日々是日記/末広町『花ぶさ』で、鱧を食む。
2013年 08月 09日
焼き上がりを
ゆっくりと待つのが
うまいわけですよ、
うなぎが。
うなぎはね、この頃、昔から知られている一流のうなぎ屋へ行くと、会席料理みたいにまず、突き出しが出る。刺身が出る、それこそ椀盛りも出てくるということでね、そのあとでうなぎが出るわけだよ。だからね、もう、うなぎがまずくなっちゃうんだよ、おなかがいっぱいになっちゃっているから。これは本当じゃない、うなぎの味わい方としては。
昔は、うなぎの肝と白焼きぐらいしかないですよ、出すものは。東京のうなぎ屋はね。その代わり、やっぱりおこうこはうまく漬けてあるからね、まず、おこうこをもらって、それで飲んで、その程度にしておかないと、うなぎがまずくなっちゃう。
ぼくを連れててくれた人なんか、小さな株屋さんの主人(たいしょう)だったけど、おこうこも食べさせなかったね。
「まだ何も食っちゃいけないよ。おこうこも駄目だよ」
と言われたものですよ。
「それじゃあ、何を食っていたらいいんです?」
と言ったら、
「酒飲んで待ってなきゃ駄目だよ」
☆ ☆ ☆
池波正太郎の名エッセイ「男の作法」から抜粋。
粋だよネ、いちいち云うことがスバラシイのだナ。
「鬼平犯科帳」や「剣客商売」などの時代小説も面白いが、エッセイが特に好きなのだ。「旅」「食事」「映画」「銀座」等々、池波センセイの本から沢山のことを学んで来た。
今一度、池波正太郎の世界を垣間みてみようかナ。
◇ ◇ ◇
さて、先日久しぶりに末広町の『御料理 花ぶさ』にお邪魔した。
暫し待つことにしたが、池波正太郎展のチラシが有ったので助かった。じっくりと読めたからネ。
午後2時、続々と個室のお客さんたちも降りて来て、カウンターも空いて来た。
夏の午後、板長が鱧(ハモ)の骨切りをする音が涼を運んでくれた。
料理の終わりに出る白玉ぜんざいが、これまた美味い。
外に出るとアスファルトを灼熱の太陽が照りつけ、足元から暑い。
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