東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/末広町『花ぶさ』で、鱧を食む。

      おこうこぐらいで飲んでね、
      焼き上がりを
      ゆっくりと待つのが
      うまいわけですよ、
      うなぎが。
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     ☆          ☆          ☆
うなぎはね、この頃、昔から知られている一流のうなぎ屋へ行くと、会席料理みたいにまず、突き出しが出る。刺身が出る、それこそ椀盛りも出てくるということでね、そのあとでうなぎが出るわけだよ。だからね、もう、うなぎがまずくなっちゃうんだよ、おなかがいっぱいになっちゃっているから。これは本当じゃない、うなぎの味わい方としては。

昔は、うなぎの肝と白焼きぐらいしかないですよ、出すものは。東京のうなぎ屋はね。その代わり、やっぱりおこうこはうまく漬けてあるからね、まず、おこうこをもらって、それで飲んで、その程度にしておかないと、うなぎがまずくなっちゃう。

ぼくを連れててくれた人なんか、小さな株屋さんの主人(たいしょう)だったけど、おこうこも食べさせなかったね。

「まだ何も食っちゃいけないよ。おこうこも駄目だよ」
と言われたものですよ。
「それじゃあ、何を食っていたらいいんです?」
と言ったら、
「酒飲んで待ってなきゃ駄目だよ」
     ☆          ☆          ☆
池波正太郎の名エッセイ「男の作法」から抜粋。

粋だよネ、いちいち云うことがスバラシイのだナ。
「鬼平犯科帳」や「剣客商売」などの時代小説も面白いが、エッセイが特に好きなのだ。「旅」「食事」「映画」「銀座」等々、池波センセイの本から沢山のことを学んで来た。
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そんな池波センセイの「生誕90年 池波正太郎」展が今月28日から、松屋銀座8階にて催される。書斎の再現や小説の制作ノートなど貴重な資料も数多く展示されるそうだ。

今一度、池波正太郎の世界を垣間みてみようかナ。
     ◇          ◇          ◇
さて、先日久しぶりに末広町の『御料理 花ぶさ』にお邪魔した。
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此処は池波正太郎がこよなく愛した店でアル。二階、三階の個室には池波センセイが描いた書画も飾られているし、暖簾の文字も手掛けているのだからネ。
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午後1時半頃にお邪魔したのだが、満席だった。
暫し待つことにしたが、池波正太郎展のチラシが有ったので助かった。じっくりと読めたからネ。

午後2時、続々と個室のお客さんたちも降りて来て、カウンターも空いて来た。

夏の午後、板長が鱧(ハモ)の骨切りをする音が涼を運んでくれた。
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そして、鱧の天ぷらが出て来た。本日のご飯は、とうきびご飯だった。
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鱧は塩で戴いて、野菜は天つゆで戴いた。とうきびご飯をお代わりし、夏の季節をたっぷりと味わった。

料理の終わりに出る白玉ぜんざいが、これまた美味い。
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変らぬ美味しい料理、ご馳走様でした。暖簾も中に仕舞われ、昼どきの最後の客となったが、大変満足した。

外に出るとアスファルトを灼熱の太陽が照りつけ、足元から暑い。
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旧練成中学校跡地の『3331アーツ千代田』の壁面では、ミンミンゼミがけたたましく鳴いていた。

松屋銀座「池波正太郎展」のサイトはこちらから!
by cafegent | 2013-08-09 15:10 | 食べる