日々是また日記/ドキュメンタリー映画『監督失格』を観る。
2011年 09月 16日
『監督失格』は、『エヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ総監督の庵野秀明、実写初プロデュース作品です。
『監督失格』は、ロードムービーの名作『由美香』の平野勝之監督、11年ぶりの新作映画です。
『監督失格』は、平野監督の仕事仲間であり元恋人、2005年34歳の若さで急逝した女優、林由美香の出演最新作です。
『監督失格』は、「喪失」と向き合う人々を描いたドキュメンタリー映画です。
以上、この映画宣伝のイントロダクションに書かれたコトバでアル。

当時のアンダーラインは、音楽、ファッション、アート関係の連中も多く出入りしていたのだが、友人が大手のAV会社の経営をしていた事も有り、多くのAV女優たちも飲みに来てくれた。
彼女たちのアダルトビデオももちろん観ていたので、プライヴェートで見せる仕草や会話に時々ドキドキしたことも多々あった。
林由美香は彼女たちより一世代前の人気女優だったネ。
イヴなんかと出ていたAVや代々木忠監督が撮った作品は観ていたが、劇場公開された平野勝之監督の『由美香』は、観ていなかったのだナ。
2005年の夏、新聞や週刊誌で彼女の突然の訃報を知ったが、正直それほど気に留めてはいなかった。
今回、平野勝之監督が11年ぶりに作った映画は、「傑作」だ。
監督と由美香さんが東京から北海道礼文島まで、41日間自転車で旅をする、正にロードムービーなドキュメントが続く。不倫旅行な訳で、時々彼女がスネて喧嘩になったり、慣れてない自転車での長旅に辛くなり、母に電話して慰められたりする。過去に『ツーリングドキュメント/わくわく不倫旅行』のタイトルでAV作品として発売された映画を再編集されているのだが、元の方も観たくなった。
さて、映画の後半は圧巻だ。もう5,6年も前に恋人関係じゃ無くなった二人だが、久しぶりに由美香と絡む映画を撮る事になった平野監督が、彼女の住む部屋を訪ねる。飼い犬の鳴く声に人の気配を感じるのだが、施錠されておりドアが開かない。
心配になり母親が合鍵を持って来て、中に入るのだが時すでに遅し。
第一発見者は平野監督自身となった。
監督はこの時もずっとカメラを廻して続けていた。由美香ママの絶叫する姿も写されている。
そして監督は、この日以来映画を撮らなくなってしまったのだ。
ちなみに林由美香さんの母親は、あの『野方ホープ』の創業経営者だ。今も店の看板店主として各店舗を切り盛りしている。
この映画は平野監督が由美香さんに抱いた愛おしい記録に留まらず、母と娘の絆の記録でもある。
別れてからも相談に乗ったり、いつも愛おしく思っていた由美香さんが逝ってしまった喪失感から、カメラを持つことが出来なくなった監督。
最後に、監督は今回この映画を完成させるに至ったかをまたカメラを通して語っていた。ギックリ腰を患ってしまい、ァイタタタタッともがきながらも、彼女への思いを語る姿は、悲しくも可笑しい。
途中に差し込まれるテロップを読みながら、映画監督って凄いなぁと思った。淡々と自分のことを被写体として捉え、自分自身で言葉を置いて行く作業ってのも大変な仕事だネ。
映画の最後に矢野顕子さんが唄う「しあわせなバカタレ」が流れる。
もう目がウルウルと来ちゃうのだナ。
監督自身、「曲を聴いて、笑いながら泣きました」と語っている。


芍薬の花のにおい 風のしっぽ掴んでる♪
矢野さんの唄が流れている間、ずっと彼女の顔が浮かんでいたものナ。
余談だが、三谷さんのエッセイ「ありふれた生活」は毎回和田誠さんが挿絵を描いている。

この『監督失格』と云うタイトルは、実に素晴らしい。映画を観た人だけの心に響くのだネ。

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて絶賛上映中なので、是非!
「監督失格」予告編
庵野夫妻の作品はいろいろと考え深い作品が多いですよね!
いつの間にかファンになってました。
見に行けたらいいなぁ。