東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々雑文雑多日記/梅雨空の様な日に、向田邦子さんを偲ぶ。

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湿り気をたっぷりと含んだ空気が、行く足を重たくさせる。
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めくり忘れたカレンダーの様に今朝の東京はまるで梅雨の季節に逆戻りしてしまったのか。

残り雨のせいなのか、吹き出た自分の汗なのか、ポロシャツから突き出た二の腕がじっとりと濡れている。
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同じ暑さでも、カラッと晴れた青空の下でかく汗の、なんと心地良いことよ。仕事場のカレンダーを見れば、矢張り8月の下旬でアル。
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残り少ない夏を懸命に鳴く蝉たちも、今朝の東京には戸惑っているんじゃないだろうか。
       ◇        ◇        ◇
8月のお盆を過ぎると、いつも思い出すのが向田邦子さんの命日だ。
1981年の8月22日、社会人になりたての僕はラジオのニュースで向田さんの訃報を知った。

その丁度一年前、向田さんは妹さんと二人で赤坂に『ままや』と云う小料理屋を開いた。
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料理好き、酒好きで知られていた方だったので、是非とも伺ってみたいと思っていたのだが、まさかその1年後に飛行機事故で帰らぬ人となるとは夢にも思わなかった。

結局、『ままや』の暖簾を潜ったのはそれから随分と時間が経ってからだった。サラリーマンを辞め、起業をした頃だから向田さんが亡くなって10年ばかり経っていた頃だ。

向田邦子さんは、大の飛行機嫌いだった。あれだけ頻繁に海外旅行をしていたのに不思議だネ。

22日の命日、朝日新聞「天声人語」でも、その事に触れていた。
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〈毎週のように乗っても、離着陸の時は平静でいられない。飛行機が苦手な向田邦子さんは、空の旅となると縁起を担ぎ、乱雑な部屋から出かけた。下手に片付けると「万一のことがあったとき、『やっぱりムシが知らせたんだね』などと言われそうで」(ヒコーキ)〉

この文が出た3ヶ月後、向田さんはその「万一」に遭ってしまった。
妹の和子さんによれば、その時彼女の部屋はいつになく整理されていたそうだ。直木賞を受賞した翌年のことでアル。

僕は彼女が脚本を手掛けたホームドラマが大好きだった。
中学の頃に観た『七人の孫』や『だいこんの花』、そして何と言っても『時間ですよ』と『寺内貫太郎一家』だネ。

『七人の孫』から『寺内貫太郎一家』に至るまで、向田さんと久世光彦さんのコンビが作るドラマは、夢中になって観ていたっけ。

『阿修羅のごとく』は、可成り後になってから再放送で観た。死去後の追悼で放映されたのだったか、今はもう忘れてしまったナ。

『ままや』は料理が好きだった向田邦子さんと妹の和子さんが、二人で試行錯誤して考案したお惣菜が多かった。

「鯵の干物とポテトのサラダ」とか、一見ギョッとしてしまうような取り合わせの様だが、食べると実に美味いのでアル。ザク切りの三つ葉がアクセントになっていたナ。また、さつま芋のレモン煮やクレソン炒飯なんかも、家で真似をして作ったけれど、今でも大好きだ。

『ままや』で長い間板場を預かっていた方が、その後新橋で小体の居酒屋を開いていた。向田姉妹の味もそのまま受け継いでいたのだが、残念ながらその店も今はもう無い。当時、同じ新橋5丁目に仕事場を構えて居たので、仕事の合間を縫って、吞みに行ってたっけ。
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何年か前に「向田邦子の手料理 (講談社のお料理BOOK)」と云うレシピ本が、出ていたネ。

向田姉妹の味は、3年前に百歳でお亡くなりになった母・せいさんの手料理が並ぶ家族の食卓が原点だ。

「向田家のモットーは、熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに戴く。その料理が一番美味しいうちに、パパッと食べる。もたもたしていると父の雷が落ちますから、素早く綺麗に食べる、というのが日々の情景でした」と記している。

向田邦子さんがお亡くなりになって30年の歳月が流れた。今、気がついたのだが僕は今年の春51歳を迎えた。向田さんが亡くなった時と同じ歳になった訳だ。

「人生、まだまだこれからだ」なんて、ノホホンと過ごしている自分が少しだけ幸せに思えたのだナ。

先の本と併せて、こちらも読むと面白い。是非!
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      <とんぼの本>向田邦子 暮しの愉しみ
by cafegent | 2011-08-25 12:28 | ひとりごと