東京だからこそ出会う人や店をつれづれなるままに紹介


by cafegent
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根岸の『鍵屋』から、裏を返しに浅草『ぬる燗』で一献!

先日、入谷の朝顔市の帰りに立ち寄った根岸の居酒屋『鍵屋』では、とても楽しい時間を過ごすことが出来た。
どっしりとした楓(かえで)の板で設えたカウンター席の奥で、偶然隣り合わせになったのは浅草見番裏で店を構える『ぬる燗』の主人、近藤さんだった。


もう随分も前になるが酒朋ハッシーさんと浅草界隈をハシゴしている時に、彼が好きな酒場が在るからと連れて行って貰ったのが『ぬる燗』だった。それから何度かお邪魔したが、いつも店主のツンデレと云うか、ニヒルな態度にどぎまぎしながら酒を酌んでいたのを思い出す。それから暫くして店を移転したことは耳に入っていたのだが、何故か新店舗を訪れていなかったのでアル。


鍵屋で浴衣の話から盛り上がり、桜政宗は僕は一年中ぬる燗で頂いていると云う話になり、話の流れから彼が居酒屋『ぬる燗』の主人(あるじ)であることが判ったのだ。おや、あの店での強気な態度は何処へ行ったのだろうか、ハテ?と思いながら酒を酌み交わした。そうなのか、自分の至福のひと時を過ごす時は、自分の構えている店、晴れ舞台で見せる顔とは違うのだナ。この日は本当に愉しい酒を嗜むことが出来た。ぬる燗の近藤さんの屈託のない笑顔と優しさに溢れた応対に一目惚れしてしまったのだナ。


いつの間にやら、桜政宗のぬる燗を四本も空けていた。この日は足がもつれる前に帰路へと着いた。

さて、入谷の朝顔市が終わるとスグに浅草のほおずき市が始まる。

そんな訳で週明けの水曜日、浅草寺へのお詣りをしに雷門をくぐった。

梅雨の合間の晴れだったので、今季初の浴衣に袖を通してみた。
雷門から境内へと続く仲見世は国際色豊かな人で溢れていた。そんな中で、粋な浴衣姿の姐さんたちを見かけるとつい目が追ってしまう。若い男の子たちの浴衣姿を見るとほとんどが帯を胸の下あたりで〆ていて、まるで天才バカボンにしか見えないのだヨ。

レンタルショップで浴衣を借りた外人の兄さんたちも同様だ。何故、着付ける側も腰の下で帯を巻くように教えてあげないのだろうか、ハテ?

四万六千日をお詣りし、我が友たちの無病息災を願いた。
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浅草寺の境内では、所狭しとほおずき売りの出店が威勢の良い掛け声で人を集めていたナ。
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素敵な浴衣を着た美少女の周りにアマチュアカメラマン達が大勢集まってシャッターを切っていたので、僕もスマホでパチリ!
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ほおずき市も廻り、ちょいと一杯と思ってバー『サンボア』へと向かうとあいにくの定休日であった。暫くご無沙汰すると休みの日を忘れてしまうのがイカンのだナ。


仲見世の一本脇の路地を歩き、レストラン大宮の向かいに在る『オオミヤ姉妹』なる店でビールを頂いた。此処はミニワッフルの「浅草ロマン焼きミニカステーラ」という菓子が名物らしい。
焦がしバターが香ばしい匂いを漂わせていたが、僕は迷わずビールをお願いした。
そして、店の軒先の縁台に腰を下ろしちょいと一休み。


さぁ、午後6時が近づいて来た。浅草寺を抜けて浅草5656会館の脇へと曲がる。

そう、この日は先日の『鍵屋』での裏を返しに浅草『ぬる燗』へと向かったのでアル。

到着すると青地に白抜き「酒や」と記された暖簾が夕暮れの風に揺れていた。ガラリと戸を開けると既に二人の先客が酒を愉しんでいた。此処はいつも予約で満杯になる酒場だが、いつもの如く主人が口元の片方だけを少しだけ上に上げて(これをニヒルと呼ぶのだヨ)、「この日は運良く一席だけ空いているよ」とのことだった。


そんな訳で、タイミング良く、いや運が良く『酒や ぬる燗』のカウンター席に座り、裏を返すことが出来たのでアル。


ちなみに「裏を返す」とは、元は吉原遊郭に遊びに行く際には「一旦指名した遊女は変えてはならない」という遊郭特有のルール、しきたりのことなのだネ。吉原に行っても最初は酒をお酌してもらえるだけで、次に訪れたら煙管に火を点けてくれる。こうやって何度もなんども同じ遊女を指名することで、ようやく床についてくれるってワケなのだナ。遊郭の玄関の中の壁には在籍する遊女の名前を記した木札がズラリと架けられている。そして、客が指名すると、その遊女の名前が記された木札を裏にひっくり返して架けるのだ。「裏を返す」は、この慣わしから生まれた言葉であり、粋さをモットーとした江戸っ子たちは「裏を返さぬは、江戸っ子の恥だぜ」と言っていたとか、ハテ?


で、僕も「裏を返し」に浅草『ぬる燗』の暖簾を潜ったのだ。

この日のお通しは、胃に優しい野菜の汁物だった。最初の酒は「伯楽星」をお願いした。
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「愛宕の松」で知られる宮城の新澤醸造店が造るこの酒は、口当たりの良さと最後まで爽やかな清涼感があり、蒸し暑い梅雨時期にうってつけの一杯だ。僕は手頃な価格で美味い酒を探すのが好きなので、「日高見」の純米と並んで好きな宮城の地酒だナ。


酒の肴は「生ホヤの胡瓜酢」をお願いした。目の前で料理する姿を眺めながらの酒も実に旨い。

東北の酒には東北の料理だネ。あぁ、幸せなひと時だ。


お次の酒は「紀土(キッド)」のカラクチキッド特別純米酒を選んだ。紀土も色々と種類を出しているが、カラクチキッドとは思い切ったネーミングにしたものだ。この酒はその名の通り、キレの良さがイイネ!純米大吟醸のフルーティーさの余韻を残しつつ辛口が効いている。和歌山県の平和酒造も素晴らしいブランドを確立したネ。


三杯目は岐阜・多治見の地酒「三千盛(みちさかり)」にしてみた。

いつも呑むのは純米だが、この「超特辛口」は初めて呑む酒でアル。これは、大吟醸ながらしっかりとした旨味が喉を抜けて、その後のキレが素晴らしかった。


口開けにお邪魔したが、次々と予約のお客さんたちが来店する。本当に一席だけ空いていたのだネ。僕の隣の女性客はご常連さんらしいが、近藤さんの辛口トークを浴びていた。歌舞伎役者が舞台の上から見得を切るように、これも彼ならでは「のぬる燗劇場」での大切な一幕なのだ。

あぁ、1時間半あまり、楽しい時間と旨い酒、美味しい肴を堪能させて戴いた。近藤さん、ご馳走さまでした。


浅草『ぬる燗』を訪れてから、二週間近くが過ぎた昨日、地元の酒場『牛太郎』へと向うと店から出てきた客がいた。そしてその距離が縮まると互いの顔を見合わせて、笑ってしまった。今度は近藤さんが、わざわざ「裏を返し」に武蔵小山まで足を運んでくれたって訳だ。

これだから、酒の縁(えにし)は奥が深く、素晴らしいのだナ。


by cafegent | 2019-07-25 01:56 | 飲み歩き