東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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日々是日記/『寿司いずみ』に来なくちゃ、年を越せないナ!

年の瀬を迎えると、毎年目黒のはずれの住宅街にひっそりと佇む寿司屋の戸を潜る。『寿司いずみ』は都立林試の森公園の裏手辺りなので、初めて訪れる方は本当にこんなところにお寿司屋さんが在るのかと不安になりそうな場所でアル。

それでも一度此処を訪れた方は、必ずこの店の虜になってしまうのだナ。
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僕らが訪れたのは日曜だったので、自宅からのんびりと歩き公園内を抜けて午後6時半の開店時にお邪魔した。この日は、僕ら夫婦の他に二組のご夫婦と一人客の7人だ。一人客以外はみんな馴染み客だったので、大将は初めての方にじっくりと料理の説明をしながら「いずみ劇場」の幕が開いた。

先ずはサッポロ赤星で乾いた喉を潤した。
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僕ら夫婦が呑んべいなのは大将もご存知なので、ビールは最初のゴクリで呑みモードを作るのだ。そして残ったビールをチェイサー代わりにして日本酒に移る。日本酒を待つ間に最初の一品が登場した。
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いずみ名物と過言ではない「茶ぶり海鼠(なまこ)のヅケ」でアル。
米酢を火にかけて飲めるぐらいにしたものに、番茶に3週間以上浸して柔らくした能登産のなまこをヅケにする。このガラスの器の中にはたっぷりの海鼠とこのわたが入っている。そして上には自然薯のトロロとオクラが載っており、すべてを合わせながら口へと運ぶのだ。風味豊かで柔らかいなまこは、酒との相性も抜群だ。今回、大将が最初に選んでくれたのは「御苑(みその)」の大吟醸冷やおろしだ。この酒は一般流通はせず、宮内庁の中でしか手に入らないもので、大将独自のルートで分けて戴いているらしい。以前呑んだ「御苑」の純米よりもスッキリしていて、茶ぶりなまこの仄かな酸味がスムーズに溶け合うのだナ。

続いては「変わり出し巻き卵焼き」だ。
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芝海老のすり身を合わせた卵を焼き上げてあり、好みで赤山椒を振って戴く。これもいずみの定番だナ。あぁ、美味い。ちなみにいずみで供される赤山椒は、実が真っ赤になるまで樹の上で完熟させた山椒の実なのだ。コレを丁寧に種を取り出して、果皮だけを石臼で挽いたものなのだネ。以前、余りにも風味豊かで美味しので、大将に教えて戴いたのだが、京都下鴨にある『フレンドフーズ』が作る「完熟赤山椒」でアル。

お次は、島根県浜田産の鮟鱇の肝だ。
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最近は築地でも外国産が多く出回り、国内産のあん肝はキロ当たり2万円近くもしてなかなか手が出せないそうだ。大将は現地から直接分けて貰っているのでこんなにも贅沢に出して戴けるってワケだ。

おぉ、これには山形米沢の地酒「三十六人衆」が合うネ。ねっとりと甘いあん肝に辛口の酒がイイ。

あん肝は一切れ残しておいて、次に登場するヒラスズキの刺身を肝ポン酢で食すのだ。
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磯場に居てアワビやサザエを食べて育ったスズキの身は、クセが無くて旨味だけが口の中に残るのだナ。

そして、寒メジマグロと寒ブリの刺身と続く。
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これは、いずみ名物の和芥子(がらし)醤油で。北海道の野生アイヌネギを溶いた醤油に淡路産の新玉ねぎのすりおろしを合わせ、京都宇治で生産される和辛子を乗せた刺身を浸して戴く。アイヌネギの香りと新玉ねぎの甘み、和芥子の辛味が三位一体となって魚の味をグンと引き立ててくれるのだナ。

大将、この刺身には茨城県日立市、森島酒造の「大観 雄町純米吟醸」を選んでくれた。岡山県の雄町(米)を用いたこの酒は淡麗でとってもフルーティな味わいで、脂の乗った寒ブリによく合った。

ここで「真牡蠣の茶碗蒸し」の登場だ。
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今回は外海の牡鹿半島で採れた天然の真牡蠣だ。小ぶりなので、一椀に11粒もの牡蠣をすり鉢ですり潰して蒸したとのこと。上には焼き牡蠣が乗っている。
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椀の蓋を開けた途端、濃厚な牡蠣の風味が広がり、僕の嗅覚を刺激した。宮古島の赤味噌を使った餡がかかっており、牡蠣のみの蒸し物を際立たせていたネ。

酒は千葉は酒々井の飯沼本家が造る「甲子正宗」、甘口でちょっと微発泡な感じな酒だナ。

続いては、天然車海老とイカのしんじょうの揚げ出しだ。
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コンテチーズとキノコの出汁が効いて最高に美味い。昆布が効いているのかな。こちらは、雪の中で2年寝かせた長芋だ。
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温度が4度になると芽が出てしまうので、雪の下で2度に保つそうだ。これもイイ酒の肴だナ。

