昨日も書いたが、今は「啓蟄」だ。一年を72回の季節で表す七十二候でも「蟹虫啓戸」(すごもりむし、とをひらく)。地中に居た虫たちが、土の戸を啓(ひら)き外に出て来る時季と云う訳だネ。
そろそろ、街には木蓮やコブシの花が咲き、沈丁花の香りも漂う頃を迎える。
今朝も我が家の廻りでは、沢山のヒヨドリが群れをなして花の蜜などを求めて飛んで来た。
1羽2羽ならまだ良いが、こう数が多いと啼き声も相当なものでアル。
長閑にウグイスの声を聴きながらお茶をすする、なんてことは都会じゃ無理なのだナ。
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萩原朔太郎が書いた『虚妄の正義』なるアフォリズム(金言)集の中に「帽子を買うためにすら、人は遠方まで出かけて行き、数軒の店をひやかし、幾百の中からただ一箇を選ぶのである。それでも尚、実に満足する品を得ることはむずかしい。そのくせ、より重大な結婚についてはついひょっとした拍子に選択するのだ」言う一節がある。
これをモティーフにした田辺聖子の短編「帽子と求婚」を読んだ。短編集の表題になっている「ここだけの女の話」も実に面白い。女性ならではの視点で、さらりと、しかも言い得て妙なニュアンスが素晴らしい。
この本、何年か前に古書店で表紙買いをしたのだネ。
装丁を僕が好きな佐野繁次郎が手掛けていたので、速攻で手に入れた。独特の大阪弁を用いた小説に、読むのを避けていたことがあったが、読むと面白くて好きになった作家だ。
先週、英国Knox社のソフト帽を手に入れたので、この短編を思い出して先程読み返した。小説は読み返す度に、新しい発見があるのだナ。
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閑話休題。
さて、昨日は三島からの出張帰りの酒朋ビリー隊長と桜木町駅で合流。
目指す先はもちろん野毛の『武蔵屋』さんなのだが、到着すると入れ違いにおばちゃんの後ろ姿を発見。
入口には非情にも臨時休業の貼り紙でアル。
あぁ、こりゃ残念と店を変える。
気を取り直して向かったのは、『福田フライ』に程近い『新京』へ。
ご常連さん率が大半を占める居酒屋でアウェーな気持ちで中へと入る。
『新京』は伝票に自分で書いて渡すシステムだから、判らないと戸惑うのだネ。常連さん達は、勝手気ままに氷を出したり、お湯のポットを探したりと和気藹々。
此処もツンデレな女将さんなのだネ。最初はちょっと戸惑ったが、実に気さくな方だった。
メニューの短冊が沢山有って、目移りしちゃう。
鯨フライ(一本100円)、鶏レバー煮(一皿100円)を二つづつ。
それに初めて目にする品書に反応した。「じゃがラー油」とは何ぞや。
モノは試しで頼んでみたら、これがもう素晴らしく酒に合う一品だったのだネ。
茹でて焼いたじゃが芋にラー油がたっぷりなのだ。
瓶ビール二本もスグに空き、焼酎屋なのに我々は日本酒を戴いた。
一杯300円の高清水はコップに波々と注がれ受け皿が溢れるほど。
なんとも、嬉しい限りだネ。
二階は宴会で大賑わい、一階も混んで来たし、早々にご馳走様をした。いやぁ、お通し代も取らず、三人で合計2,500円でしたナ。
『新京』を出た我々は一路日の出町の都橋商店街の二階へ。
午後7時開店の『ホッピー仙人』を目指したら、ナント此処もお休みだった。
仙人が出張しちゃうと臨時休業となるのだナ。しかし、こればかりは来てみないと判らないのだヨ。トホホ。
そんな訳で二軒フラレたが、川を越えて『栄屋酒場』へと向かう。
中を覗くと満卓だったのだが、優しい方々が「もうスグ空くから、待っててネ」と声をかけてくれた。
待つこと数分で、中へ。
壁に貼られる「地酒めぐり」に惹かれ、僕は青森の純米酒「田酒」を冷やで戴く。
カミサンは、滋賀の純米酒「琵琶の長寿」を冷やで。ビリー隊長は、愛知の「東龍龍田屋」を燗酒で戴いた。
各自、手酌で酒を酌む。
酒の肴は、お新香と牡蠣酢、そしてイカのボイルだネ。
お通しのゴマメも正月以外で中々食べないが、案外酒に合うのだネ。
牡蠣がプリップリで美味しかった。
このトマトも大きく、甘くて美味い。
富山の「立山」をお代わりし、ご馳走様だ。
もう少し何か食べたいと思い、中華の『第一亭』へと向かったが、シャッターが降りていた。あぁ、この晩三軒目のお休みだった。豚胃(チート)は次回にお預けか。うーん、悔しい。
最後は「ぴおシティ」地下飲食街へ。
立ち飲み『石松』にて燗酒を戴いた。
そうそう、同じフロアに在った『第三キンパイ酒場』が店名変更していたヨ。新しい名前は『桜木町はなみち』だ。
訳は聞かなかったが、店の方々は以前と同じだった。ハテ、どうしてかしら?
午後9時半、武蔵小杉経由で無事に寝落ちせず、帰路に着いた。うん、最近にしては珍しく寝ないで帰って来れたのだナ。