寺お守護」のお札となる。
中に入ると侘びた佇まいの銀閣寺とその廻りを囲む素晴らしい池泉回遊式庭園を眺める事が出来る。
大きな円錐台形の砂盛りは「向月台」(こうげつだい)と言う。
向月台とこの本堂前に在る砂盛「銀砂灘」(ぎんしゃだん)の何とも言えぬこの奇抜なモダンデザインは、かつて岡本太郎さえもが「私の発見したよろこびの、もっとも大きなもののひとつだった」と語っている。
此処から眺める景色が美しいのだネ。
午後に入ってからの京都は、一段と陽射しがキツくなって来た。首に巻いていたタオルもぐしょぐしょになっている。
新しい手拭いを買おうと八坂神社前のコンビニに向かったのだが、このローソン、京の町に合わせたデザインになっているのだネ。
このセンスが、素晴らしい。
さて、続きはまた来週ネ。