外食の素敵なところは、自宅では決して味わうことの出来ない料理を堪能できることだネ。今回は数ヶ月ぶりに大好きな『Indochinoise(アンドシノワーズ)』での酒宴となった。
酒朋のライター森一起さんと武蔵小山『牛太郎』で軽く0次会を楽しんだ後、日比谷駅経由で小伝馬町へと移動。地下鉄の階段を上がると初夏の夜風が、どこかの路地から甘い花の香りを運んでいたナ。
古い雑居ビルの階段を昇るのだが、初めて訪れる方は肝試しにでも連れてこられたかと思うことだろう。
本当にこの先に店が在るのか、と思うほど不安な気持ちにさせられる外観なのだから。それでも、勇気を出してドアを開くと風味豊かなハーブの香りと調理をする音がすぐに僕らの五感を刺激してくれて、不安げだった顔を笑顔に引き戻してくれるのだ。
此処は旧フランス領インドシナやカンボジア、ラオスなどの料理の魅せられ、日々研究している園健さんと田中あずささんの二人が、独自の料理を提供してくれる不思議な空間だ。
この日も酒類は、皆で持ち寄ったのだが、最初は健さんが用意してくれたビールで乾杯だ。
アンドシノワーズ初訪問の方も何名か居たので、皆じっくりと健さんの料理の解説に耳を傾けながら、未知の味に誘(いざな)われていったのだナ。
まず最初に登場したのは、鶏肉の冷製に山菜のこごみだ。
味付けは岐阜長良川の天然鮎の内臓を塩辛にした泉屋物産店の「うるか」だ。うるかは日本独自の魚醤(ぎょしょう)だネ。日本酒好きには堪らない珍味だけれども、それを鶏肉に合わせるとは考えもつかなかったナァ。
続いて登場したのは、川魚をタマリンドと一緒にバナナの皮で蒸したもの。
タマリンドとはタイなどでよく食材に使われるトロピカルフルーツで、独特の甘酸っぱい味が印象的だネ。
これに合わせる酒はアルザスのワイン「BINNER」のリースリングだ。うん、キリリと冷えて美味しいワインだ。
そして、魚が続く。お次は鮎と鯉をインドシナ風で戴いた。
普段とまるで違う料理に変化した鮎や鯉だが、素晴らしい味付けだ。まるで、食卓ごと東南アジアにワープしたかのような気にさせてくれる。
こちらは、ティラピアの代わりに鯛を使ったラープと云う料理だ。
細かく刻んだラオスの生ハーブは、現地ではお祝いの席によく登場するそうだ。ラープとはラオス発祥の料理でパクチーたっぷりサラダのようなものだが、もち米と一緒に食べると手が止まらなくなるのだナ。
ワインが空いて、お次は琉球泡盛の古酒を戴いた。
43度の強い酒は、天然の薬のように僕の躰を奮い立たせてくれる。
ハマグリのレモングラス蒸しはスープが抜群に美味かった。
こちらは、鹿の肉をフキの葉で巻いて焼いた一品だ。
健さんの説明を聞きながら、酒もクィクィと進み、宴はさらに盛り上がる。
そして、あずささんが小さな躰で大きなお皿をドーンッと持ってきてくれた。
オォ、これは旨そうな肉だネ。僕がアンドシノワーズでいつも心待ちにしているのが、このレモングラスの風味豊かなグリルポークなのだナ。
確か、ラオス、ハノイの料理だったかナ?パイナップルにライム、ジュンサイ、レモングラスで作ったソースをつけて口へ運べば、自然に顔が緩んでしまう。
この日の酒も種類豊富だったナ。こちらは「醍醐のしずく」、千葉の寺田本家が造る五人娘の純米酒だネ。
乳酸菌の風味が強く、個性豊かな酒だった。
みんなの笑顔も素敵だったナ。
最後に登場した料理は、揚げ豆腐だ。
これをエビの発酵ソースで戴くのだが、これには白ワインがよくマッチしたナ。大いに食べ、大いに飲んで、あっという間に三時間が過ぎていた。
最後はみんな厨房に移動し、二人が使う調理道具に興味津々!現地で調達したであろう包丁やすり鉢など、女性たちは真剣に健さんの解説に聞き入っていたネ。
健さん、あずささん、毎回本当に美味しい料理と幸せなひと時をありがとうございました。
森さんとユイちゃん、僕らは武蔵小山へと戻り、いつもの酒場『長平』へと移動した。
この日はずっとユルやかに夜風が街を包んでいたので、外飲みが心地よかったナァ。
『長平』も今月末で立ち退きとなってしまう。早く新しい移転先が決まって欲しいネ。では、また!