六月ももう残り二日となり、ジメジメした梅雨ともあと少しでおさらばだネ。
街中の紫陽花も見頃を過ぎ、ムクゲの花が咲き始め、半夏生(はんげしょう)がおしろいで化粧をし始める季節となった。
来週には、夏の風物詩「入谷の朝顔まつり」が催される。
毎年、世話になっている方々に朝顔の鉢を贈り始めて何年が経ったのだろうか。
冷えたキュウリをかじりながら威勢のいい掛け声が飛び交う朝顔商の露店が並ぶ通りを歩くのも初夏の愉しみのひとつとなった。
自宅用と馴染みの酒場への土産の朝顔を買い終えると、根岸の居酒屋『鍵屋』へと向かうのだ。
毎年、ボクと同じことを考えている御仁たちの鉢が店の入り口脇に並ぶのもお馴染みの光景となっている。ひと夏我が家を彩ってくれる朝顔に思いを馳せて、櫻正宗のぬる燗を味わうのだナ。
夏の「鍵屋」は、お通しに煮凍りや心太(ところてん)が出る。酢醤油が効いた心太が出てくるところが東京の居酒屋らしくて良いのだネ。先ずは、これでお銚子を一本空けて、二本目は名物「うなぎのくりから焼き」でクィッとヤるのだナ。
あぁ、これをヤらなくちゃボクの夏は来ないのだ。
あぁ、来週が待ち遠しいナ。
◇ ◇ ◇
閑話休題。
根岸の「鍵屋」と同様に夏になると楽しみなのが、恵比寿の居酒屋『さいき』の夏の酒でアル。
東京の街も随分と日が長くなり、午後五時でも昼間のように明るい。こんな日の高いウチから呑んでイイのか!などと云う後ろめたさを吹き飛ばし、ガラリと戸を開ける。すると、中から「おかえりなさ~いッ」と優しい声が迎えてくれるのだナ。
先ずは生ビールで乾いた喉を潤した。クゥーッ、美味い!「さいき」は店主のクニさんが体調を壊してからも頼もしいスタッフたちが店を支え、切り盛りしている。僕は此処の若い女のコたちのテキパキと動く姿を眺めながら呑む酒が大好きでアル。
此処は黙って座れば、日替わりの酒の肴が三品出てくるので、一人客ならばそれだけでも十分酒を愉しめるのだナ。
この日は合鴨のスモーク、春雨和え、そしてカツオの刺身が出た。
最初のビールには合鴨スモークが合うナァ。
暫くすると、ツレがやって来た。彼女がビールを飲み干すのを待ってから、日本酒に切り替えた。
夏の「さいき」と云えば、何てったって凍結酒だネ。
「一ノ蔵」をキンキンに凍らさせてシャーベット状にしたものをモッキリで注いでくれるのだから、あぁタマラナイ!
カツオの刺身をアテに冷たい酒が僕を幸せにしてくれた。よし、酒の肴を追加しよう。壁に掛けられた黒板に目を通すと「鱧」の文字を見つけた。そうかそうか、もうハモの季節か。関西では梅雨入りから七月頃が一番脂の乗る時季だものナ。よし、祇園祭を思い浮かべながらハモの天ぷらを戴くとしよう。
からりと揚がったハモの天ぷら、サクッと噛むと衣の中から柔らかな身の豊かな風味が口いっぱいに広がるのだナ。アァ、こりゃタマランチ会長!なんちて。
お次は万願寺唐がらしだ。
細切りの鰹節に醤油を垂らし、万願寺を口へと運ぶ。おぉ、これも酒がススむアテダナ。クィクィと酒がススみ、結局二人で凍結酒四杯ずつ呑んでしまったネ。
店のカウンターの中に背の高い女のコが居たのだが、そのコから「武蔵小山の『豚星』で飲んでますよネ」と声を掛けられた。
最近、此処で働き始めたコなのだが、なんと「豚星」の黒田クンの田舎での同級生とのことだった。当然ながら渋谷のバー『8カウント』の店主、京平クンとも同級とのことで、またしても世間は狭いバナシに花が咲いたのでアール。
この日も旨い酒と美味い料理で僕らを楽しく酔わせてくれた。ご馳走さまでした。「いってらっしゃ~い!」の声に送り出されて「さいき」を出た。
「さいき」から徒歩数秒、『縄のれん』の暖簾を潜った。
此処は都内でも屈指の牛モツ焼きの名店だ。城南地区では珍しかった下町ハイボールを何十年も前から提供してくれた貴重な立ち飲み酒場なのだナ。
大好きなハラミ串、レバー串、ミノ串、そしてシビレ串といつもの串をお願いして、ボールの杯が重なるのであった。
「縄のれん」もひっきりなしに混んでいるので、食って飲んだら早々に引き上げる。
この後は、恵比寿神社脇の『はなゆき』へと吸い込まれていったのでアール。
そして、いつの間にやら酩酊!