さぁ、いずみ劇場の前半が終了だ。幕間は、痛風まっしぐらの酒盗三昧でアル。
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緑の器は雲丹の塩辛を干したもの。そしてお馴染みの2年寝かせたマグロの酒盗と3年物のカツオの酒盗だ。鮪と鰹の胃と腸で作った塩辛は、実に濃厚で深い。
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こちらは、アワビの肝の酒粕漬けでアル。
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濃厚な旨味に酒がススむススむ。むふふ。いずみでは、鮭の肝臓をお茶で炊いた珍味など、その時々で仕込んだ酒肴が楽しめるのだヨ。漁場の方々が釣り上げた魚を余すところなく、手をかけて最高の料理にしてしまうのが此の店の素晴らしいところだネ。

酒は北海道倶知安にある二世古酒造が作る「今金」の純米吟醸を選んで戴いた。この酒蔵は、ニセコワイス山系の雪清水と、羊蹄山からの噴出し湧水を使用しているそうで、今金町で生産された酒造好適米「彗星」を精米しているのだとか。知らない酒が多いナァ。珍味三昧で酒もクィクィとススんでしまう。

こちらの皿では珍味三役揃い踏みだ。
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手前の白いのが鱧(ハモ)の塩辛、上がボラ子の塩辛、そして左手が鯛子の塩辛だヨ。あぁ、総てが最高に素晴らしい酒肴だネ。大将が勧めてくれたのは、越後村上市の地酒「越乃松露」だ。淡麗辛口で、幕間の酒にピッタリだ。

香ばしい香りが漂ってきた。
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おぉ、炙った石垣貝も酒に合うナァ。

珍味の最後を飾るのは、大将が「プリン体ア・ラ・モード」と命名したこちらの一皿だ。
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真ん中は鶏卵味噌漬け、その周りを取り巻くのはボラの味噌漬け、筋子、自家製カラスミ、カラスミ味噌漬けだ。自家製カラスミは、8週間も風干しして丁寧に仕込んでいるのだヨ。コレで酒がススまぬワケがない。

カラスミに合わせたのは、山形・新藤酒造店が造る「裏・雅山流」の純米吟醸だ。こちらも淡麗辛口で、口に含むと爽やかな香りと清らかな香味がパッと広がった。それにしても、珍味がどれも濃厚過ぎて鼻血が出そうになったナァ。

よし!幕間が終わり、いよいよいずみ劇場の第二幕「握り」が開いた。

最初は先ほどあん肝ポン酢で戴いたヒラスズキだ。
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スズキは夏場が旬だが、こちらは今の寒い時期が旬なのだネ。ギュッとした歯ごたえが堪らんナ。

此処『寿司いずみ』には握りを置く寿司ゲタが無い。握ったらスグに口に入れて欲しいとの先代からの伝統で、直に手のひらの上に置いてくれるのだ。握りが置かれたら、そのまま口の中に放り込めばイイって寸法だ。

お次は、いずみ名物小鰭(コハダ)四連発でアル。
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先ずは赤酢で〆た握りから。続いて、酒のジンを用いたジン酢握り。
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そして、お馴染みキビ酢と手の上に置かれていった。あぁ、幸せなひと時だ。
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最後には、白板昆布で〆た小鰭なんてのが登場したのだヨ。

酒は秋田・高橋酒造の「奥清水」吟醸を戴いた。名水百選に選ば れた六郷の軟水を使った酒は、酒こまちの香りが豊かで、スーッと喉を流れ行くのだナ。

続いて、こちらもいずみ定番の車海老のおぼろの登場だ。
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こちらは江戸の頃の保存方法を再現しており、車海老を漬け込んだおぼろを酢飯の代わりにして握るのだヨ。僕は、此処に来たら必ずお願いするほど好きなのだ。

ブリのヅケも美味かったナ。そしてこちらは、天然うなぎの握りだ。
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脂の乗りも良く美味い。続いて、天然の真牡蠣の軍艦だ。
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こちらは濃厚な味わいだったナ。
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穴子の白蒸しは塩を振って蒸していると伺った。

どうですか、このマグロの握り。
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本マグロの赤身と中トロを合わせているのだネ。

こちらは、白子だ。
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旬の味は最高だナ。
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そろそろ腹がいっぱいになってきた。
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海苔のお吸い物を戴いて、最後に煮ダコと煮蛤をお願いして〆た。
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この夜も素晴らしい味のオン・パレードだった。正月のお節料理もお願いしたし、最高の年の瀬を迎えることが出来た。
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大将、ご馳走様でした。

そして、皆さん、来年も良い一年をお過ごし下さいませ!
by cafegent | 2017-12-30 10:45 | 食べる