暦ではもう「立秋」だネ。本来ならば、まだまだ残暑厳しい夏が続きそうだが、ここ数日は一気に秋の気配を感じる。
この二週間ばかりは、高校野球に目が離せない日々だった。津波の被害を受けた八戸の光星学院と西東京代表の日大三高の決勝戦は、勝ち負け以上の大きな希望に満ち溢れた力を国民皆が貰った気がする。
それにしても、準決勝の日に東京を襲った豪雨も凄かったネ。横殴りの雨は傘など何の役にも立たなかった。雨に強い筈のメイン・ハンティングシューズさえもくるぶしから雨が入り込み、足がふやけてしまったのだから。
しかし、頭のてっぺんからつま先までずぶ濡れになってしまうと、開き直って来るのか、子どもの頃に戻った様にグショグショに濡れる事が楽しくなって来たのだナ。普段なら母親に怒られそうなものだが、大雨を理由に好きなだけ服を濡らして遊ぶ事が出来るからネ。
列島を襲った猛暑もこの雨で一段落したかもしれない。今朝は窓から吹き込む風に寒さを感じて目が覚めた。クローゼットを開けながら、もう秋の装いの事が気になりだしている自分が居た。
◇ ◇ ◇
8月10日、京都も35度を超す程の暑さだった。
銀閣寺を拝観した後は、甘党茶屋『梅園』にて一休み。
此処はいつでも混んでいるのだネ。
僕は「宇治冷やしぜんざい」を頼んだ。抹茶ゼリーがプルンと美味い。
カミサンは「宇治抹茶みるく氷」に白玉を乗せていたが、旨そうだったのでちょいと戴いた。むふふ。
汗が引いたので、新京極『スタンド』にてちょいと一杯引っかけに。
ビールが水の様に躯に沁みていく。
それでも、外に出ると生暖かい風がしつこく纏わり付いてくるネ。
京都は盆地でアル。市街を三方向から山に囲まれている為に、南側から熱風が入り込み盆地に留まるのだそうだ。
そんな京都人は、少しでも涼を感じる工夫を忘れない。
前日は京の奥座敷、貴船の川床で過ごしたが、この日は鴨川から吹く涼風を愉しもうと木屋町通りと鴨川の間に佇む京料理の老舗旅館『幾松』にて、夏の風物詩「鴨川納涼床」を楽しんだ。
此処『幾松』は、桂小五郎(のちの木戸孝允)ゆかりの宿でアル。
三本木の芸妓だった幾松(のちの松子夫人)は、新撰組の斬り込みを受けたこの屋敷で桂小五郎をかくまった。裏の鴨川に逃げられる様に廊下の下から抜けられる隠し階段も残っている。
天井が落ちて敵を攻める「つり天井」の仕掛けが残る「幾松の間」も現存し、丁寧な解説を聞きながら見学する事が出来るのだヨ。
桂小五郎直筆の掛け軸も在り、幕末にタイムスリップした気分に浸れるのだナ。
玄関先から幾松の間へと続く、渡り廊下には吹き抜けの坪庭も在り、実に風情豊かだ。
黄昏時を前に食事を開始し、京のサンセットを堪能した。
先ずは、ビールで乾杯。
食前酒は、ブルーベリー酒。
先付けは、長芋の素麺。海老とオクラでさっぱりとした味わいだ。
ガラスの器に盛られた八寸は、鬼灯サーモン、無花果(イチジク)信楽揚げ、鰻の笹巻寿司、海老真丈、蓮芋梅肉掛け、烏賊の酒盗、そして鱚の黄金焼き。
鰻好きには、たまらないネ!
酒盗は日本酒に最適なアテだったので、純米酒「幾松」を戴いた。
向付は、愛媛産縞鯵、徳島産鱧に鯛だ。
鱧がさっぱりと「京の夏を食(は)む」と云った趣きだネ。
そして、お姉さんにパチリと記念撮影をして戴いた。
色々と優しい心遣いをありがとう!
京の夜に、芸妓さんは外せない。
とは云え、僕らは便乗組だ。それでも十分、目に愉しいのだナ。
あぁ、酒が弾む。
鱧と松茸の吸い物でひと休み。
地元産の鮎を塩焼きで。
陽も暮れ出して、灯籠に明かりが灯った。
空が薄紫色に染まり、鴨川の鳥たちが山へと帰って行く。
炊き合わせは、泥鰌(どじょう)柳川豆腐。
これまた、実に品のある一品だったナ。
涼しげな小鉢は、汲み上げ湯葉に生ウニとオクラ、とろろだ。
山葵もアクセントとなり素晴らしい味だった。辛口の酒にも合ったナ。
すっかり陽も落ちたネ。
鯵の酢〆と酒煎蛸を茗荷で和えた小鉢。頬が落ちそうになる。
湯葉の赤出しと蓮根の炊き込み御飯が出た頃には、殆ど見えなくなって来た。
僕らは大丈夫だったのだが、川に面した灯り側の席だと、蚊が集まってくるので、灯りを消したのだネ。
最後に果物を戴いて、ご馳走さまだ。真夏の夜の納涼床を堪能した。
祇園祭りと大文字五山送り火の間の時季、本当に素晴らしい京の夏を過ごす事が出来た。
酔い冷ましに先斗町を歩いていると、知った顔が居るではないか。
青山『立ち飲みなるきよ』などで、ひとみ姐さん達と一緒に良く飲んだ健太郎君と京都で出会うとはびっくりした。
そんな訳で、一緒に記念撮影をパチリ!
暫くご無沙汰していたので、思わぬ再開にお互い嬉しかったネ。近々、東京で吞みましょう!
細い路地での楽しい再会に盛り上がっていると、何処からか「東京自由人さんですか?」と声を掛けられた。聞けば、高知から京都旅行に来ているご夫妻だった。奥様の方が、僕に気がついたそうだが、良く判ったものだよネ。
せっかくなので、パチリ!いやぁ、嬉しいなぁ。
早速、ご連絡も戴く事が出来たし、いつか是非ともご一緒に一献賜わりたいものです。横山夫妻、お声掛け有り難うとございました。
この様な、旅での偶然の出逢い程嬉しい事は無いのだネ。
こうして、夏の京都旅行も無事に終了。