九月に入り東京も急に秋めいた気候が続く様になったネ。
路地からはコオロギやカネタタキの啼く声が聞こえて来る様になり、蝉の季節も終わろうとしている。
昨日は中秋の名月から一日経っていたが、実に美しい月夜を観ることが出来た。
季節を72種類に分けて表す七十二候では、「草露白」(くさのつゆ、しろし)の季節となった。草についた露が白く光って見える時季。白露とは、朝夕の冷気が増して、草の葉に露が結び、白く光って見える様子をいう。
白露も夢もこの世もまぼろしも
たとへて言えば久しかりけり
和泉式部が歌に詠んだものだネ。儚(はかな)い朝の白露も、夢も、この世も、幻すらも、あの男との逢瀬の時間の短さに比べれば、長く続くもの(久しかり)だ、と詠っている。
この歌には「前置き」の歌がある。
露ばかりあひ見そめたる男のもとにつかはしける
ほんの少しの間しか逢瀬を重ねられなかった男への、恋しい未練のたけを表しているのだネ。
さて、いつもの公園では、秋の渡り鳥が色々と入り出してきた。
ピンボケだがオオルリも入って来た。サンコウチョウ、ツツドリ、センダイムシクイ、コサメビタキなどが姿を見せてくれた。もう少しすれば、キビタキ、ルリビタキもやって来るだろうナ。
夏の間は野鳥が居なかったので、虫ばかりを探していたが、やっと虫目から鳥目になり樹々の上ばかりを探し廻る季節となった。
オオルリの瑠璃色は本当に引き込まれる程に美しい。
サンコウチョウ(三光鳥)は目の廻りの縁取りが目立つ鳥だ。
センダイムシクイとツツドリは桜の木に居る毛虫が大好物でアル。
なので、桜の木を中心に探して歩くと出逢えるのだナ。
このツツドリも器用に毛虫を捕まえていたネ。
◇ ◇ ◇
閑話休題。
昨日は夕方から木場へ出掛けた。
このところ出張が続いていたので約二週間ぶりの『河本』でアル。
ガラリと戸を開けると、おや見覚えのある御仁がホッピーをやっているじゃないか。
我が酒朋の荒木マタェモンさんだった。
この日は定時に仕事を切り上げ速攻で武蔵小杉から木場へやって来たそうだ。
この日は珍しく右側のご常連席に誰も居なかった。
そんな訳で河本のアイドル猫ちゃんも時折顔を覗かせていたナ。
暫くするとまたもや知った顔が登場だ。
これまた我が酒朋のボヤちゃんだ。いつも野方『秋元屋』で飲む三人が木場で出逢うとは奇遇だったネ。
徐々に店も混み始めた。そして、大きな一眼レフを構えた外国人が日本人二人と共に河本に来店。ホッピーをやりながら、カシャカシャと店内を撮影し出した。
まぁ、真寿美さんも許可していたし僕らは構わない。
そして彼の写真集を見せて戴き素晴らしい写真家だと言うことが判明した。それは、僕が『ユトレヒト』で知った写真集の人だったのだ。
写真家Stephan Schacher氏はニューヨークとスイスを拠点に活動しており、彼の作品集「PLATE+DISHES」は、アメリカの食堂ダイナーとそこで働く女性のポートレイトで構成されている素晴らしい写真集だ。
僕もアメリカのダイナーが大好きなのだが、アメリカの日常に溶け込む食堂と働く女性たちの姿が自然に切り取られていたナ。
三杯目のホッピーを飲み干して、ご馳走さま。丁度閉店時刻の午後8時となった。
マタェモンさんと二人、神保町へと移動することにした。
馴染みの酒場『兵六』はいつもの面々が集っていたネ。さつま無双の白湯割りで秋の気配を頂戴する。
アルマイトの小さな薬缶の湯を猪口に注ぎ、芋焼酎の燗酒を割るのだ。あぁ、至福の時が続くナァ。
ハイ、お待ちかね!ドーンッ!とね。
しかし、ジワジワと真寿美さんのホッピーが効いて来た。二本目の無双で切り上げるとしようか。